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更新日:2014年3月3日

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自然探訪2014年3月 東南アジアの竜脳樹

東南アジアの竜脳樹(Dryobalanops aromatica

竜脳樹(リュウノウジュ)と聞いてピンとくるかたは少ないかもしれません。竜脳とは、香料や薬などに用いられる透明な結晶で、この木の精油から作られ、クスノキからとれる樟脳(しょうのう)に似た香りを持っています。竜脳は古代から珍重され、中国やアラビアの商人によって熱帯雨林が広がるボルネオ島やスマトラ島から輸出される重要な交易品になっていました。唐代には、皇帝が楊貴妃に最高級の竜脳を贈ったという記録もあるくらいです。現代でも、仁丹などの薬や線香の香り、変わったところでは書道で使う墨の香りにも用いられています。

竜脳樹は成熟すると、幹の直径が2m、樹高も50~60mに達する熱帯雨林の巨木です(写真1)。学名はDryobalanops aromaticaと言い、フタバガキ科という東南アジアの熱帯林を代表する樹木のグループに属しています。東南アジアには500種近いフタバガキ科の樹木があるのですが、竜脳樹の葉をちぎって匂いを嗅ぐととても強い芳香があるのですぐに分かります。ちなみに竜脳が取れるのはフタバガキ科の中でも竜脳樹と同じ属の数種だけです。

東南アジアの熱帯雨林樹木の多くは、数年から十数年間隔で一斉に開花結実して繁殖します(写真2)。竜脳樹もこのような一斉開花・結実の時にしか実をつけませんが、一度に大きな種子を大量に実らせます。種子は、羽根つきの羽根のような形をしていて、5枚のがく片を伸ばします(写真3)。羽根を持つことで、地面への落下の衝撃を和らげたり、遠くへ種子を飛ばしたりすることができると考えられています。ヘリコプターのようにくるくると回りながら落下してくる種子は見応えがあります。

これまで、竜脳樹を含むフタバガキ科の樹木は、合板の原料として大量に伐採され日本などに輸出されてきました。過剰な伐採やアブラヤシ農園などの開発が進み、竜脳樹が生えている森林は保護地域を除いてほとんど失われました。そのため、竜脳樹も国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで絶滅寸前の種に分類されています。人間活動により劣化した熱帯雨林への竜脳樹の植林も行われていますが、伐採量に追いついていないのが現状です。また、一度劣化した熱帯雨林に竜脳樹を植えても、原生林の環境と大きく異なるために、苗木が大量に枯死したり、成長が思わしなくて植林が失敗することも多く、適切な保全や植林・保育技術が求められています(写真4)。


写真1:ボルネオ島のランビル国立公園の原生林に生育する竜脳樹
写真1:ボルネオ島のランビル国立公園の原生林に生育する竜脳樹
カリフラワー型の樹冠を形成します。
中央の白っぽい樹冠が竜脳樹で開花中の個体と思われます。

写真2:竜脳樹の花
写真2:竜脳樹の花
一斉開花時には、樹冠一面白い花で覆われ森に芳香が漂います。

写真3:竜脳樹の実
写真3:竜脳樹の実
結実時には羽根つきの羽根のような実が大量に実ります。

写真4:伐採により劣化した熱帯雨林に植栽した竜脳樹の苗木
写真4:伐採により劣化した熱帯雨林に植栽した竜脳樹の苗木。
植栽後4年半が経過し、樹高も3m近くになっています。

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