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更新日:2014年9月1日

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自然探訪2014年9月 星空

星空

みなさんは満天の星空を見たことがあるでしょうか。図1は都会から離れた新潟県津南町で撮影した星空です。満天の星、そして天の川が実際に肉眼で見たのと近いイメージで写っています。では、なぜ都会では満天の星が見えないのでしょうか。

そのヒントはこの図の中にあります。図1の左下、人と望遠鏡が写っている辺りはバックが明るいですが、これは18km離れたところにある新潟県湯沢町(上越新幹線の越後湯沢駅があり、人口約8千300人)の街明かりなのです。これに対して、図1の右下の方向(真南)には都市がないために地平線付近の空が暗く、低空にもたくさんの星が写っています。駐車してある車のすぐ前の空も少し明るいですが、これは関東平野の明かりです。群馬県の高崎市と前橋市まではいずれも約80km、東京都心まで約170kmですが、これほど遠くの街明かりでさえも星を見えにくくしていることが分かります。このように、夜間照明によって起こる障害のことを「光害(ひかりがい、又は、こうがい)」と呼びます。

図2は図1と同じ場所で同じ夜に別の方向(北北東)を撮影したものですが、18km離れたところにある新潟県十日町市(人口約5万7千人)の光害によって天の川が右上で途切れてしまっています。図1で紹介した湯沢町と同じ距離にありながら、人口が1桁多いためにこれほどの明かりを放っているのです。図3は、都心から約18kmにある埼玉県戸田市で撮影した星空です。昼間のように明るく見えますが、よく見るといくつかの星が写っていることが分かります。しかも、図3はカメラのシャッターを1秒間だけ開けて撮影したのに対して、実は図1と図2では30秒間もシャッターを開けて撮影していたのです。

光害は単に星空を見えにくくしているだけではありません。イネやホウレンソウなどの農作物は、街灯の照明によって収量や品質が低下することが知られています。また、夜行性の生物はもちろん、多くの野生動植物にも悪影響が及んでいますが、まだ不明な点が多く今後研究が必要です。物言わぬ森の生き物たちは、光害のために眠れない夜を過ごしているのかもしれません。

夜間照明は生活に必要ですが、過剰な照明はエネルギーの浪費でもあります。図4上は、宇宙から見た夜の東京から新潟付近です。首都圏や地方の中堅都市に比べればとても小さな十日町市の明かりでさえ、星空に大きく影響していたことを思い出して下さい。同様に、図4下は夜の日本と近隣諸国の夜景です。これらの光は宇宙に向かって無駄に捨てられているエネルギーなのです。

空気が澄んで星の輝きが増すこれからの季節、都会から離れて星空を眺め、生き物のこと、エネルギーのことを考えてみてはいかがでしょうか。


図1:新潟県津南町の星空
図1:新潟県津南町の星空
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図2:新潟県十日町市の光害(図1と同じ場所で同夜に撮影)
図2:新潟県十日町市の光害(図1と同じ場所で同夜に撮影)

図3:埼玉県戸田市の星空
図3:埼玉県戸田市の星空

図4:宇宙から見た夜景。(上)東京から新潟付近、(下)日本と近隣諸国
図4:宇宙から見た夜景。(上)東京から新潟付近、(下)日本と近隣諸国

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