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更新日:2015年6月1日

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自然探訪2015年6月 国の特別天然記念物 ニホンカモシカ

国の特別天然記念物 ニホンカモシカ

ニホンカモシカCapricornis crispus (以下、カモシカ)を知っていますか?日本固有の哺乳類で、中国地方を除く本州と、四国や九州の一部に分布しています。名前に「シカ」がついていますが、シカよりも、ウシやヤギに近い動物です。体重30〜45kgと子ウシほどの大きさで、雌雄とも枝分かれのない2本の角をもち、山の岩場などに好んですみます。おもに樹木や草、ササなどの葉を食べます。体色は、白色、灰色、灰褐色あるいは黒色など、個体によって大きく異なります。

カモシカは、1925年に狩猟法における狩猟獣から除外され、1934年に国の天然記念物に指定、そして1955年に国の特別天然記念物に指定されました。なんと、90年以上にわたって法律により狩猟が原則禁止され、手厚く保護されている種なのです。このような哺乳類は我が国にはほかにありません。

カモシカは、毛皮の質がよく、肉が食用になるため、かつては全国で狩猟されていました。また、その角はカツオ漁の疑似針の材料として珍重され、高値で取引されました。とても価値の高い天然資源だったのです。そのため、狩猟が禁止されてからも、取締りが厳しくなる1960年代頃までは、密猟が半ば公然と行われていたようです。

現在はカモシカが分布しない中国地方にも、江戸時代半ばまでは生息の記録があります。そこでは捕獲圧が高かったため、早い時期に絶滅したのでしょう。もし、保護対象とする判断が遅れていたら、他の地方でも絶滅していたかもしれません。

1970年代以降、中部地方や東北地方ではカモシカの個体数が増え、農林業被害が発生するまでになり、やむをえず駆除される個体も出てきています。一方で、九州や四国では個体数があまり回復していません。特に九州地方のカモシカは、環境省のレッドリストで「絶滅のおそれのある地域個体群」に区分されています。

最新の調査によれば、九州と四国の個体数は、それぞれ約800頭、約500頭と推定されていて、危機的な状況です。増えすぎたシカとの食物をめぐる競合、イノシシやシカの捕獲を目的としたワナによる錯誤捕獲、皮膚の感染症(疥癬=かいせん)などによってカモシカが減少している可能性が指摘されています。今後、絶滅に至らないように、モニタリングしていくことが大切です。森林総合研究所では、カモシカの調査研究を行っており、ここで紹介した写真はその成果の一部です。

じつは、私たちの身近にもカモシカがいます。動物園?いいえ、切手です。日本郵便が発行する50円普通切手の絵柄にカモシカが採用されています。機会があれば手にとってみてください。

(右の写真はJSPS科研費24657021の助成を受けて九州地方で実施した調査によって得られたものです。)

 

ニホンカモシカ写真1

ニホンカモシカ写真2

ニホンカモシカ写真3

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