水害
森林保険では、降水や出水による山崩れ、地すべり、土石流等で生じた「根返り」「埋没」「流失」などの損害に備えることができます。

森林の、山地の崩壊や洪水を防ぐ働きについてはよく知られていますが、森林の種類や状態によってその力には限度があり、限度を超えてしまうと森林自体が被害を受けてしまいます。
森林保険のお支払い対象となる水害の形態としては、次のようなものがあります。
【根返り】豪雨に伴う崩壊、地すべり、基岩上の浅い土壌の滑落等により、立木が転倒したもの(幼齢木の場合、回復は不可能となる)
【埋没】豪雨に伴う崩壊や地すべり等で立木が土砂に埋没したもの(ほとんどの場合、成長の回復や材の利用は見込めない)
【流失】渓岸崩壊、土石流、地すべり等により立木が消失したもの
また、次のような損害で、因果関係を客観的に証明可能なものについては、水害として認定されることがあります。
【浸水・水没】洪水や長雨で林地が長期間浸水又は水没したことにより、立木が生育不能となったもの
【表面侵食】豪雨による土壌侵食により、林地土壌が流失し、立木が生育不能となったもの
出典:森林保険に関する統計資料(森林保険センター)
年度 |
件数 |
面積(ha) |
保険金額(円) |
H27 |
256 |
28.31 |
35,444,985 |
H28 |
169 |
21.47 |
31,726,744 |
H29 |
267 |
57.32 |
60,430,694 |
H30 |
458 |
67.79 |
56,762,343 |
R1 |
465 |
68.45 |
70,820,686 |
R2 |
507 |
60.17 |
60,492,149 |
R3 |
592 |
55.88 |
64,706,957 |
令和2年7月/鹿児島県(ヒノキ52年生)
令和2年7月、
猛烈な雨が続いた直後、森林組合の職員により当該地の水害が確認されました。なお、7月3日から31日にかけての西日本・東日本各地の一連の大雨は、令和2年7月豪雨と命名されました。
- 実損面積/契約面積:0.19ヘクタール/5.34ヘクタール
- お支払いした保険金:222千円
- (参考)ヘクタール当たり保険料:3,650円/年
令和元年10月/茨城県(スギ4年生)
令和元年10月に関東地方を通過した令和元年東日本台風(台風第19号)は、静岡県や
新潟県、関東甲信地方、東北地方を中心とする広い範囲に記録的な大雨をもたらしました。当該地付近では24時間降水量383ミリを観測し、4年生のスギが流出・埋没しました。
- 実損面積/契約面積:0.42ヘクタール/1.76ヘクタール
- お支払いした保険金:697千円
- (参考)ヘクタール当たり保険料:4,942円/年
令和元年10月/神奈川県(ヒノキ27年生)
令和元年10月、関東地方を
通過した令和元年東日本台風(台風第19号)の大雨は、当該地にも表面浸食や立木の根返り等の被害をもたらしました。平成30年7月豪雨(西日本豪雨)が長時間の記録的な大雨だったのに対し、この台風は半日から1日程度というごく短時間で非常に激しい雨や猛烈な雨が降ったことが特徴でした。
- 実損面積/契約面積:0.59ヘクタール/7.95ヘクタール
- お支払いした保険金:705千円
- (参考)ヘクタール当たり保険料:3,851円/年
平成30年9月/群馬県(スギ3年生)
平成30年9月下旬に西日本から北日本を縦断した台風第24号は、各地に暴風、大雨、高波、
高潮などの被害をもたらしました。群馬県でも強い風と激しい雨に見舞われ、当該地での2日間の降水量は41ミリを観測し、山腹斜面の崩壊による植栽木の埋没や流出などの被害が発生しました。
- 実損面積/契約面積:0.84ヘクタール/8.33ヘクタール
- お支払いした保険金:999千円
- (参考)ヘクタール当たり保険料:5,056円/年
平成30年7月/愛媛県(ヒノキ50年生)
平成30年7月豪雨では、西日本を中心に広い範囲で記録的な大雨となり、
全国33道府県で林地荒廃の被害が発生しました。愛媛県では、民有林・国有林あわせた被害箇所は249か所、被害額は約131億円となりました。
- 実損面積/契約面積:0.45ヘクタール/8.45ヘクタール
- お支払いした保険金:680千円
- (参考)ヘクタール当たり保険料:4,540円/年
平成30年6月/沖縄県(その他広葉樹2年生)
平成30年6月に降り続い
た強い雨は、3日間の合計で435ミリの降水量を観測しました。当該地では、沖縄県の重要な造林樹種であるイジュが被害を受けました。
- 実損面積/契約面積:0.13ヘクタール/2.23ヘクタール
- お支払いした保険金:87千円
- (参考)ヘクタール当たり保険料:924円/年
平成29年7月/福岡県(スギ17年生)
平成29年7月の梅雨前線に伴う大雨では、
線状降水帯により同じ場所で強い雨が長く続きました。当該地でも、24時間降水量は545.5ミリを観測し、豪雨により植栽木ごと山腹斜面が崩壊しました。
- 実損面積/契約面積:0.27ヘクタール/0.90ヘクタール
- お支払いした保険金:501千円
- (参考)ヘクタール当たり保険料:5,015円/年
平成28年9月/鹿児島県(スギ4年生)
平成28年9月の台風第16号の豪雨
により、当該地では日雨量が100ミリを超え、土砂崩壊による被害が発生しました。
- 実損面積/契約面積:1.03ヘクタール/4.98ヘクタール
- お支払いした保険金:1,483千円
- (参考)ヘクタール当たり保険料:4,942円/年
平成24年7月/熊本県(スギ46年生)
平成24年7月の記録的な豪雨により、当該地では1日で7月の月
降水量の平均値の8割以上の雨量となり、傾斜や倒伏などの被害が発生しました。
- 実損面積/契約面積:2.94ヘクタール/17.05ヘクタール
- お支払いした保険金:6,359千円
- (参考)ヘクタール当たり保険料:6,489円/年
平成24年7月/福岡県(スギ4年生)
平成24年7月の記録的な豪雨により、当該地でも立木の流失、枝折れ等の被害が発生しまし
た。
- 実損面積/契約面積:0.32ヘクタール/3.80ヘクタール
- お支払いした保険金:531千円
- (参考)ヘクタール当たり保険料:5,976円/年
- 遮断蒸発が下流に及ぼす影響を評価ー森林に特徴的な現象が洪水を大きく左右するー(森林総合研究所プレスリリース)2023(令和5)年
- スギの根が山腹の表層崩壊を防止する機能の評価手法を開発ー皆伐から10年で大幅に低減するが再造林を行えば回復も早いー(森林総合研究所プレスリリース)2023(令和5)年
- 樹木に残された土砂災害の痕跡(森林総合研究所今月の自然探訪、2022(令和4)年5月)
- 土砂災害が発生する危険性の高い雨の降り方を判定する(森林総合研究所プレスリリース、2021(令和3)年
- 土石流を引き起こす降雨条件は谷底の土砂量に応じて変化する(PDF:1,272KB)(森林総合研究所令和3年度研究成果選集)2021(令和3)年
- 岐阜県瑞浪市大湫町の大杉の倒木化は、根系の発達制限が原因だった(森林総合研究所プレスリリース)2021(令和3)年
- 針葉樹林から発生した流木の長さはドローンによる空撮で精度良く測定できる(森林総合研究所研究成果)2021(令和3)年
- 土石流を引き起こす降雨条件は谷底の土砂量に応じて変化する(森林総合研究所研究成果)2021(令和3)年
- 豪雨により斜面が崩壊する箇所を突き止める(森林総合研究所研究成果)2019(令和元)年
- 流れてくる土砂や樹木をスギ立木が止める特性を現地斜面で実証(森林総合研究所研究成果)2019(令和元)年
- 2017年7月九州北部豪雨における斜面崩壊と雨量分布の関係について(PDF:7,621KB)(森林総合研究所研究報告第17巻1号(通巻445号)2018(平成30)年
- レーザーセンサーで熱帯低気圧による豪雨の雨滴径の特性を解明(PDF:2,251KB)(森林総合研究所平成20年版研究成果選集)2017(平成29)年
- 伊豆大島の斜面崩壊発生地の樹木重量を推定(森林総合研究所研究最前線)2016(平成28)年
- 樹木の太い根が山崩れを防ぐ(PDF:1,144KB)(森林総合研究所平成27年版研究成果選集)2015(平成27)年
- 過去の写真から山地崩壊発生の前兆をつかむ(PDF:956KB)(森林総合研究所平成25年版研究成果選集)2013(平成25)年
- 地すべり性崩壊の発生危険斜面を探る(PDF:1,211KB)(森林総合研究所平成23年版研究成果選集)2011(平成23)年
- 地下水の流れる音から山崩れの場所を予測する(PDF:787KB)(森林総合研究所平成20年版研究成果選集)2008(平成20)年
- どこの山が、いつ崩れるか、リアルタイムで予測する(PDF:1,089KB)(森林総合研究所平成15年度研究成果選集)2003(平成15)年
- 山崩れは、いつどこで起きるか(PDF:144KB)(森林総合研究所平成10年度研究成果選集)1998(平成10)年
- 九州の大水害(1)(PDF:2,162KB)(森林総合研究所九州支所「九州の森と林業」第7号、平成元年3月1日)
- 昭和47年7月集中豪雨による天草地区の山地荒廃に関する研究(PDF:2,937KB)(森林総合研究所(林業試験場)研究報告No.280)1976(昭和51)年
- 昭和41年台風26号による足和田地区の山地荒廃に関する研究(PDF:3,729KB)(森林総合研究所(林業試験場)研究報告No.215)1968(昭和43)年
- 昭和34年7号台風による山梨水害の山地荒廃とその治山対策(PDF:5,389KB)(森林総合研究所(林業試験場)研究報告No.132)1961(昭和36)年
- 昭和33年伊豆水害の山地の崩壊、土石流出とその防止対策(PDF:12,180KB)(森林総合研究所(林業試験場)研究報告No.117)1959(昭和34)年
- 昭和29年台風水害に関する調査報告(PDF:6,087KB)(森林総合研究所(林業試験場)研究報告No.84)1956(昭和31)年
- 昭和28年近畿水害調査報告第1次調査報告(森林総合研究所(林業試験場)研究報告No.74)1954(昭和29)年
- 昭和28年6月の九州水害に関する調査報告(森林総合研究所(林業試験場)研究報告No.69)1954(昭和29)年