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更新日:2015年8月2日

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自然探訪2015年8月 遮断蒸発

遮断蒸発

急に雨が降ってきたときに木陰に入り、雨宿りをした経験は多くの方がお持ちと思います。この時、樹木の枝葉は傘の役割をするだけでなく、雨の一部を蒸発させています。これは「遮断蒸発」と呼ばれる、森林に特徴的な現象です。

森林に降ってくる雨は「林外雨」と呼ばれ、地面に達するまでに図1のような経路をたどります。「林外雨」はまず林冠層において「葉に付着する雨」と葉の間をすり抜けて地面まで到達する「直達雨」に分かれます。「葉に付着した雨」はさらに、地面へと滴り落ちる「滴下雨」、木の幹を流れ下る「樹幹流」、大気へと蒸発する「遮断蒸発」に分かれます。「直達雨」と「滴下雨」を併せて「樹冠通過雨」といいます。「樹冠通過雨」と「樹幹流」の和である「林内雨」として地面に達した雨水は、土壌に浸透していきます。以上をまとめますと、森林に降った雨は「樹冠通過雨」、「樹幹流」、「遮断蒸発」の3つのいずれかになる、ということです。

遮断蒸発量を直接測定する方法は、まだ確立されていません。そのため、「林外雨」、「樹冠通過雨」、「樹幹流」それぞれの量を測定し、「林外雨」から「樹冠通過雨」と「樹幹流」を差し引くことによって「遮断蒸発」の量を推定します。樹幹流と樹冠通過雨の測定例をそれぞれ写真1、3に示します。写真1の例では、幹に巻いたウレタン樹脂で樹幹流を集め、流量計に誘導し計量しています。写真3の例では、雨樋で樹冠通過雨を集め、樹幹流と同様に計量しています。

林外雨に占める遮断蒸発の割合は、降雨回数や降雨強度に応じて変化します。一般に降雨回数が多いほど、降雨強度が弱いほど、割合は高くなります。降雨強度の強いスコールが多い熱帯雨林では約14%という値が報告されています。逆にシトシト雨の多いヨーロッパでは約50%という報告例があります。日本では約10~30%の割合が一般的に報告されています。

森林で「遮断蒸発」が発生する原因の一つに、樹木の大きさが不揃いなことがあります。空から地表を見下ろすと、田畑や草地での凸凹がせいぜい数~10cm程度であり、空から見下ろしても凹凸が解らないのに比べ、森林の表面は、大きさ3~5m程度の凸凹が連続しているように見えます。このように森林表面の凸凹は非常に大きいため、林冠層では上下方向にも風が吹きます。風が上下方向にも吹く事によって、林冠層の水蒸気が空へ効率よく移動し、蒸発量が多くなると考えられています。また、地上10~20mの高さにある林冠層は地面よりも強い風にさらされるため、木の葉の表面に付着した水が蒸発しやすい環境にあります。

 
図1 森林に降った雨が地面に達するまでの経路
図1 森林に降った雨が地面に達するまでの経路
森林に降る雨は、林冠で「葉に付着する雨」と「直達雨」に分かれます。
「葉に付着した雨」はさらに、地面へと滴り落ちる「滴下雨」、木の幹を流れ下る「樹幹流」、大気へと蒸発する「遮断蒸発」に分かれます。
樹幹流は、写真1に示すようにして測定します。
滴下雨と直達雨を合わせた「樹冠通過雨」は、写真3に示すようにして測定します。
遮断蒸発は、林外雨から樹幹流と樹冠通過雨を差し引いて求めます。
日本では森林に降ってくる雨の10~30%程度が遮断蒸発になります。

写真1:樹幹流の測定例
写真1:樹幹流の測定例
幹を流れ下る水をウレタンマット(水色のもの)で集め、ホースで流量計に誘導して測定を行う。

写真2
写真2 :勢いよく樹幹流は流れるため水がウレタンマットの上から溢れないよう、縁を高くしている。

写真3:樹冠通過雨の測定例
写真3:樹冠通過雨の測定例
雨樋(橙色の点線)で樹冠通過雨を集め、ホースで流量計に誘導して測定を行う。

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