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森林総合研究所関西支所年報第32号

平成2年度

育林棟と中庭

まえがき

平成2年度は、研究基本計画の前期が終了する節目に当たっており、二つの研究問題「風致林及び都市近郊林の育成・管理技術の高度化」「関西地域における森林造成技術と経営管理方式の確立」で、17の課題が完了し、次のステップに進むことになった。したがって本報告のまえがきは、前期の締め括りの意味で研究成果の概要を述べて、後期への指標としてみたい。研究基本計画のシステムに従った解説は、本文にあるので、ここではトピックスごとに一読できるよう整理をしてみた。

まず、「風致林」に関しては、地図情報・代表植生・植生の多様性・接近の容易性などを用いた風致機能の計量的評価法の検討が進み、さらに、森林景観と森林施業の関係の解明に発展させる計画になっている。

「竹」の研究は、関西ならではのテーマであるが、この課題に関しては、土壌の科学的成分と竹の成分の関係、また珪カルを施用した場合の竹の科学的成分を明らかにし、良質材生産のための土壌管理指針を提案している。なおモウソウチク林についても、間伐試験あるいは竹林生態系内の物質循環の解明など基礎的研究も進んでいる。

「広葉樹」についても、いくつかの成果をみることができた。まず、シイタケ原木問題への対応として、伐採後一年経過したコナラ林皆伐地で、間引きの効果・被陰の影響を調査し、萌芽更新の技術指針を示したほか、マツ枯損跡地の天然性落葉広葉樹林を、有用なシイタケ原木林に誘導する方法についても検討が進められた。また、多雪地帯のスギ人工林に混生する有用広葉樹の育成についても、ただちに現場で利用できる指針を示した。

「病中獣」については、マツの材線虫の通水阻害の観察によって、発病機構をさらに明らかにし、各種の病中害について発生機構と防除対策の検討が進められた。また、野生獣類の研究について特記すべきことは、防除という視点から個体群変動機構の解明など個体群管理技術への展開がみられた点である。

「防災」関係の課題の中では、数箇所の山火事跡地の植生調査によって植生動態が明らかになり、山火事以外の森林破壊にも適応できるモデルを提供している。また、根系とAo層被覆による森林の崩壊・侵食防止機能への効果に加えて、土壌の透水性など保水機能への影響についても、基礎資料として有効に利用できる成果を出している。

さらに、いま注目の課題である「複層林」についても収穫予測法を開発し施業基準を示すなど成果をあげつつあるが、今後は、大きくなった林内更新樹を対象に、その成長特性を解折していく計画になっている。なお、難しい課題といわれている、「木材価格の変動予測」についても、為替レートの変動・外材輸入量・米材価格などの要因を検討し、予測モデルの改良を行った。

さて、後期での大きな課題は、支所がはじめて主査をして実施することになった、国立機関公害防止等試験研究による「緑資源の総合評価による最適配置計画手法の確立に関する研究」である。関西支所に研究蓄積ありとはいいながら、大方の御協力を得なければ、いい結果を得ることはできない。ご叱正とご指導をお願いしたい。

平成3年10月

森林総合研究所関西支所長

目次

1.平成2年度関西支所研究課題一覧表(PDF:182KB)

2.試験研究の概要(PDF:782KB)

3.主要な研究成果(PDF:1,359KB)

4.研究資料(PDF:305KB)

  1. 高取収穫試験地の林分構造と成長
  2. 嵐山国有林の景観についての観光客と地元住民に対する意識調査-設問の意図と回答者の反応について-

5.関西支所研究発表会記録(PDF:178KB)

6.試験研究発表題名,組織,情報,その他(PDF:697KB)

  1. 試験研究発表題名一覧表
  2. 組織,情報,その他

一括版のpdfファイルはこちらです。年報第32号(平成2年度)(PDF:3,663KB)

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