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更新日:2022年5月9日

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ミッション:インポッシブル“名木を復活させよ!”

  

     5回目は「林木遺伝子銀行110番」。

     地域のシンボルツリーとも言える巨樹・名木・天然記念物の復活の物語である。

      東北育種場に、一本の電話がかかってきた。

      「地域の名木が枯れそうなんです。なんとかならないでしょうか?」

      チームに緊張が走った。今回の案件はどのようなものか、詳しく状況を聞き取る。

      大丈夫だ、なんとか救えそうだ。さあミッションをはじめよう。

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 樹木は、とても長く生き、とても大きくなります。このため、御神木と崇められたり、地域のシンボルとして住民に親しまれている樹木が多くあります。しかし、いつか寿命は尽きるものであり、また、台風や落雷、病虫害などで弱ってくる木もあります。治療や土壌改良で元気を取り戻せればいいのですが、うまくいかない場合、最後の手段として後継樹の育成があります。

 弱ってきた地域のシンボルツリーの後継樹を育成し、持ち主にお返しする、これが「林木遺伝子銀行110番」事業です。

 この後継樹、種子で増やす方法もあるのですが、そもそも欲しいときに種子が付くのかという問題がありますし、仮に種子が付いたとしてもどこから飛んできた花粉で受粉したのか分かりません(つまり親が分からないということ)。

 そこで“つぎ木”や“さし木”という技術を使います。簡単に言えば、まずは復活させたい樹木の枝(“穂木”と言います。)を採ってきます(穂木を採ってくるので“採穂”です。)【写真1】。そして、

 ・つぎ木:穂木を台木(つぎ木する際に台となる木。接がれるほう。)につなぎ合わせ(様々な接ぎ方があります)、一個の新たな植物体(苗木)を作る【写真2】、

 ・さし木:穂木を地面に挿して発根させ苗木を作る【写真3】、

 方法です。これであれば復活させようとする木と全く同じ遺伝子を持つ苗木、つまりクローン苗木を作り出すことができます。さし木ができる樹種は限られているため、その場合はつぎ木で対応します。

 書いて説明してしまうと何の事はない、簡単ですが、これがなかなか難しい。

 「110番」事業には様々な樹種が申請されてきます。このため、穂木の選択、採穂の時期、そして、つぎ木の場合は台木の選択、つぎ木手法の選択(割り接ぎ、切り接ぎ等)、つぎ木やさし木が上手くいってもその後の苗の管理も重要等々クリアすべき課題が沢山あります。そもそもつぎ木やさし木は技術的な熟練が必要です。

 東北育種場では、樹木の品種の改良や様々な試験研究を行う過程でつぎ木などを行う必要があることから、その知識や技術が蓄積されています。「110番」事業は、この技術を活用しているのです。技術者の腕の見せ所です。(いつか、つぎ木のお話もします・・・)

 

「110番」事業への申請があり、つぎ木などにより後継樹を育成し、そして数年後、地域のシンボルツリーの後継樹として地元に戻します。里帰りです。ホッとする、肩の荷が下りる瞬間です【写真4】。

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数年間に及ぶミッションが終了し、無事、後継樹を返すことができた。地元の方々の受入体制も万全だ。あとは、大きく育つことを願おう。

                                                                 ~ミッション - コンプリート~

 

 

         カスミザクラ

【写真1】110番申請のあったカスミザクラ(山形県)から穂木を採取。貴重な原木なので慎重に採穂することが重要。

採穂した切り口から腐りが入らないよう防腐剤を塗布(写真の黄色い薬剤)。

  

シダレグリ keyaki_kesennuma01
【写真2-1】シダレグリ(秋田県)のつぎ木部分を拡大した写真。上部に伸びている穂木を下部の台木に「切り接ぎ」という方法で接いだ。

つぎ木から約1年。カルスが形成され癒合している。

【写真2-2】つぎ木で育てたケヤキ(宮城県)の後継樹。あとは「里帰り」を待つのみ。

黄色くマークしてある箇所がつぎ木をした部分。

黄色マークの上部が110番申請のあった原木から採取した穂木をつぎ木して育った部分。ここが原木のクローンですね。

黄色マークの下部は台木。なのでこの部分から成長してきている枝や葉は早めに摘み取ってしまいましょう。

 

 

    スギさし木

 【写真3】スギのさし木。スギはさし木が比較的容易な樹種。

さし床には、水はけが良くてかつ保水力があり、清潔で、肥料分がない土を使う(写真は鹿沼土)。

 

 

shidarezakura_genboku

 

shidarezakura_satogaeri

【写真4-1】110番申請のあったシダレザクラ(秋田県)の原木。

樹齢が推定400年、目通りの幹周りが約5.5mの巨樹であったが、台風等の被害で枯死しそうな状態。

 

【写真4-2】シダレザクラ(秋田県)【写真4-1】からつぎ木により育てた後継樹の植樹祭「里帰り」。

時には地元テレビ局の取材を受けることも。地域にとっては大切なシンボルツリーの「里帰り」です。

 

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