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更新日:2010年6月1日

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自然探訪2008年9月 ウワミズザクラ

ウワミズザクラ(Prunus grayana

サクランボ(桜桃)が店頭に並ぶ季節でもわかるように、一般にサクラの果実は開花後、2ケ月を置いた初夏に成熟する。しかし、中には秋口まで待って成熟するサクラ類がある。ウワミズザクラ、イヌザクラ、シウリザクラなど、ウワミズザクラ亜属に属するサクラの仲間である。これらのサクラ類は、一つの花芽に数個の単花を着けるがヤマザクラやカスミザクラなど他の多くのサクラ類とは異なり、一年枝ないし二年枝に数十個の単花からなる穂状の総状花序を形成する(写真1)。開花時期は、普通のサクラより遅れるが、樹冠全体が白い花穂で覆われ、見ごたえがある(写真2)。その時期は、他の落葉広葉樹の展葉が終わった後なので大変目立つのだが、その樹木がサクラの仲間であることを知る人は意外と少ない。その代表的な樹種がウワミズザクラである。

ウワミズザクラは、樹高は10~15m、胸高直径も30~40cm程度の落葉広葉樹で、広く日本列島に分布し、中国中部にも見られる。その語源(上溝桜)は、古代、材に溝を掘って占いを行う宗教行事に使われたことからきているとされる。ウワミズザクラは、「あんにんご(杏仁子)」とも呼ばれ、開花直前の蕾や未熟果は穂ごと塩漬けにされ、新潟県を中心に食用とされる。

ウワミズザクラの仲間は、北半球各地にも分布し、BlackCherry(P. serotina)やChoke Cherry(P. virginoana)などの樹種がある。果実が熟して暗赤色となることからその名が付いたBlackcherryは、北米大陸の北東部に広く分布する高木性の樹木で、その材質の良さから家具材などとして広く使われる有用な広葉樹で、その更新・育成が林業的に行われている。一方、日本のウワミズザクラは、樹皮などは類似するものの、寿命もそれほど長くはなく、老齢化するとともに、幹に腐れが入り、大径木とはならない。材は床柱や彫刻にも使われるようであるがシウリザクラほど材の評価は高くなく、有用な広葉樹とは見なされない。緑だったウワミズザクラの未熟果実は、その数を減らしながら夏の暑さの中で黄変し(写真3)、秋の到来とともに赤から暗赤色に変化し、成熟する。その果実はアルコールに漬けると、独特の香りを持つ果実酒となる。

写真1
写真1


写真2
写真2

写真3
写真3

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