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更新日:2012年12月4日

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自然探訪2012年12月 天然スギ林

天然スギ林

スギ(Cryptomeria japonica)は日本の樹種の中でその植栽面積、材積において最も大きな割合を占めています。それだけたくさん植栽されてきたのには、幹が真っ直ぐに伸びるため柱材にできる、枝を大きく広げないので高い密度で植えられる、成長が速い、といった多くの利点があるためと言えるでしょう。

ところで、これだけ多くのスギが植えられているのに対し、世界自然遺産に登録された屋久島をはじめ、全国には植物群落保護林、森林生物遺伝資源保存林に指定されたスギ林が数多く見られます。どうして植栽面積が一番多いスギを保護林に指定するのでしょうか。それは、現在日本のスギ林のほとんどが人工林であり、天然スギ林が急激に減少しているからなのです。

スギの天然分布域は北は青森県鰺ヶ沢町の矢倉山から南は鹿児島県屋久島まで分布が確認されています。最も標高の高いところでは2050mまで分布が確認されており、スギは非常に広い環境に適応できる樹種と言えます。かつては北海道を除く日本全国に天然スギ林が見られたと考えられています。しかし、天然林を伐採した後に、なかなか新しいスギが生えてこないため、徐々にその面積は減っていき、代わりにスギの苗を植えることでスギ人工林が増加していったのです。

天然スギ林が減少し、貴重なものになっていく中、固定試験地を設定して、スギが自然の状態でどのように種子から芽生え、最後には大木に成長していくのか、長期間の調査が行われています。秋田県北秋田市の佐渡スギ林試験地では、地面に落ちた種子の数、生えてきた芽生えの数、そして芽生えがどのように生き残っていくのかを調査しました(写真1)。この林分ではスギの芽生えはブナなどの落葉に覆われた地面では、ほとんど生き残ることができず、その代わりにスギの伐り株の上で生き残ることがわかりました。この林分では多くのスギの根上がり木(地面より高いところに根元がある木、写真2)が見られるのですが、それは芽生えの時期の生き残りやすさを反映しているのではないかと考えられています。

一方、他の林では別の方法で生き延びるスギも見られます。その繁殖方法のひとつとして、伏条(ふくじょう)という形態があげられます。伏条とは伸びた下枝が地面に着き、そこから根を出して幹の数を増やしていく方法です。伏条は雪の多い地域でよく見られるとされており、例えば福島県金山町の本名スギ林では多くのスギが伏条から成長したと考えられており(写真3)、サイズの異なる多くのスギが狭い範囲に固まって生えているのが確認されています。

スギは花粉症などで最近はイメージを落としていますが、多くの建築物の材料となって長年日本を支え続けてきたことは間違いありません。また、日本の天然林を構成する重要な樹種でもあったのです。残り少なくなった天然スギ林が貴重なことを多くの方に知っていただきたいと思っています。

写真1 根株の上のスギの芽生え(黄色は目印のテープ)
写真1:根株の上のスギの芽生え(黄色は目印のテープ)

根株の上に群生するスギ(秋田佐渡スギ林) 
写真2:根株の上に群生するスギ(秋田佐渡スギ林)

大小のスギが群生している林分(福島本名スギ林) 
写真3: 大小のスギが群生している林分(福島本名スギ林)

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