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更新日:2010年12月1日

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自然探訪2010年12月 シマバライチゴ

シマバライチゴ(Rubus lambertianus

1990年、長崎県島原半島の雲仙普賢岳が噴火、その後の度重なる噴火と火砕流で大きな被害をもたらした(写真1)。そうした中、島原市千本木地区にあった長崎県の天然記念物に指定されたシマバライチゴの群落が火砕流の直撃を受け、壊滅したと見られた。シマバライチゴは、中国、台湾など東アジアの暖温帯に広く分布する南方系のキイチゴである。日本では長崎県のほか、熊本県の一部地域にしか分布しない希少植物で、レッドデータブックで絶滅危惧II類に指定されている。その日本におけるシマバライチゴの自生地が火砕流の直撃を受けたため、その存続が心配された。
シマバライチゴは、キイチゴ属の中でも、フユイチゴに近い落葉あるいは時に常緑のキイチゴで、株が十分に大きくなると、太い地上茎を伸ばす。この地上茎は、二年目に入るとその上で開花、結実する。日本に広く分布する落葉性キイチゴ類の多くが、開花、結実後、地上茎が枯死するのに対し、シマバライチゴは、根元から1~2mほどが開花、結実後も生き残り、そこから地上茎を伸ばし、その長さは場合によっては数mにも及ぶ(写真2)。この地上茎は、その先端部が地面に着くと発根し、新たな株を形成し、やがて親株から別れて独立した個体となる。また、この地上茎(走出枝:ランナーとも呼ばれる)は、ツル植物的性格を示し、支持木があれば、これによじ登り、成長する。
花は10月につけ始め、花弁の色はやや緑がかった白で、11月中旬まで見ることが出来る(写真3)。複合花序を形成し、一つの花序当たりの花数は30~50個で、開花一ヶ月ほどで、暗赤色の果実として熟する(写真4)。
雲仙普賢岳の火砕流の直撃を受けたシマバライチゴの国内最大の自生地は、その後、どうなったのか?実は不死鳥のように蘇ったのである。一時は壊滅したと見られていたシマバライチゴではあったが、火砕流がおさまった後、自生地に再生したばかりではなく、その分布域を急速に拡大し、火砕流跡地に広がっていった。そうしたことを可能にした背景には、旺盛な再生力と地上茎による成長、株形成(栄養繁殖)があり、さらに広域の種子散布があると見られる。暗赤色のシマバライチゴの果実は、鳥類を引き付ける魅力があるようで、ヒヨドリ、ツグミをはじめとした鳥たちによって盛んに食べられ、火砕流で形成された荒地に散布され、広がっていった。すなわち、シマバライチゴは雲仙普賢岳の火山活動という自然撹乱に適応し、その集団を維持してきたとも考えられる。したがって、火山活動がおさまれば、他の植物がはびこって、シナバライチゴの集団は縮小、火山活動によって、集団を拡大するということを繰り返してきたのではないだろうか。それこそが、このキイチゴが島原半島に存続できた理由にも思える。
雲仙普賢岳の火砕流災害からおよそ20年。今、シマバライチゴは、クズとの競合状態の中で、地域集団としては絶頂期にある(写真5)。


写真1:噴火から20年が経過した雲仙普賢岳。
写真1 噴火から20年が経過した雲仙普賢岳。
火砕流跡地では植生回復が進む。

写真2:ツルのように伸びるシマバライチゴの地上茎。
写真2 ツルのように伸びるシマバライチゴの地上茎。


写真3:シマバライチゴの花序。
写真3 シマバライチゴの花序。およそ30-50の単花からなる。

写真4:シマバライチゴの果序。
写真4 シマバライチゴの果序。真紅の集合果は鳥類を引き付ける。

写真5:シマバライチゴの群落。
写真5 シマバライチゴの群落。
クズが葉を落とすとシマバライチゴの果実が目立つようになる。

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