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更新日:2019年4月1日

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自然探訪2019年4月 森から流れるきれいな水

森から流れるきれいな水

森の中を歩いていて沢の流れを眺めたとき(写真1)、清々しい気分になる人は多いと思います。きれいな森から流れる水は見た目にもきれいですが、成分を調べると本当にきれいであることが分かります。一方、森に降る雨は都市域などから運ばれてきた様々な汚れを含んでいて、あまりきれいではありません。森には水をきれいにする仕組みがあるのです。それを担っているのは森林土壌です。

森の中の丈の低い植物や地面を覆っている落ち葉の層は、雨粒の衝撃から表層の土壌を守っています。もしこの働きがなければ、雨が通る隙間がつぶれてしまい、地中に水がしみ込めなくなって地表面を流れるとともに土壌を侵食し、沢から濁水があふれ出すことになってしまうでしょう。落ち葉の層の下の土壌には大小の隙間がたくさんあります。強い雨が降ったときでも、大きな隙間が水を通し、地中にしみ込ませることができます。地中の細かい隙間をゆっくり流れるとき、チリのような比較的大きな汚れは、ろ過されて取り除かれます。水に溶けている汚れはろ過では取り除かれませんが、汚れが水の中で鉛などの金属のようにプラスの電気を持つ場合、土壌粒子の表面に多いマイナスの電気に引き付けられ、水から取り除かれます。このことは簡単な実験で再現することができます。プラスの電気を持つ色素を含む水を土壌に通すと色素が取り除かれて透明になります(写真2)。酸性雨の水素イオンもプラスの電気を持っているので同じように取り除かれます。このとき、電気的なつり合いが保たれるように、もともとマイナスの電気に引き付けられていたカルシウムイオンなどが水素イオンの代わりに水に放出され、酸性が弱まって中性に近づきます。こうしてきれいになった水は山の中をゆっくりと流れて地下水になり、やがて谷から湧き出します。それらが集まって大きな川の流れとなり、下流に暮らす私たちの生活を支えているのです。水資源として大切な冬場の雪も、見た目はきれいですが様々な汚れを含んでいます(写真3)。春の雪解けのとき、土壌を通過せずに融雪水が沢に入ると、沢の水が普段より酸性になることがあります。

きれいな水をいつまでも使い続けるためには、土壌を守らなければなりません。森林が混み過ぎて林内に届く光が足りなくなると、丈の低い植物がなくなり、土壌が雨滴にさらされやすくなってしまいます。そうならないように、樹木の密度を適度に保ち、林内に光が届くようにすることが大切です。

 

(立地環境研究領域 小林政広)

写真1:森の中を流れるきれいな水
写真1:森の中を流れるきれいな水

写真2:森林土壌が水をきれいにする仕組みの実験の様子
写真2:森林土壌が水をきれいにする仕組みの実験の様子

写真3:雪に覆われた沢(雪にも様々な汚れが含まれています)
写真3:雪に覆われた沢(雪にも様々な汚れが含まれています)

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