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更新日:2015年7月3日

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自然探訪2015年7月 カシノナガキクイムシってどんな虫?

カシノナガキクイムシってどんな虫?

皆さんは全国でミズナラ・コナラが集団で枯れる“ナラ枯れ”をご存知でしょうか?ナラ枯れは2002年以降から日本海側の新潟県辺りから被害が急激に拡大し始め、2011年には30都府県で発生し、未だにおさまっていません(図1)。

ナラ枯れは、「ナラ菌」と呼ばれるカビの仲間の病原菌を、カシノナガキクイムシ(以後カシナガと呼ぶ)という昆虫が運ぶ、いわば伝染病です。

さて、そのカシナガ、体長は4~5mmの黒っぽい円柱形のカブトムシの仲間です(図2)。キクイムシというので木を食うと思われるでしょうが、木を食っているのではなく、木をかじって幹にあけた坑道の中にアンブロシア菌と呼ばれる共生菌(カビの仲間)をはやしてそれを餌として幼虫が育ちます。ちなみに、カシナガの場合、病原菌のナラ菌ではありません。菌を育てるキクイムシなので養菌性キクイムシまたはアンブロシアキクイムシと呼ばれます。アンブロシアとはギリシャ神話に登場する不老不死になれるという“神々の食べ物”のことだそうです。

カシナガは被害木の中で成虫になる羽化を普通5月以降に行い、6~8月に孔から出て飛行します。まずオスが飛びながら好きな樹を見つけて孔を堀ってもぐります。特定の木に集中する加害も見られ、被害木は、梅雨明け後から8月にかけて葉が萎れて赤褐色に変色して、枯れる木が多く発生します。カシナガはミズナラ、コナラ、アベマキ、クリ、クヌギ等の落葉樹と、常緑樹のスダジイ、マテバシイ、ウバメガシ、アカガシ等45樹種以上の木に穿孔することが報告されています。カシナガは最近海外から侵入したような新しい害虫ではなく比較的古くから日本に居たと考えられています。

6月頭ごろからまずもぐりこんだオスが数cmの長さまで母坑を掘り、入口付近にかじったフラス(木屑)をドーナツ状に盛りあげ、そこに仲間を集める匂い成分である、集合フェロモンを含んだ液をお尻から出してつけながら発散させて、仲間を集めます。また掘った木からもカシナガの好む匂い成分・カイロモンが出て、他のオス成虫をさらに呼び寄せます。フェロモンとカイロモンを出すオスの入った孔が次々に増えて、次にそのたくさんのオス孔にメスが引き寄せられます。オスの孔にメスが来てカップルができるときにもまた興味深いことが行われています。オスがお尻を出して呼んでいる孔に、メスが来て孔に入ろうとすると、はじめオスはお尻で邪魔をして入れようとしません。そこでメスはお尻と翅をこすり合わせて「ジャジャジャジャジャーーー」と激しく鳴くのです。「あたしはメスだから入れてちょうだい!」と言うのです。そうするとオスはメスの音だと判ると孔から出てきてメスが入れるように入口をあけます。そうしてメスが中に入ります。メスはオスが作った孔のお部屋を吟味します。気に入った場合はまた入口まで出てきてオスと入口で交尾した後、めでたく新居に入り、新しい家族をはぐくみます。気に入らない場合はそのまま去っていきます。やがてメスは坑道をさらに掘り進み、数十cmに伸ばし、卵を産みます。この時に坑道壁面にアンブロシア菌が植えつけられます。木くずはオスとメスが協力しながら孔の外に放り出すようです。卵からかえった幼虫は壁面で生育したアンブロシア菌を食べながら成長し、なんと幼虫がさらに孔を掘り進みながら坑道を伸ばしていくのです。その掘った木屑が木の周りの地際に多量に降り積もります(図3)。やがて幼虫は垂直方向に長さ1cm程の部屋を作りそこで蛹になります(図4)。こうして大部分が冬を越してから次の春に成虫になりまた初夏に脱出飛翔を繰り返します。なかなか興味深い虫ですね。

 


図1. ナラ枯れの様子(2006年新潟県胎内市)
図1. ナラ枯れの様子(2006年新潟県胎内市)

図2. カシノナガキクイムシ雌成虫(左)とカシナガの坑道断面(右)
図2. カシノナガキクイムシ雌成虫(左)とカシナガの坑道断面(右)

図3. カシナガに穿入されたミズナラ。幼虫の出した木屑が地際に降り積もる様子
図3. カシナガに穿入されたミズナラ。幼虫の出した木屑が地際に降り積もる様子

図4. カシナガは幼虫の作った個室で蛹になる。
図4. カシナガは幼虫の作った個室で蛹になる。

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