研究紹介 > 職員の著書 > A New Paradigm of Forest Canopy Interception Science: The Implication of a Huge Amount of Evaporation during Rainfall (樹冠遮断研究の新しいパラダイム:降雨中の大量蒸発が暗示するもの)
更新日:2020年5月7日
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降雨中または降雨後に樹冠(葉と枝からなる部分)から雨水が蒸発する現象を樹冠遮断とよぶ。樹冠遮断は降雨強度に比例して増加し、主に降雨中に起きている。その値は1時間に10mmに達することもある。この現象は雨滴が樹冠に衝突して飛沫ができ、それが蒸発すると考えれば説明可能である(飛沫蒸発説)。
最近発表された理論によると、森林からの蒸発は他の地球表面からの蒸発よりも大きいため、大陸大規模流域の森林はその蒸発を補うために海から内陸へと水蒸気を能動的に輸送して内陸に降水をもたらしているとされる(生物ポンプ理論)。
森林からの蒸発が大きいのは樹冠遮断のためで、筆者はそのメカニズムを飛沫蒸発によるとしている。本書では飛沫蒸発説を支持する根拠をレビューするとともに、生物ポンプ理論においては樹冠遮断こそが大陸奥地へ降水をもたらしている本質であるとして、樹冠遮断を通じて森林水循環研究の新しいパラダイムが拓ける可能性を紹介している。
(In Forest Canopies: Forest Production, Ecosystem Health and Climate Conditions, 1-28. 『樹冠:森林の生産、生態系の健全性、及び気候条件』、1-28ページに収録)
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