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更新日:2022年2月3日

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手仕事にっぽん・東北育種場Ver.

 3回目は「東北育種場、こういう仕事もあるんです」バージョンです。

 

 東北育種場内には苗畑があります。樹木の苗を育てる場所です。
 その横にコンテナ苗の育苗のための新しいビニールハウスができました。冬期間の寒風が強い当場では必須の施設。
 ただ、コンテナ苗は、コンテナを地面から離して育苗することにより、その特徴が発揮されますし(空中根切り※1)、できれば作業しやすい高さのコンテナ台があると苗木を育てる作業の能率が格段に上がります。
 コンテナ台が欲しい。しかし!先立つものが、ない…
 であれば自分たちで作ってしまおう。
 鉄パイプと接続金具を購入。これらを切って繋げて、水準器で水平をとりながらの組み立て、数人での作業。最初はぎこちない連携だったが、少し進めていると、それぞれが自分のやるべきことを自然に分担し、気持ちよく作業が進んでいく。こうなればしめたもの。作業は早い。【写真-1,2】
 ビニールハウスのサイズに合わせて大きさを考え、材料を計算し購入、加工、組み立て。結構大変なのであるが、出来上がってコンテナ苗を置いてみると、しっくりきている。【写真-3】
 その他にも色々作ります、直します。散水施設、日覆い施設、播種床…
 現場を持つ職場では色々と工夫をしながら仕事を進めていく、重要です。

 

 さて、今回話題としたコンテナ苗ですが、長い育苗の歴史の中でもこれは結構画期的なものなのです。日本では生産が始まってまだ10年そこそこですが、令和元年度には林業用の苗木生産量の3割近くがコンテナ苗に置き換わってきており、特に当育種場がある東北育種基本区※2の6県では既に半分以上がコンテナ苗として生産されています。
 コンテナ苗とは、何種類かありますが、【写真-4】のような複数の育成孔がある栽培容器で育てた根鉢付きの苗のことを言います。一方、これまでの一般的な林業用の苗木は畑で育てており、出荷の時には堀り取って、根についている土を振り落とします。根が露出した状態で山に持って行き植栽するのです。このため、裸苗とも言います。【写真-5】
 コンテナ苗は、(1)苗畑作業の効率化・労働負荷の軽減(コンテナ台を使うことにより作業がラク、ビニールハウス内で育苗が可能)、(2)植栽時期の拡大(コンテナ苗は、裸苗と違い根鉢があることで乾燥に強いことから、裸苗よりも植栽可能な時期が長い)、(3)植栽作業の効率化(裸苗は植栽時に根を広げて丁寧に植える技術が必要であるが、コンテナ苗は誰でも簡単に植栽が可能)などの理由により、人材不足や高齢化への対応、コスト削減を求められている育苗・造林部門での期待の星なのです(色々解決すべき課題もありますが…)。

 

 育種場では、成長や材質の優れた品種の研究開発や、開発した原種の配布などの事業を行っていますが、これらの事業を進める上で必要になってくる苗木の生産もここで紹介したように独自に行っているのです。このため、試験研究機関であるとともに現場を持つちょっと不思議な職場でもあります…

 

※1空中根切り:コンテナの底面は粗い格子がついているだけで広く開放しており、ここまで達した根が空気に触れることにより根の成長が止まる現象を利用した根切りの方法。
※2東北育種基本区:林木育種事業は、全国を5つの育種基本区に分けて運営しており、東北育種基本区は青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、新潟県の6県。

 

コンテナ台をつくっている様子1

コンテナ台をつくっている様子2

コンテナ台完成

 【写真-1,2】最初は、あーだ、こーだ言っていたのが、じきにスムーズに作業は進む

  【写真-3】しっくり収まったコンテナ苗

コンテナ150cc コンテナ苗裸苗

【写真-4】コンテナ

【写真-5】左がコンテナ苗、右が裸苗

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