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林業試験場関西支場
今日、我が国の林業をめぐる環境条件はまことに厳しいものがあり、外材の占めるシェアは相変らず大きく、それらに主導される木材価格は長期にわたり低迷し、林業の収益性はコストの上昇と相俟って著なしく低下しています。一方森林の公益的機能に対する国民の要求は、国土開発の進展に伴う山地災害の増加、人口、産業の都市集中の結果、水需要の激増、生活環境の悪化などの理由により、増大の一路をたどり、それらの面からの制約が更に林業経営に加わり、山村の過疎化と共に林業経営の存立を危なくし、森林の各種効用の受益者に対する適正な育林管理の費用分担方法の確立が急がれています。また天然資源の少ない我が国にとってエネルギー資源の確保は重要な国民的課題として急にクローズアップされ、再生産可能な非化石資源である森林を守る必要性は多くの人達により強調されるようになりました。このような時に私共は林業、森林に関する研究機関の一員として、まず何を為すべきか、また為さねばならないかを原点に立ちかえり真剣に考えることが大切で、どのような世になろうとも環境に適合した健全な価値高き森林を低コストで造る技術の開発に今まで以上の覚悟で当たらなければ責任を果たせないことを充分自覚しております。そのため多くの問題の中から最も重要であり、緊急に解決を要する問題をとりあげ、私共だけでは力が足らず、研究の推進が困難な場合は本場や他支分場と共同研究を組織し、また地域内(四国を含む)の府県の研究機関や大学と密接な連携をとりつゝ効果的に成果を早く挙げ、林業関係者のお役に立つことを願っております。ここにお届けする年報は昭和52年度に私共が行なった研究業務とその成果ならびに、当支場のその他の動きの概要についてとりまとめたもので、数多い研究課題の至って簡単な内容ですが、その一端を知って頂くと共に皆様方の忌憚のない批判を賜わるようお願いいたします。林業の研究は短期間で完了できるものは少なく、道なお遠しの感はありますが、一歩一歩と予算、人員、施設面の障害を克服し、容易ならざる道を確実に前進を続け、目標に早く到達するための努力を行なっておりますので、ご指導、ご支援の程宜しくお願いいたします。またこれらの研究を進めるに当って、常にご協力、ご援助をいただいた林業経営者、各府県庁、営林局署、林木育種場、大学その他関係機関の方がたに対し、この機会に厚く御礼申し上げます。
昭和53年7月22日
林業試験場関西支場長細井守
一括版のpdfファイルはこちらです。年報第19号(昭和52年度)(PDF:7,864KB)
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