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ホーム > 研究紹介 > 研究成果 > 研究発表会等 > もりゼミ > 研究発表会等 > もりゼミ > 過去のテーマ(もりゼミの歴史)H15-17

更新日:2017年3月1日

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過去のテーマ(もりゼミの歴史)H15-17

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平成17年度

平成18年2月27日

Direct and indirect interactions between rodents and seed/seedling dynamics in temperate mixed forests.

(温帯混交林におけるネズミと種子・実生の動態の間にみられる直接・間接の相互作用)

秋田県立大学 生物環境科学科 助教授 星崎 和彦

Rodents play pivotal roles in the regeneration of large-seeded trees through seed dispersal and seed/seedling predation. Conversely, large-seeded tees can affect rodent populations because of large interannual fluctuation in seed production (masting). Here I examine the role of rodents on the regeneration of a large-seeded tree Aesculus turbinata (Hippocastanaceae) and interrelationships among Aesculus and other sympatric large-seeded trees (Fagus crenata and Quercus crispula, both Fagaceae) in a temperate mixed forest.
Wood mice (Apodemus spp.) and voles (Eothenomys andersoni) are the shared seed predators for these tree species. These rodents had strong direct impacts on Aesculus regeneration through seedling herbivory. However, the negative impact was mitigated through seed scatterhoarding by rodents and seedling resistance to herbivory, resulting in presumably mutualistic interactions between Aesculus and rodents. The regeneration parameters of Aesculus greatly varied among years, but the pattern was completely inconsistent with the predator satiation hypothesis.
A test whether seed production by other species affects Aesculus regeneration revealed that Fagus masting likely reduced Aesculus overall seed survival but that Quercus masting did not. Rates of Aesculus seed predation dramatically changed at shorter time scales in a Fagus mast year, making the indirect interaction very complex.
Rodents exhibited differential numerical responses among different forest types. In Fagus monodominant forests, annual seed resource was highly pulsed, and rodent numbers were accordingly predictable. Contrastingly, rodent populations were unpredictable in the mixed-species forest (but the effect of Fagus masting was discernible), though annual seed resource was relatively constant.
Thus roles of rodents on tree regeneration can vary depending on forest community parameters (e.g. forest composition, fruiting synchrony among species) and seed quality for rodents (e.g. nutrition).


平成18年2月16日

大規模シカ柵実験 ~その一部始終~

東北支所 生物多様性研究グループ 堀野 眞一

森林総合研究所は農林水産技術会議からの受託研究「野生鳥獣による農林業被害軽減のための農林生態系管理技術の開発」を2001~2005年度に実施した.演者らは「大規模シカ柵」実験という研究計画を掲げてそれに参画した.本講演では,その始まりから終わりまでを概観する.
ニホンジカの個体数増加と分布域の拡大,また,それに伴うシカの農林業被害と自然植生への過度の影響が問題化して久しい.シカを密度管理するためには,いかなるシカ密度のもとでどのような影響が発生するのかを明らかにする必要がある.これは被害対策のためのみならず生態学的にも興味深い内容を含んでいる.ところが,これを自然個体群で研究することは非常に困難であるため,柵囲いによる実験を計画した.
柵は茨城県北部の国有林の中に2基建設した.面積は1月4日 km2と1月16日 km2で,それぞれにメスジカ1頭を導入した(2002年6月).これによって,4頭/km2と16頭/km2という密度既知かつ不変の「シカ生息地」を手に入れたことになる.この中で,スギ・ヒノキ造林木への食害や自然植生(広葉樹林とミヤコザサ群落)への影響といった基本的な項目を調査した他,密度既知であることを利用して糞粒法(密度推定法のひとつ)の精度検証を行った.また,シカが人慣れしていることを利用して,24時間直接観察という方法により,シカの土地利用,行動時間配分,排糞量等を調査した.
大規模シカ柵実験は2005年10月末に終了し,翌日から解体工事が開始された.来年度からは,シカ柵跡地で植生回復調査を実施する予定である.

平成18年2月9日

ニホンキバチとヒゲジロキバチによるスギ・ヒノキ材変色被害の原因と発生機構について

東北支所 針葉樹病害担当チーム長 田端 雅進

ニホンキバチとヒゲジロキバチは樹木の樹幹に穿孔するハチで、主に衰弱木や被圧木、比較的新しい倒木や丸太などに寄生する。これらのキバチは雌成虫がスギやヒノキに産卵する際に、腹部の菌のうに保持している共生菌を感染させる。この共生菌は材を淡褐色~褐色に変色させ、材の経済的価値を低下させる。防除の基本は間伐木を林内に放置しない(伐り捨て間伐を行わない)ことであるが、材価の低迷や林業労働力不足などのため、間伐木の多くが放置されている。これまでにニホンキバチ、ヒゲジロキバチの被害に対する施業的防除法を開発するための試験が複数の研究グループによって取り組まれている。
本ゼミでは主に材変色被害の原因と発生機構について説明し、最近の研究についても報告する。


平成17年9月9日

西岩手山における噴気活動の化石としての植生帯-岩手山の噴気活動史の編年を目指して-

岩手県 総務部 総合防災室 土井 宣夫

岩手山の火山活動はその植生分布に影響を与えている。例えば、東岩手山の薬師岳山頂から東麓にかけての地域や西岩手山の大地獄谷および黒倉山~姥倉山間の地域において火山活動の影響が顕著に現れている。時代を縄文時代から現在までに限定すると、東岩手山では大規模な山体崩壊による植生の一掃(約7千年前)、マグマ噴火の厚い降灰による植生破壊(約7千年前以降イベント的に数回発生し、最後は1686年噴火)、溶岩流による局所的な植生破壊(最後は1732年焼走り溶岩の噴火)、降灰した火砕物の斜面下方への移動による植生侵入の阻害などがある。一方、西岩手山では水蒸気爆発の降灰による植生破壊(約8千年前以降大地獄谷でイベント的に数回発生)、地温上昇と噴気活動による植生破壊(本講演の主題)がある。
西岩手山の黒倉山~姥倉山間の地域では、黒倉山西斜面と姥倉山東部の稜線部に、地温が高くごく弱い噴気をともなう裸地(A帯と仮称)がある。裸地の外側には順に笹帯(B帯)、笹が多く低潅木*をともなう帯(C帯)、高樹木**が多く笹地をまだらにともなう帯(D帯)、高樹木帯(E帯)が分布している。笹帯は融雪が早く、裸地に次いで地温が高い地域である。
西岩手山では1998年のマグマ貫入にともない、1999年春から黒倉山~姥倉山間の稜線付近で地温が上昇し、噴気が活発化した。噴気孔周辺では植物が枯死しはじめ、枯死面積も拡大したが、ここで注目されるのは植物の枯死が主に笹帯(B帯)とC帯の一部で発生したことである。笹帯の地温が高いことを考慮すると、笹帯は過去の高温の裸地であり、地温と噴気活動が低下した時期に裸地に侵入した笹が、噴気活動が再び活発化したことで後退したものと考えられる。同様に、笹帯を取り巻くC帯とD帯も過去の裸地であった可能性が高く、植生帯は過去の噴気活動の存在とその範囲を示す「化石」と考えることができるであろう。
西岩手山では、1)植生帯の分布と、2)植物が枯死し裸地化することで植物根の支持を失って斜面下方に移動した土砂の分布や、3)土砂の堆積年代にもとづいて噴気活動史を編むことができる。その結果、西岩手山の噴気活動は、東西岩手山の火山活動期(噴火期)に活発化したことが明らかになっている。本講演では、噴気活動史を編む上で重要な情報源となった植生帯の見方等について、ご意見、ご教授をお願いしたいと考えている。(*ダケカンバなど、**オオシラビソなど)


平成17年7月29日

ササの生理的統合に関する研究とその後

森林総合研究所 木曽試験地 齋藤 智之

ササ類は林床植物として国内に広く分布し高い被度で優占するため、林業上および保全や植生管理上更新の阻害要因としてかつて非常に多く研究対象とされてきた。しかし、ササは地下茎を持つクローナル植物であるにもかかわらず、クローナル植物としての特性に着目した個体レベルの研究はなされなかった。演題にあるクローナル植物における生理的統合とは個体内の連結したラメット間の同化産物や栄養塩のやりとりのことであり、林床の資源環境がヘテロであれば生理的統合はササ個体にとって暗い林床に生育する上での耐陰特性の一つと考えられる。そこでこれまでササにおける生理的統合の存在証明を行い、野外における生理的統合の実態研究を行ってきた。本講演ではこれらの研究の内、野外における実態を中心に研究紹介し、さらに今後の研究計画を紹介したい。


平成17年7月21日 公開講演会

国立公園は自然保護の砦

法政大学 経済学部 教授 村串 仁三郎

【講師略歴】

1935年生まれ。法政大学社会学部卒

同経済学部大学院博士課程終了、後に経済学博士

同経済学部助教授を経て現職。同学部長等を歴任

専門は「労働経済」特に「鉱山労働史」,「現代レジャー論」,「観光学」

主著書

『国立公園成立史の研究-開発と自然保護の確執を中心に-』法政大学出版局 2005年

『レジャーと現代社会 -意識・行動・産業』 法政大学出版局 1999年

『日本の鉱夫 友子制度の歴史』 世界書院 1998年

『日本の伝統的労資関係 友子制度史の研究』 世界書院 1989年

『賃労働理論の根本問題』時朝社 1973年その他多数


平成17年7月15日

 

半島マレーシア・ブキタレ試験地水文概況-Hopea odorata早生樹の造成-

東北支所 森林環境グループ 野口 正二

1980年代、急激な熱帯林の消失による環境破壊が進行した。この熱帯林の減少によって、その地域の洪水・渇水問題ばかりでなく、気候変動など地球規模の環境問題も危惧されている。しかし、この地域における水文研究の蓄積は、温帯地域と比較して乏しい。野口らは、1991年からマレーシア森林研究所と共同で熱帯林小流域を対象とし水文観測を実施してきました。
今回は、この水文観測を通じて得られた熱帯林の水文特性(降雨特性、土壌水分環境、流出特性)について発表します。さらに、熱帯林を皆伐して早生樹種(Hopea odorata)を造成したことによる水文学的な変化について紹介します。


平成17年6月10日

マツ林の枯れやすさ・枯れにくさを測るための指数

東北支所 生物被害グループ 中村 克典

マツ材線虫病(いわゆる松くい虫被害)によるマツ林の被害程度は林分によって異なるように見える場合があります。この枯れ方の違いが何らかの阻害要因によるものであるなら,それを操作することで材線虫病被害を緩和できるかもしれません。しかし,従来枯れ方の違いは「枯損程度」などの不確かな指標をもって論じられるばかりで,科学的な検討に耐えませんでした。そこで,直接伝播される伝染病の拡大モデルを材線虫病に適用し,枯れ方の違いを数値的に把握する方法を考えました。この指数の特性や,これを使って何をしようと企んでいるのか,といったことについてお話します。


平成17年5月20日

水道事業体による水源林管理の始まりとそのあゆみ

特別研究員(PD) 泉 桂子

東京都、横浜市、甲府市などの水道事業体は約一世紀前から自らの水道水源にある森林を買い入れ、連綿と管理を行ってきました。これらの水源林管理は森林の公益的機能の維持・発揮や森林の公的管理が強調されている今日、そのような要請に応えてきた歴史的事例として着目されます。なぜ水道局は森林に直接管理するほどの関心を示したのか、またその森林は実際どのように管理されてきたのかを紹介します。

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平成16年度

平成17年2月23日

話題1:近年の森林施業の実態に関わる要因:九州地方における事例

東北支所 森林資源研究グループ 林 雅秀

1990年代以降の九州地方における素材生産と再造林の状況を紹介したのち、森林の施業の実施に影響する要因を明らかにすることを目的とした2つの研究について報告します。1つは市町村別の統計資料をもとにしたアプローチで、もう1つは森林所有者に対するアンケート調査をもとにしたアプローチです。


話題2:困った時のコンピュータ集約型統計法

東北支所 地域研究官 藤田 和幸

コンピュータ集約型(Computer-intensive)統計法は、統計的検定が求められる状況にあって、適当な方法が見いだせない苦境を、コンピュータの力わざで強引に抜け出すための方法群を指します。美しくないデータにもモノを言わせざるを得ない場面に出くわす機会の増加、高性能パソコンの文字通り個人ユースが可能になったこと、などなどの背景から、このやり口に対する期待が高まりつつあると感じています。今回はそのなかでBootstrap法(Re-sampling)の話題が中心になります。ただ、私自身にOriginality はなく、また専門家でもありません。研究者一般がこのやり口に馴染むことをお勧めするのが今回の目的です。


平成17年7月29日

話題1:半乾燥地における水収支

東北支所 研究調整官 藤枝 基久

国際協力事業団の「チリ半乾燥地治山緑化プロジェクト」では、試験流域(16.25 ha)を設置して水文観測を行った。1995~2001年の7年間の観測期間中にエル・ニーニョおよびラ・ニーニャ現象による異常気象が発生した。これらの記録は、半乾燥地域における水文環境の概要を理解する上で貴重な資料と言える。観測期間中の流域水収支は、平均年降雨量569.4mm、平均年直接流出量179.5mm、平均年基底流出量33.4 mm、平均年蒸発量356.5 mmであった。この結果は、過去の小麦栽培や過放牧による地表面の攪乱が激しいため降雨中にホールトン型地表流が発生し、直接流出成分が多くなったものと推察された。


 

話題2:岩手クマ捕殺上限数106頭をめぐる混沌

東北支所 生物多様性研究グループ 主任研究官 岡 輝樹

2004年6月、岩手県は県内で捕獲、殺処分されるツキノワグマの上限数を北奥羽地域個体群37頭、北上高地地域個体群69頭と発表した。算出にはレスリー行列モデルが導入され、これまで岩手県が蓄積してきた多くの個体群パラメーターが使用されている。ゼミではこの新しい試みにエールを送りながらも、まだまだ発展途上である大型哺乳類の保護管理手法について紹介する。


平成16年6月4日

話題1:木曽赤沢ヒノキ老齢林の構造と動態

東北支所 育林技術研究グループ 星野 大介

長野県木曽谷の天然生ヒノキ林は優良材を産する日本三大美林のひとつであるが、代表的林分である赤沢ヒノキ老齢林では、その下層に強耐陰性樹種アスナロが優占しているため、ヒノキ材の持続的生産やヒノキ林の景観保持が危惧されてきた。そこで本研究ではこうした赤沢ヒノキ老齢林の更新動態を把握するため、大面積長期固定調査区(4ha プロット)を設置、10年間のモニタリングを実施し、主要樹種個体群の構造と動態を解析した。調査区設置の一時点での下層木構造はアスナロの優占を示唆していた。しかし、その後10年間の個体群動態は、アスナロを含む常緑針葉樹種の減少と落葉広葉樹種の増加の傾向を示していた。そこで主たる更新の場であるギャップでの潜在更新木を解析したところ、ギャップ内でのアスナロ更新の可能性は少なく、むしろ落葉広葉樹種が優勢であり、さらにその下にヒノキ・サワラが共存しうるという更新機構の存在が推定された。このような結果から、赤沢ヒノキ老齢林は、従来言われているようなアスナロ林へ移行するとは考えにくく、落葉広葉樹種やヒノキも含むより多様な林相に変化してゆくものと結論づけることができた。
今まで同様の研究を亜高山帯林や暖温帯針広混交林、暖温帯二次林などで行ってきた。こうした経験と知見を踏まえ、今後は渓畦林、不成績造林地、あるいは東北地方の代表的森林に既設ないし新設の固定試験地において長期モニタリングを実施し、人口統計学的解析と空間分布解析などを通じた動態予測研究を行いたいと考えている。またこうした現象を引き起こす原因についての調査・試験、あるいはリモートセンシングによる、より広範囲な森林動態の実態解明も適宜行いたいと考えている。


話題2:熱帯途上国における森林の現状とJIRCASにおける共同研究

東北支所長 中島 清

熱帯地域の途上国では、過去数十年間にわたる過剰な木材伐採や森林火災、農耕地等への転用により、その面積を急速に減少してきた。その背景には、木材輸出による外貨獲得が国家財政の大きな部分を支えてきたこと、人口増加に伴う農耕地の確保が優先されたこと、土地所有権が曖昧で管理が行き届かないこと、異常気象の影響による大規模火災が頻発したこと、等がある。その結果、森林資源の劣化、減少は著しく、集中豪雨等による洪水の多発、土壌浸食による表土の流亡が顕在化し、その一方では干ばつや渇水が頻発し、荒廃地が拡大しつつある。こうした地域の森林では、伝統的な生活様式を堅持しながら森林からの恵みを利用して生活をしている人々がいる。また、熱帯地域の森林は生物多様性が高いことでもよく知られており、記載されていない動植物種も数多く存在すると考えられている。これら未知の生物の中には薬草・薬木の類も多く、将来の新薬開発にとって欠くことのできない貴重な遺伝資源も含まれていると期待されている。
木材伐採権を企業等に売却するコンセッション方式を採用している国々では、伐採権を譲渡する代わりに伐採跡地の造林を義務つけている。その結果、東南アジア地域では世界でも最も人工造林による森林増加が著しい地域となっている。しかし、長い乾期、塩害地の拡大等、環境条件の厳しいこれらの地域では、植林が容易で成長の旺盛なアカシア、ユーカリ等の早成樹を一斉造林することが普遍的に行われており、その結果、本来ある熱帯林とは異なる広大なモノカルチャーの人工造林地が広がっている。
こうした現状に対し、国際熱帯木材機構(ITTO)では、熱帯林の持続可能な経営を目標とする「基準と指標」を作成し、これに準処した森林で生産された木材のみを流通の対象とする認証制度(ラベリングシステム)の方針を出した。しかし、現実には持続的経営が可能な森林が増加しているとは言い難い。その背景には、予算不足、人材不足、制度の不備と管理能力不足、熱帯林や樹種に関する科学的知識の欠如、有効な貧困対策の欠如等があるといわれている。
国際農林水産業研究センターでは、1972年に熱帯農業研究センター(TARC)として発足以来、マレイシア、フィリピンを中心に熱帯樹木の生理・生態的特性解明や荒廃地回復を中心とした共同研究を通し、熱帯林再生のための研究を進めてきた。1993年には国際農林水産業研究センターとして組織再編を行い、畜産草地部、水産部とともに林業部が新設され、社会経済、木材利用をも包含した幅広い研究を展開している。
今回は、熱帯林への理解をより深め得て頂くことを念頭に、現在、熱帯林途上国が抱える森林・林業の諸問題と、JIRCAS林業部が進めている国際共同研究を紹介したい。

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平成15年度

平成16年2月20日

森林の林床被覆が有する土壌侵食防止機能の評価手法に関する研究

東北支所 森林環境研究グループ長 三浦 覚

ヒノキ人工林では、若齢期における林床植生の消失にともない地表の土壌侵食が活発化しやすく、土壌保全上の問題となっている。本研究では、林地斜面における土壌侵食過程の考察に基づいて、土壌保全に関する林床被覆率と物質(土砂)移動レートという新たな評価指標を提起した。林床被覆率は、堆積リターおよび林床植生の両者を考慮し、林床の被覆状態の評価に定量的な基準を与えた。土砂移動レートは、斜面幅1m 降水量1mm当たりの土砂移動量で定義され、雨滴侵食が卓越する日本の林地斜面では、土壌侵食強度を代表する有効な指標であると認められた。土砂移動レートは林床被覆率により推定可能であり、林床被覆率による林床被覆状態の評価が、林地の土壌保全を考慮した森林管理手法の確立に有用であることを述べる。合わせて、森林下の土壌侵食研究における今後の課題について総括する。


平成15年9月25日

話題1:北海道の天然林材はどのように利用されているか

東北支所 森林資源管理研究グループ 主任研究官 天野 智将

北海道は国内の広葉樹製材・加工の半分を占め、全国に対する供給基地であるが、東北と同様、北海道においても広葉樹の加工業は大きく衰退している。海外製品の輸入拡大といった状況下で、消費者とどう結びつくか?広葉樹産業は模索してきた。その結果、広葉樹製材業はいくつかのタイプに分けられるようになった。また日本経済の低迷は購買力の低下を引き起こしており、中国における巨大な市場の拡大とともに広葉樹材の原料事情に国産材回帰と言える状況が現れた。広葉樹加工業は主要な政策対象とならなかったため各企業はそれぞれ独自に対応をとってきた。また針葉樹加工業に比べ規模が遙かに小さく状況を概観し易い。日本の木材加工業が目指す方向、ひいては日本の中小企業が目指す方向の一つが業界の動向の中に示されていると考えている。これまで北海道で調査してきたことを中心に報告をする。


話題2:樹洞性鳥類の保全と森林管理

東北支所 生物多様性研究グループ 主任研究官 中村 充博

生物多様性の保全を考慮した森林の管理が求められていますが、そのなかで生態系の多様性の保全が重要な側面のひとつとして考えられます。そのため、群集における生物間相互作用と多様性の要をなしていると考えられる樹洞性鳥類であるキツツキ類の保全の観点から森林管理について考えたいと思います。


平成15年7月23日

ミニシンポジウム「環境調和型の施業について考える」


話題1:内外の環境調和型林業の動向について

東北支所 森林資源管理研究グループ 主任研究官 久保山 裕史

環境調和型林業に関する海外の動向について、森林認証制度を中心に説明し、国内の課題について概観する。


話題2:森林性鳥類の保全と森林施業

東北支所 生物多様性研究グループ長 鈴木 祥悟

地域固有の生物群集を保全しながら持続可能な森林管理・経営を行うことが求められていますが、そのためにはどのような点を考慮したらよいかを、森林性鳥類保全の観点からお話ししたいと思います。


話題3:混生広葉樹を生かした人工林の取り扱い

東北支所 チーム長(森林修復担当) 杉田 久志

単一樹種・同齢一斉の針葉樹人工林では生物多様性の低下などの弊害が問題視されている。そして、人工林に混生した広葉樹の価値が認識され、それを生かした人工林の取り扱いが新しい森林施業のあり方として注目を集めている。その背景と研究の事例を紹介し、今後の研究課題を展望する。


平成15年6月12日

フランスの林業学校とフランス林政

東北支所 森林資源管理研究グループ長 古井戸 宏通

1824年に創立されたフランス林業学校を通じてフランスの林政史を概観する。


平成15年4月18日

話題1:種子付着菌によるアカエゾマツ苗立ち枯れ病防御について

日本学術振興会 特別研究員 山路 恵子

アカエゾマツは北海道の主要な樹種であり、苗畑では苗立ち枯れ病による苗木の枯死が報告されている。一般に外生菌根菌には針葉樹苗木の立ち枯れを防御する性質が知られているが、苗畑において生育初期のアカエゾマツ苗木には外生菌根菌がつきにくいという報告がある。そこでアカエゾマツ苗木の生育初期に関与する外生菌根菌以外の微生物(種子付着菌、苗木定着菌)に着目し、苗木立ち枯れ病を防御する微生物の研究を行ってきた。アカエゾマツの種子付着菌には苗立ち枯れ病菌に対して抗菌物質を産生する数種のPenicillium属糸状菌が存在し、それらの中には苗木根部周辺で生育しin vitroの条件下で立ち枯れ病を防御するものも確認された。今回は以前本支所で発表した内容とは異なり、アカエゾマツ種子付着菌と苗木の相互関係、および病原菌との相互関係に焦点をあて、化学的側面から考察したいと考えている。


話題2:食菌性甲虫、ホソオオキノコムシ類の発育生態と生活史適応

日本学術振興会 特別研究員 佐藤 隆士

キノコ(子実体)はパッチ状に分布し、発生時期も限られた発生予測が困難な資源である。その一方で、キノコを利用して繁殖する昆虫類は数多い。このような不安定な食物資源を、昆虫がいかにして利用し、繁殖を行っているのか、また予測のつかない資源の発生に対して年間スケジュールをいかにして調整しているのかなどなど、その疑問は尽きない。しかし食菌性昆虫に関する生活史研究は数少なく、特に甲虫類についてはほとんど明らかにされていない。私はこれまでシイタケ害虫、セモンホソオオキノコムシとニホンホソオオキノコムシ(以下、セモンとニホンと略)およびシイタケという3者を用い、特に短期間での食物消失に対する発育適応と繁殖生態、さらに年間スケジュール調節に関わる休眠と移動分散様式に着目して研究を進めてきた。今回のゼミでは、これら2種の生活史スケジュールの概容について紹介しつつ、キノコという資源の持つ不安定性に対して昆虫がどのように適応しているのかを、幼虫の発育適応、成虫の繁殖特性ならびに季節適応から紹介したい。

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お問い合わせ

所属課室:東北支所 担当者名:育林技術研究グループ 齋藤 智之、森林環境研究グループ 阿部 俊夫

〒020-0123 岩手県盛岡市下厨川字鍋屋敷92-25

電話番号:019-641-2150 (代表)

FAX番号:019-641-6747