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更新日:2014年8月1日

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自然探訪2014年8月 センブリ

センブリ (Swertia japonica

センブリ(Swertia japonica)はリンドウ科センブリ属の二年草で、北海道西南部、本州、四国、九州にかけて広く分布しています。草丈は三〇センチほど、夏から秋にかけて星形の白い花を咲かせます。花弁には黄緑色の蜜腺があり、昆虫を呼び寄せて送粉者として利用します。全草に含まれる各種の苦味配糖体(スウェルチアマリン、アマロスエリン、ゲンチオピクサロイドなど)によって極めて強い苦味があり、千回振り出しても(振り出すとは、熱湯の中に薬草を浸して成分を溶かし込むこと)まだ苦いということで千振(せんぶり)という名前の由来になっています。日本薬局方には苦味健胃剤、止瀉薬として登録されていて、御岳百草丸や陀羅尼助などの伝統薬に含まれるほか、単独でも民間薬として広く使われています。胃腸薬として使われ始めたのは案外新しく、明治以降とも言われており、より古くはノミ・シラミに対する駆虫薬として使われていたとされています。現在では、頭皮の血行を改善し発毛を促すと言うことで、センブリのアルコール抽出液が多くの養毛剤に配合されています。センブリは明るい草原に多い植物です。日本の草原のほとんどは半自然草原といって、人間によって火入れや牛馬の放牧、茅葺き屋根や肥料のための刈り取りなどの管理が行われることで草原として維持されています。第二次大戦前には五〇〇万ha以上の草原が全国に存在していましたが、拡大造林によってその多くが針葉樹人工林に転換され、現在ではわずか三〇万haほどが残っているだけです。センブリは、かつてはありふれた種でしたが、草原の減少に伴って生息地が急速に減少し、現在では幾つかの県で絶滅危惧種としてレッドリストに記載されているほどです。かつては子供やお年寄りが小遣い稼ぎにセンブリを採集する姿が野山に普通にみられました。今でも山を歩いていると、時折センブリを求めて山野を歩くお年寄りを見ることがありますが、その数は少なく、これもまた二十世紀の残映として、遠からず消えて行く風景のように思われます。


自然探訪平成26年8月センブリ


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