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支所長 真島征夫
平成13年4月1日付けで「独立行政法人森林総合研究所関西支所」が新体制でスタートしました。
顧みますと2001年の今年、関西支所は昭和22年林業試験場大阪支場として設立されてから満54年目、昭和63年10月森林総合研究所に改組してから12年半、新世紀の始まりの節目に独立行政法人として再発足いたしました。
さて、20世紀は科学技術の世紀といわれ、科学技術の進歩により豊かで便利な生活と長寿社会が実現しました。一方で科学技術の負の側面もあらわとなり、地球規模の環境問題等人間社会を脅かす事実も明らかにされています。わが国経済も1990年代に入って、いわゆる「空白の10年」といわれる長期不況に陥って、未だに浮上の気配なしの状況で、林業界も同様に長期低迷が続いているのは御存知のとおりです。
総合科学技術会議による「科学技術に関する総合戦略」答申によれば、我が国の科学技術創造立国実現に向け、目指す国の姿を「知の創造と活用により世界に貢献できる国-新しい知の創造-」、「国際競争力があり持続的発展ができる国-知による活力の創出-」、「安心・安全で質の高い生活のできる国-知による豊かな社会の創生-」の3つを掲げています。このため、一層の科学技術の発展の必要性と科学技術の人間社会や自然環境との調和を図ることの重要性を認め、継続的な基礎研究への一層の投資を奨励し、研究成果の社会や産業活動への早期還元とそれに基づく研究への再投資の循環システムの早期構築の必要性を指摘しています。
また、林政審答申や林政改革大綱においては、今後の林政の方向を森林の多様な機能の持続的な発揮を図る方向へ改め、持続的な森林経営のために計画的な森林整備の必要性が唱われ、その中で「里山林等の適切な管理」や山村地域の活性化に向けた「都市と山村の交流促進」のための森林空間利用整備計画の樹立が提起されています。
関西支所が所管する地域においては、都市近郊・里山林の公益的機能の多面的かつ高度発揮のための森林の機能解明とその健全性維持及びその総合的利用手法の確立に関する研究ニーズが高く、したがって、関西支所では独立行政法人化に当たり、私達を取り巻く時代の諸要請を考慮し、今後はこれらの研究ニーズに対応して、「都市近郊・里山林」等に関する重点的な課題化を推進して行く計画です。
国民の森林に対する要請は一層多様化して来ており、私達に求められるものも高度化・精緻化してきています。この負託に応えて、関西支所では地域に開かれた森林・林業に関する研究機関として、管内の産官学の諸機関と密接な連携を図り、試験研究の更なる深化に向けて一丸となって努力して行く所存です。
独立行政法人森林総合研究所関西支所の再出発に当たり、これまで関係機関各位から頂戴いたしました多大な御支援・御協力に心から感謝申し上げますとともに、今後とも皆様方の一層の御指導・御鞭撻を賜りますよう重ねてお願い申し上げます。
行政課題に対応した分野横断的・総合的研究を実施し、社会ニーズに迅速に対応するための柔軟性のある組織作りを基本に、研究組織では部・科制が廃止され、大研究室制の導入等による内部組織のフラット化が図られました。支所においては、これまであった部が廃止され、支所運営管理・地域連携協力・本所との連絡調整を担う研究調整官と全所の横断的な研究の推進管理を担う地域研究官が配置されました。研究室についてはこれまでの研究室を研究分野ごとに統合するグループ制と、プロジェクト研究の推進並びに地域研究の重点化を図るためのチーム制が導入されました。新組織体制は以下のとおりです。
独立行政法人化後の森林総合研究所は、森林・林業・木材産業にかかわる中核的な研究機関として、科学的知識の集積を図りながら、行政や社会的ニーズに関連した分野横断的・総合的研究をいっそう推進していきます.そのために、「林政改革大綱」および「林政改革プログラム」(平成12年12月公表)にもとづいて策定した「森林・林業・木材産業分野の研究・技術開発戦略」を踏まえ、以下の11の分野に重点を置いて研究を推進していきます。
また、これらの研究分野のほかに、長期にわたる観測・測定や、長期的視点に立った基盤的研究、将来の社会的問題にそなえるための科学的知見を探求する基礎研究を推進していきます。
これまでの森林総合研究所では、所全体としての研究推進方向に従いつつ、本所の各部・各支所それぞれが異なる大きな研究テーマを担当していました。個別の具体的な研究課題は、それぞれが担当する研究テーマにそって部・支所ごとに立案・実行されていました。
独立行政法人化後は各研究分野すべてが本所の管理となり、関西支所の研究課題も、上に述べた研究分野の一部を構成するものとして位置づけられることになりました。そのなかでも関西支所がとくに重点的に推進していく予定なのが、上にあげた「7.森林の新たな利用を推進し山村振興に資する研究」です。関西支所では、この研究分野に属する課題「里山・山村が有する多様な機能の解明と評価」のうち、以下の2つの研究項目にまたがる5つのテーマを担当します。
項目:里山の公益的機能及び生産機能の自然的・社会的評価に基づく保全・管理手法の開発
項目:保健・文化・教育機能の評価と活用手法の開発
ほかに、関西支所が比較的大きな部分を担当する研究としては以下のようなものがあります。
このほかにも、さまざまな研究テーマのなかで研究を分担し、また基礎・基盤的研究にも取り組んでいきます(連絡調整室長・藤田和幸)。
里山や都市近郊林は、薪炭の採取など、伝統的な利用や管理が停止した中で急激な変容を起こしつつあります。そのために、昔ながらの景観が荒廃するだけでなく、地域に特有な生き物の減少や消失などの問題も起きています。その一方で、里山や都市近郊林を、自然環境や文化的な遺産としての重要性から再評価する声も高まっていて、放置に等しいこれらの森林について、何らかの管理方針を見出すことが急務です。このような状況の中で、森林総合研究所においても関西支所が中心となり、「里山の公益的機能及び生産機能の自然的・社会的評価に基づく保全・管理手法の開発」というテーマの元に、里山や都市近郊林の研究を開始することになりました。
一口に里山や都市近郊林の研究といっても、気象や生物から地域行政のあり方まで、大変広い研究範囲を含みます。今回はその中から、以下の4つの軸を中心に研究を展開する予定です。
里山や都市近郊林の現状についてのデータや知見はまだまだ乏しく、このことが問題の把握や解析を困難にしています。関西支所では、まず里山や都市近郊林についての基礎的な情報の収集と解析に努めると共に、適切な管理方針策定に資するための提言を行っていきたいと考えています(ランドスケープ保全チーム長・大往克博)。
4月2日、関西支所が独立行政法人になったことを記念して植樹祭を開催しました。正面玄関前と実験林の2カ所にゲンペイモモとダイスギを植えました。当日は、幸い天気にもめぐまれ、忙しいなか約28名が参加しました。
〒612-0855 京都市伏見区桃山町永井久太郎68番地
これまで、関西支所の職員のメール・アドレスはxxxxxx@fsm.affrc.go.jpとなっておりましたが、今後xxxxxx@ffpri.affrc.go.jpという風に、ユーザ名を示すxxxxxxの部分は変わらず、fsmの部分がffpriに変わって、@以降は森林総合研究所役職員全員、本支所を通じ同じになりました。旧アドレスあてのメールは今後届かないおそれがありますので、アドレス帳等の変更をお願いします。
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