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更新日:2016年3月1日

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自然探訪2016年3月 北欧の土を訪ねて

北欧の土を訪ねて

私たちの足元には当たり前のように土がありますが、現在の姿になるまで気の遠くなるような時間がかかっています。土壌の「壌」と同じ読みを持つ言葉には、醸造、お嬢さんなどがありますが、いずれも時間をかけて育まれるものです。特に、土壌の発達には時間がかかり、何千年も何万年もかかって培われます。そんな中で、数百年間で発達する土もあります。舞台は北欧、エストニアです。

北欧はヨーロッパアカマツやトウヒといった針葉樹の森が広がっています。森の中を歩けば、足元には背の低いブルーベリーの木が繁茂し、土は分厚いコケや地衣類によって覆われています。平坦な地形には湖や湿地帯も多く、近くのサウナ小屋から湖に飛び込む人もいます。森と湖の景観は氷河のつくりだしたものです。

氷河期、北欧は厚さ千メートル以上の氷河に覆われていました。地球の表層は固い地殻からできていますが、この氷河の重みによって北欧の大地はごく僅かにへこんでいたようです。気候が暖かくなり氷河がなくなると、地球のへこみが元に戻り始めます。地殻平衡(アイソスタシー)という働きによるものです。活発な場所では今でも毎年1センチも大地が隆起しています。

沿岸部では、海の底だった場所が少しずつ陸地化しています。沿岸部から内陸部へ土を掘りながら歩けば、沿岸部では生まれたての土を観察でき、内陸部ほど古い土を観察することができます(写真1)。写真左の若い土から写真右の古い土まで土壌の年齢は数百年の違いに過ぎませんが、落ち葉の層の下に白い砂の層、その下には赤黒い層が分厚く発達します。この土は、特徴的な白さからポドゾル(ロシア語で「灰」を意味する)と呼ばれています。

数百年という比較的速い土の発達には、落ち葉の層や植物の根から滲み出した物質が関わっています。この中にはクエン酸のような有機酸も多く存在し、土に浸み込んだ雨水は微炭酸のレモンジュースほど酸性の強い水となります。酸性の水は鉄やアルミニウムなどの粘土成分を洗い流し、白い砂だけを残します。溶かされた鉄やアルミニウムはその下で再び蓄積し、赤黒い層となります(写真2)。

日本にはポドゾルのような土はほとんどありません。火山灰がもたらした大量の鉄やアルミニウムが有機酸をトラップ(吸着)するためです。それでも、北欧とよく似た高山帯の針葉樹林の下では、稀にポドゾルにお目にかかることができます(写真3)。白い層がはっきりするまでは、もう少し時間がかかりそうです。

四季の移ろいとともに変化する植物とは異なり、土の変化に気付くことはありません。それでも、地下ではゆっくりと土も変化しているのです。

 (立地環境研究領域 藤井 一至)

 

写真1:ポドゾル土の発達過程(エストニア):左から右にいくほど古い土
写真1:ポドゾル土の発達過程(エストニア):左から右にいくほど古い土

 

写真2:ポドゾル土の断面(エストニア)
写真2:ポドゾル土の断面(エストニア)

写真3:ポドゾル土(埼玉県)
写真3:ポドゾル土(埼玉県)
 

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