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更新日:2010年6月1日

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自然探訪2009年2月 ヒメバラモミ

ヒメバラモミ(Picea maximowiczii

ヒメバラモミはマツ科トウヒ属の常緑針葉樹で、その数が少ないことから国の絶滅危惧植物にリストされています。長野県と山梨県の山岳地帯に分布しており、種子を生産するようなサイズの母樹数だと1,000個体も無いのではと考えられています。特に分布域の北半分を占める八ヶ岳・秩父山域の自生地において現在確認されている母樹数は50個体もなく、この地域における野生集団は消滅寸前です。八ヶ岳南麓の西岳国有林はヒメバラモミの数少ない自生地として知られていますが、母樹サイズだとわずかに6個体がぽつりぽつりとカラマツ人工林の中に残されているだけです(写真1)。

もっとも、地史的なスケールで見るとヒメバラモミは常に絶滅が危惧されるような樹種ではありませんでした。トウヒ属の樹種は現在およそ30種が北半球の亜寒帯を中心に広く分布しており、寒冷で乾燥した気候に適応したグループであると考えられています。ヒメバラモミも第四紀の化石が東北から九州まで広範囲で報告されており、氷期の日本列島における代表的な樹木のひとつでした。しかし、現在の温暖で湿潤な気候の中、環境に適応できずに減少しているのではないかと考えられています。

ところがヒメバラモミをよく調べてみると、意外に環境への耐性が高いのではと思われてきました。自生地から種子を採取してきて、茨城県つくば市にある森林総合研究所の苗畑で育ててみたところ、わずか3年で最大30cmもの高さにまで成長してきました(写真2)。自生地で見られる3年生の実生は大きくても10cm程度ですから、暖かい環境に適応してすくすくと成長したことがわかります。また、東京都八王子市にある森林総合研究所多摩森林科学園には、80年ぐらい前に植えたヒメバラモミが胸高直径50cmほどに成長しており、花も咲かせます。どうやら温暖な気候が苦手ということでは無さそうです。自生地の近くの長野県南牧村の農家には、植栽されたヒメバラモミの並木があります(写真3)。大正時代に防風林として植栽されたおよそ40本のヒメバラモミは、樹高20mを超えて堂々とした姿を見せています。現在は数が少なくて絶滅寸前の樹種ですが、将来はカラマツのように造林されたり、コウヤマキのように造園樹として用いられることもあるかもしれません。

写真1
写真1

写真2
写真2

写真3
写真3

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