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更新日:2018年8月7日

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場長あいさつ 

   東北育種場のホームページに、お越しいただきありがとうございます。

  東北育種場は昭和33年に設置されて以来、成長、材質、各種抵抗性等において優れたスギやカラマツ等の品種を開発し、その原種の増殖・配布等を行ってきました。また、生物多様性の確保と新品種開発に必要な林木遺伝資源の収集・保存にも取り組んできました。
 一方、造林事業の現場では最近、「良い苗が欲しい」、「もっとカラマツを植えたい」、「コンテナ苗を作りたい」と言った声をよく耳にします。また、松くい虫被害が拡大する中、東日本大震災で失われた海岸防災林のマツ林の再生には、マツノザイセンチュウ抵抗性品種の開発・普及が急務です。山づくりの基礎は、地域の実情に即した良い苗の供給にあると強く感じています。
 さらに、国においては未来投資会議で10年後、林業の付加価値生産額を5,000億円とする目標が掲げられました。このため、成長の早い、優れた形質を持った林木の品種改良や増殖の重要性がこれまで以上に高まっています。従来の試験研究の成果がより早く求められてきます。
 このような森林・林業を巡る情勢を念頭に置きながら、現場の様々な課題を踏まえた林木育種の取組を各県等とも連携しながら進めていく所存です。どうぞよろしくお願いいたします。
 現在、重点的に取り組んでいることは以下のとおりです。

1 スギ・カラマツのエリートツリー・特定母樹の開発推進

 特定母樹とは、「森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法」に基づき、農林水産大臣の指定を受けた、特に成長に係る特性が優れ、優良な種苗を生産するための種穂の採取に適した造林用樹木のことです。
 選抜した第2世代の候補木から、スギとカラマツのエリートツリーの開発及び特定母樹の確定を進めます。スギの特定母樹については、エリートツリー及び雪害抵抗性品種の中から選抜し、農林水産大臣の指定を受けます。平成29年度末現在、スギ53系統、カラマツ9系統を開発しました。
 また、特定母樹等に適したコンテナ苗育成方法を確立するため、各家系の育苗特性の把握に取り組みます。

2 マツノザイセンチュウ抵抗性品種の開発と普及

 候補木にマツノザイセンチュウを接種し、生き残った苗木から、マツノザイセンチュウ抵抗性品種を選抜・開発します。開発品種は、松くい虫被害を受けた東北地方のマツ林や、東日本大震災で被災した海岸防災林等を再生するため、普及を図ります。
 また、抵抗性クロマツ苗木の大量生産を図るため、植物ホルモン処理や簡易な人工交配による充実種子の大量生産技術、さし木やバイオテクノロジー技術を活用したクローン苗木生産技術等を開発しており、これらの研究開発した成果の普及を図っていきます。
 さらに、「東北育種基本区アカマツ品種選択ツール」を開発し、東北育種場のホームページに公表しています。これを広く活用していただき、抵抗性アカマツ等の利用促進を図ります。

3 カラマツ種子・苗木の安定的な供給技術の開発

 カラマツの合板や集成材への需要が高まっており、造林面積が増加しています。しかし、カラマツは種子の豊凶が激しく、種子・苗木の安定的な生産を図ることが課題となっています。
 このため、スコアリング等による着花促進技術、植物の成長を促進する物質を活用した苗木の成長促進技術や穂木の増産技術の開発を進めます。

4 林木遺伝資源の収集・保存

 林木遺伝資源の収集は、品種開発と並んで林木育種事業の重要な柱です。新需要が期待できる有用樹種について、優良系統の選抜が可能となる母集団の作成に取り組んでいきます。このため、東北育種場ではウダイカンバ、イタヤカエデ等について、重点的に林木遺伝資源の収集・保存を行います。
 また、松くい虫被害の拡大により、消失の危機に瀕しているマツ類の林木遺伝資源の保存にも取り組んでいます。

5 林木遺伝子銀行110番の推進

 林木遺伝資源の収集・保存の一環として行っている「林木遺伝子銀行110番」は、平成15年から始まり、天然記念物や名木、御神木等の貴重な樹木を後世に残すため、所有者の要請に応じて、「さし木」や「つぎ木」で増殖し、親と全く同じ遺伝子を持った後継樹(クローン)をお返しする事業です。これまで依頼は49件あり、そのうち34件が里帰りしました(平成30年7月現在)。
 今後も地域の要請に応えて、積極的に取り組んでいきますので、皆様からの御要望、情報提供をお待ちしています。

 最後に、東日本大震災で被災した陸前高田市の奇跡の一本松の後継樹の現況をお知らせします。故やなせたかし先生が命名した「ノビル」、「タエル」、「イノチ」、「ツナグ」4兄弟は順調に生育し、樹高は約2mになるまで成長しました。もうしばらくは東北育種場で預かり、故郷へ里帰りできる日まで、大切に育てていきます。

育種場から望む岩手山

       東北育種場から望む岩手山


国立研究開発法人森林研究・整備機構                                                
                                                   森林総合研究所林木育種センター東北育種場
                                                                                                                場長  田 中 直 哉