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更新日:2010年6月1日

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自然探訪2010年4月 モミジイチゴ

モミジイチゴ(Rubus palmatus var. coptophyllus

早春の林道のり面を覆う藪が新葉を展開し始める頃、藪は、一瞬、白い花で彩られます。モミジイチゴの花です(写真1)。モミジイチゴは、30数種ある日本のキイチゴ属の中にあって最も一般的な種で、北海道を除く日本列島全域に分布します。そして、モミジイチゴの実は開花後二ヶ月に成熟し、黄色の果実をつけます(写真2)。キイチゴ属の果実は、小核果が集まった集合果で、同じイチゴの名が付くストロベリー(オランダイチゴ属)とは異なります。ストロベリーは、花托が肥大化し、この表面に種子が張り付く形となって、この果実の付属物を食べることになります。モミジイチゴの果実も、大変美味しく、野山でよく食べられますが、大変ジューシーでジャムにしようとすると、煮詰めて残るのは堅い種(タネ)だけで、ジャム作りには適さないようです。ちなみに、一つの果実あたりに含まれる種子の数は、およそ50粒ほどです。

モミジイチゴは、林道の法面や森林の伐採跡地、若い植栽地などの開放的環境で、密な藪を形成します。こうした、藪の形成は、もちろん種子に始まりますが、いったんその場に進入・定着すれば、急速に藪を拡大します。それを可能にするのが、モミジイチゴをふくめたある種のキイチゴ類の成長様式です。すなわち、モミジイチゴはある程度大きくなると地下茎を左右に伸ばし、その途中に新たな株を複数形成します。この株(根茎)からは、地上茎を伸ばし、あたかも独立した個体(株)が形成されたように見られます。しかし、実のところ、新たに形成された株(娘株)は元の株(親株)とは互いに地下茎によりつながっており、それ自体が巨大なクローン(個体)として成長することになります(写真3)。一般的な地下茎は、根系が発達したものと考えられますが、キイチゴの場合は匍匐性の地上茎が地下に潜ったものですから、いわばモミジイチゴは、地上部ではなく、地下部に枝を伸ばして成長していると理解すれば判りやすいと思います。こうしたキイチゴ類は、「地下分枝型」と呼ばれ、モミジイチゴのほかに、クサイチゴ(写真4)、ニガイチゴ(写真5)、クマイチゴ(写真6)などがあります。

林縁部や新植地など開放的な環境に形成される藪はモミジイチゴのみで構成されているわけではありません。先に挙げたキイチゴ類も存在し、モミジイチゴに続いて、次々と開花・結実していきますが、その色や形がそれぞれ異なっているのも面白いですね。ただし、これらのキイチゴはモミジイチゴほど美味しいものはなく、食べ物として魅力的ではないようです。

(註)本文では、モミジイチゴを広いくくりで使用しておりますが、正確には2種に区分されなければなりません。母種はナガバノモミジイチゴで、こちらは西日本、朝鮮半島、中国大陸にも分布します。一方、モミジイチゴはナガバノモミジイチゴの変種で東日本に広く分布します。

写真1:モミジイチゴの花 
写真1:モミジイチゴの花

 写真2:モミジイチゴの果実
写真2:モミジイチゴの果実

写真3:一つの株から地下茎によって形成されたクローン(ニガイチゴ)
写真3:一つの株から地下茎によって形成されたクローン(ニガイチゴ)

写真4:クサイチゴの花
写真4:クサイチゴの花

写真5:ニガイチゴの果実
写真5:ニガイチゴの果実

写真6:クマイチゴの果実
写真6:クマイチゴの果実

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