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更新日:2017年10月6日

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自然探訪2017年10月 山菜・きのこ採りのたのしみ

山菜・きのこ採りのたのしみ

南北に長く山がちな日本列島では、気候や地形に応じてさまざまな植物やきのこが生え、その中には食べられるものもいろいろあります。とくに、中部・北陸から東北地方のブナやナラなどの落葉広葉樹林が広がる地域では、明るい林床や林縁に食用となる山菜やきのこの発生量が多く、その利用が盛んです(写真1、2)。採られる山菜・きのこの種類、呼び方、採り方、調理法は地域ごとに様々で、地域文化の一つにもなっています。天然の山菜・きのこは採取時期が限られ新鮮なものは流通が難しいですが、乾燥、塩漬け、冷凍などによって一年を通して楽しめます。さまざまな山菜・きのこ料理は、大人になってからその繊細な美味しさを感じるようになった方々も多いのではないでしょうか(写真3)。また、味覚(への想像?)を含めた五感を使って歩きながら採取することで、ウォーキングよりもディープに山林を味わえます。いつ頃どの種類が採れそうといったフェノロジー(生物季節)やその年変化、種ごとの生育環境の違いなど、採取者は自然環境への関心も自ずと高まるようです。

以前、いくつかの山村集落で全戸アンケートを行ったところ、採取時期には毎週末さらに多い人になると2、3日と置かずに短時間でも野山に入り、季節に応じて様々な種類の山菜・きのこを採る様子が見られました(写真4)。都市やその郊外に住んでいると野山に入る機会は限られますが、国土の7割前後が森林や山地の日本では、農山村を中心に季節毎の採取を楽しみにしている方々が多くいます。採取者には高齢者が多いものの、退職後の楽しみにしている方々もおり、こうした山林利用は、高齢化と人口減少のなかで少なくなりつつも今後も続いていくと考えられます。また、地域外に出た親戚や友人知人、山に行けない・行かない方々へのお裾分けもよく見られます。このように、山菜・きのこ採りは、森の恵みを広く行き渡らせ、山村の社会的つながりを地域外につなぐ役割も果たしていると言えるでしょう。

一方、山林の利用低下により山菜・きのこの発生・採取量も変化しているようです。聞き取りに留まりますが、若齢林や落ち葉掻きされた明るい林が減ってそうした環境を好む山菜・きのこの発生量が減ったり、山道が荒れて山林に入りにくくなったといった話をよく聞きます。また、道沿いなど入りやすい場所では地域内外で採取者が競合するため、採取制限の看板の設置や見回り、入山料徴収など、地域ごとに資源を持続的に利用するための取り組みが見られます(写真5)。さらに、福島第一原発事故の影響を受けた地域では、いかに安全を確保しつつ地域毎の山林利用の文化を将来に継承できるどうかが課題となっています。このように、山菜・きのこを介した山林利用は、様々な可能性を秘めつつ、自然・社会環境の変化の中で大きく移り変わってきています。

 

(森林管理研究領域 松浦 俊也)

 

写真1:沢沿いの麓斜面に群生するモミジガサ
写真1:沢沿いの麓斜面に群生するモミジガサ(シドケ)

写真2:日当たり良いコナラ林床のシャカシメジ
写真2:日当たり良いコナラ林床のシャカシメジ(センボンシメジ)

写真3:様々な山菜・きのこ料理

写真3:様々な山菜・きのこ料理(福島県只見町にて2008~2010年撮影。
季刊森林総研No.36「森の文化力」pp.2-3「山菜をめぐる地域文化」参照)

写真4:沢沿いの麓斜面でのコゴミ採り
写真4:沢沿いの麓斜面でのコゴミ(クサソテツ)採り

写真5:山菜・きのこ等の採取禁止の看板
写真5:山菜・きのこ等の採取禁止の看板

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