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更新日:2012年3月1日

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自然探訪2012年3月 メープルウォーターはおいしい?

メープルウォーターはおいしい?

北国の3月、日中の気温が氷点を上回る日が続くようになっても、森の中にはまだ雪が残っています。広葉樹の林を歩くと、樹液で幹の表面がぬれている木を時折みかけます(写真1)。樹液の流出口は、直径数ミリメートルで、ドアを開けたように樹皮が起こされ、さらに材の部分にも小さな傷がついています(写真2)。たいてい、ほぼ同じ高さに数か所の流出口がありますが、この傷をつけたのは中型のキツツキのアカゲラ(Dendrocopos major)です。
アカゲラは、傷をつけた木にときどき飛来し、樹液を飲みます。とはいっても、一時に大量の樹液を摂取しているようにはみえません。樹液は、傷口から染み出す程度にしかでていませんし、彼らのくちばしや舌は、液体を飲むのには適していません。アカゲラが去ると、エナガ、シジュウカラなどのカラ類、ヒヨドリなどの鳥も、この樹液を飲みにやってきます。ヒヨドリは、樹皮にうまく止まれないようで、飛びながら空中に停止して、樹液を摂取しています。樹液の出ている場所では、ヒヨドリのような体の大きな鳥が優位に立ち、小さな鳥は追い払われてしまいますが、さすがのヒヨドリもエゾリスが樹液を舐めに来た時は、場所を譲らなければなりません(写真3)。
さて、アカゲラが傷をつけるのは、イタヤカエデ、ヤマモミジなどのカエデ属(Acer)の木です。メープルシロップで有名な北米のサトウカエデの樹液(メープルウォーター)の糖度は3%前後だそうですが、イタヤカエデでは、1.5%以下とのことです。しかし、アカゲラが傷をつけるのはカエデ属の木に限られていることから、彼らはこのわずかな甘さを感じ、これを求めて樹液を飲んでいると考えられます(ついでながら、りんごの糖度は、およそ12~15%です)。ひと冬を乗り越えて、手に入る餌が少なくなっている春まぢかのこの時期に、いくらかでも甘い液体は、彼らにはごちそうなのかもしれません。ただ、一日の最低気温が氷点を超えるようになると樹液の流出は止まります。
この“自然探訪”シリーズ2006年6月の記事*には、アカゲラの掘った巣穴が他の動物に利用されていることが紹介されていますが、アカゲラは他の動物たちに餌も供給しているようです。
ちなみに、エゾリスに退席願ってこの樹液を舐めてみても、甘いものに慣れた人の舌では、甘さを感ずることができないかもしれません。メープルウォーターは動物たちにまかせることにして、人は煮詰めたメープルシロップ(糖度66%)を楽しむのがよさそうです。

* http://www.ffpri.affrc.go.jp/snap/2006/6-akagera.html

自然探訪3月:樹液でぬれているイタヤカエデ
写真1. 積雪の残る3月の森で、イタヤカエデの幹が樹液でぬれています
(茶色の部分) 

 自然探訪3月:アカゲラが開けた樹液の流出口
写真2. アカゲラが開けた樹液の流出口(上の写真の赤丸部分の拡大)。
右側の穴は左に、左の穴は右側に、ドアを開けるようにこじ開けられています。 

自然探訪3月:エゾリス
写真3. エゾリスも樹液を舐めにやってきます。茶色の舌がみえます。

(写真は、いずれも札幌市で撮影)

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