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森林を見る社会の目は大きくかわった。20世紀後半にものの豊かさを求めた時代に較べて国民の価値観は多様化し、より生活の質を重視する方向へと移っていった。2000年10月”The Value of Forests”(国連大学)、2001年11月「地球環境・人間生活にかかわる農業及び森林の多面的な機能の評価について」(日本学術会議)などからも、森林に対する価値観が大きく変化していることをうかがうことができる。
用語「森林科学」の出現は、自然の循環系エコロジーと人工の循環系エコノミーのトレードオフの結果として地球環境問題が深刻化していることと無縁ではない。そして、自然の循環系として地球上のバイオマスの9割が蓄えられている森林が、現在注目されているのである。森林科学の大きな特徴の一つは俯瞰的に考察することにある。本書は、森林についての基礎的な知識を説明したものではなく、森林研究の方向性を示唆したものである。
(執筆項 : 「森林、樹木の健全性」 鈴木 和夫)
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