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MRI装置で検出したマツ木部のエンボリズム
黒い部分は水が通っていることを示す。マツ材線虫病にかかると木部全体に散らばった白い部分が見られる(右図)。
ここがエンボリズム(空気による仮道管の閉塞)を起こして水が通らなくなった部分である。
支所管内は概して我が国の先進開発地域であり、市街化や遷都、巨大寺院の建立や農・商・工業発展のための過度の良材採取が極めて古い時代から進展してきました。そのため一部の地域では早くから人工林化が進められ、優れた先進林業地を有している反面、戦後の拡大造林による並材生産地も広範に併存しています。安価な外材の攻勢による国内林業生産活動の長期低迷が続く中で、山村地域では多様な林業施策と森林施業により資源の充実が模索される一方、担い手不足、膨大な要間伐林の存在、不在村所有森林の増加、大型森林動物を含む未経験の病虫獣害の発生など多くの問題を抱えています。また、都市化・工業化の進展した地域では長期間の開発による貴重な自然生態系の衰退、断片化の進行に加え、最近の都市のスクロール化など無秩序な開発による森林の減少や放置人工林、放置里山林の増加が目立ってきており、都市域住民からは森林の環境資源・文化資源としての機能の発揮への期待が一層高まっています。
このような地域特性に対応するため、平成10年度も3大課題の下で「風致林・都市近郊林生態系の機能、都市近郊林の水土保全機能、森林の風致及び環境形成機構、断片化した森林生態系の維持・遷移機構の解明」、「多様な森林施業技術及び森林の生物害管理技術の高度化、持続的林業経営方式の体系化」、及び「地域森林資源管理手法と森林資源の総合的利用、地域森林・林業と気候変動の関連解明」などに関わる調査研究を実施し、それぞれ有効な知見、提言などを得ました。本年報は、平成10年度の当支所における研究課題一覧表、試験研究の概要、主要な研究成果、研究資料、及びその他関連資料を取りまとめたものです。これらの内容が皆様の業務にいささかでもお役に立てば幸甚に思います。
ところで、農林水産省所管の試験研究機関における試験研究の円滑かつ効果的な推進を図るためには、農林水産技術会議と試験研究機関との間において相互に意見交換を行い、当該試験研究機関の試験研究の実施状況及び運営管理の方法、今後実施しようとする試験研究計画、及びこれに必要な態勢及び施設等研究環境条件等について検討し、その結果に基づきそれぞれが所要の措置を講ずる必要があります。このため農林水産技術会議事務局は内外の有識者、技術会議専門委員、行政部局の幹部で構成する研究レビュー班を組織し、定期的に「研究レビュー」を実施することとしています。昭和40年にこの要領が発足以来、平成10年度にあっては森林総合研究所では七巡目の「研究レビュー」を迎えました。農林水産省で初めて外国人二名を含む外部委員からいただいた主なコメントは、(1)森林の有する公益的機能の発揮等国民のニーズの変化への的確な対応とその成果の伝達、(2)長伐期化した人工林への対応と国産材需要拡大、川上川下の一帯となった取り組みなど地域との連携による技術開発、(3)地球温暖化対策、環境ホルモンなど、総合的な取り組みの必要性、(4)アジア太平洋の研究者を含めた新たな拠点としての体制作りの必要性、(5)環境問題、公益的機能増進面における農林水一体となった取り組みの必要性、などでした。
これらは換言すれば、森林総合研究所が今後重点的に取り組むべき方向を示唆された貴重な意見であり、平成11年度以降の自らが行う本所・支所等の研究推進会議、本所が行う外部委員による研究評議会において組織としての意志決定をする予定であります。
当支所では今後なお一層、地域に開かれた森林・林業・林産業の技術相談窓口及びPRの拠点として機能するよう努力するとともに、他の研究機関や行政機関と密接な連携を図り、試験研究の更なる深化に向けて努力を重ねる所存であります。各位の絶大なるご協力ご支援を戴きたく、心からお願い申しあげます。
平成11年11月
森林総合研究所関西支所長 高田長武
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