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更新日:2012年10月1日

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自然探訪2012年10月 紅葉のナゾ

紅葉のナゾ

暑い夏が終わりを告げ、北海道で紅葉が始まりました。赤や黄色の前線は大雪山の峰みねを下り、日本列島を西へ向かっていきます。つかのま彩られた葉が落ちれば、まもなくモノトーンの冬が訪れるでしょう。
葉は植物の生産工場ですが、条件が良くないときには、維持するのが負担になることがあります。厳しい季節を乗り越えるために、多くの樹木は、一時的にすべての葉を落とす方法を選びました。ではそれに先だって葉が色づくのは、なぜでしょうか。
落葉前に葉が赤くなるのは、赤い色素がつくられるからです。葉で合成された糖やアミノ酸は、秋になると赤い色素、アントシアンの材料に使われるようになります。いっぽう黄色い色素のカロテノイドは、常に葉にありますが目に見えません。光合成をつかさどる緑の色素、クロロフィルの方がずっと多いからです。落葉前にはクロロフィルが分解されて枝に回収されるので、後に残った黄色が見えるようになるのです。
ではさらに、色が変わるその意味は?生産に関係ない色素を、なぜ樹木はわざわざ作り、そのまま放棄してしまうのでしょう。
この理由は、実はよくわかっていません。何かの働きの副産物か、かつてあった意味が失われたのか、あるいは単に「なんとなく」なのか。しかし、紅葉が今とくに有利でないのなら、同じ種の中でもっと色や濃さが様々でも良さそうです。実際は、イロハモミジやナナカマドは鮮やかな赤、ミズキやウワミズザクラはややくすんだ赤、イタヤカエデやヤナギは黄、ブナやトチノキは褐色、といった具合に、樹種ごとに色あいはだいたい決まっています。
紅葉が鮮やかな樹種ほどアブラムシの寄生が多いとする報告があり、それにもとづくこんな説もあります。植物には、虫など動物の食害に対抗して防御物質を作る性質がみられます。このため動物には、防御の弱い木を選ぶ性質が進化するでしょう。そこでさらに樹木のがわで、おれは生産力に余裕があるから守りは堅いぞ、という加害者へのアピールとして、紅葉が進化したというのです。木々の彩りが他の動物にどう見えているかはさておき、紅葉とはつまり、不味さ(まずさ)の自己申告なのか?真相はまだわかりません。
季節の移ろいに情趣を見いだす日本人の心に、紅葉は大きな位置を占めてきました。その進化の物語を想うのも、この秋の一興にいかがでしょう。

写真1:自然探訪10月 紅葉のナゾ1
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写真2:自然探訪10月 紅葉のナゾ2 
写真2 

写真3:自然探訪10月 紅葉のナゾ3 
写真3 

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