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森林総合研究所関西支所年報第49号

平成20年版

キハダの樹皮をかじるニホンジカのオス
(2004年4月17日撮影:高橋裕史)

まえがき

森林総合研究所は、平成17(2005)年11月に創立100周年を記念して、森林・林業・木材産業に関わる研究を通じて、豊かで多様な森林の恵みを活かした循環型社会の形成に努め、人類の持続可能な発展に寄与することをミッションとして掲げました。このミッションを達成するための道筋を具体的に示すために、平成19(2007)年1月に、2050年の社会を支える森林のあるべき姿を描き、それを実現するために必要な研究開発の長期ロードマップを「2050年の森」として策定しました。森林総合研究所は、我が国唯一の森林を研究する独立行政法人として、地球規模の環境問題への対応を含めた多くの期待に応えていかなければなりません。森林は、長い時間をかけて育成されていきます。このため、研究開発においても未来の森を考えた長期のビジョンが重要なのです。このロードマップでは、研究・技術開発を「水を育み国土を守る」、「自然環境との共生を図る」、「資源を循環利用する」、および「森林の多面的機能の発揮」の4つの分野に分け、その下に社会ニーズに対応した研究課題とブレークスルーとなる要素技術を示しています。関西支所の研究も、この長期研究ロードマップ「2050年の森」に位置づけられています。

関西支所の管轄地域は、北陸地方から近畿・中国の14府県にわたり、主に冷温帯と暖温帯に属し、積雪地帯から寡雨地帯までを含みます。これらの地域は古くから都市化が進展したため、有名林業地が発達した一方、森林の劣化や断片化が進行しています。このような特徴を持った里山および都市近郊林を主な対象として、森林の総合的管理手法の開発を目指し、森林総合研究所の運営費交付金や農林水産技術会議の農林水産研究高度化事業による研究プロジェクト等により、林業の生産技術開発のための研究や、風致形成、環境保全、生物多様性保全などの森林機能の発揮のための研究を進めています。

関西支所では、最近の研究成果により、近年急速に被害が広がりつつあるナラ類集団枯死について、その発生のメカニズムや発生が急増した背景、および最新の防除法を解説する小冊子「ナラ枯れの被害をどう減らすか-里山林を守るために-」(http://www.fsm.affrc.go.jp/Nenpou/other/nara-fsm_200802.pdf)(PDF:2,999KB)を作成しました。また、全国的に深刻な問題となっているサルによる農業被害を減少させるため、人間とサルの生活域を分けて里に居着いたサルを山に戻す「ニホンザルの追い上げマニュアル」(http://www.fsm.affrc.go.jp/Nenpou/other/saru-manual_200803.pdf)(PDF:1,798KB)「ニホンザル追い上げ事例集」(http://www.fsm.affrc.go.jp/Nenpou/other/saru-jireishu_200803.pdf)(PDF:1,114KB)を作成しました。

平成19(2007)年4月には、独立行政法人森林総合研究所と独立行政法人林木育種センターが統合して、新たに独立行政法人森林総合研究所が発足しています。このため、関西支所では岡山県勝田郡勝央町に所在する林木育種センター関西育種場との関係を強化し、全体としての効率的な運営及び研究推進を図ることとしています。また、平成19年度の森林総合研究所の研究評議会で指摘を受けたように、森林総合研究所によるリーダーシップの発揮が県の試験研究機関から期待しており、そのために支所の機能の強化が求められています。

なお、平成20(2008)年4月1日、独立行政法人森林総合研究所は、「独立行政法人緑資源機構法を廃止する法律」に基づき、独立行政法人緑資源機構の業務の一部を承継しました。承継した業務は「森林農地整備センター」が担当しています。

平成20年8月

森林総合研究所関西支所長藤井智之

目次

1.研究課題一覧(PDF:31KB)

  1. 森林総合研究所関西支所関係抜粋

2.関西支所における研究課題の取り組み(PDF:12KB)

3.平成19年度関西支所の研究概要(PDF:87KB)

  1. 森林吸収量把握システムの実用化に関する研究
  2. アジア陸域炭素循環観測のための長期生態系モニタリングとデータのネットワーク化促進に関する研究
  3. 地球温暖化が農林水産業に及ぼす影響の評価と高度対策技術の開発
  4. 環境変動と森林施業に伴う針葉樹人工林のCO2吸収量の変動評価に関する研究
  5. 温暖化の危険な水準及び温室効果ガス安定化レベル検討のための温暖化影響の総合的評価に関する研究
  6. 熱帯地域における森林の劣化・修復に関する調査
  7. CDM植林が生物多様性に与える影響評価と予測技術の開発
  8. 脱温暖化社会に向けた中長期的政策オプションの多面的かつ総合的な評価・予測・立案手法の確立に関する総合プロジェクト(脱温暖化社会構築のための森林経営に関する研究)
  9. 島嶼生態系の維持管理技術開発
  10. 島嶼生態系における侵入種の拡散および適応機構の解明
  11. 沖縄ヤンバルの森林の生物多様性に及ぼす人為の影響の評価とその緩和手法の開発
  12. 小笠原諸島における帰化生物の根絶とそれに伴う生態系の回復過程の研究
  13. 生物間相互作用に基づくニホンジカ密度の推定法と広域的な森林生態系管理手法の開発
  14. 沖縄本島産希少哺乳類の生存と分布の確認調査
  15. 人為的要因によって小集団化した希少樹種の保全管理技術に関する研究
  16. 希少種アマミノクロウサギの遺伝学的手法を用いた個体数推定と遺伝的構造の把握
  17. クロマツの第二世代マツ材線虫病抵抗性種苗生産システムの構築
  18. ナラ類集団枯死被害防止技術と評価法の開発
  19. ツキノワグマの出没メカニズムの解明と出没予測手法の開発
  20. 獣害回避のための難馴化忌避技術と生息適地への誘導手法の開発
  21. カワウ被害軽減のための効果的なコロニーおよびねぐら管理手法の開発
  22. 水流出に及ぼす間伐影響と長期変動の評価手法の開発
  23. 地域性をふまえた大井川中流域の景観の保全と活用に関する研究
  24. 西日本における植生と景観形成に及ぼした野火の影響
  25. 人と自然のふれあい機能向上を目的とした里山の保全・利活用技術の開発
  26. 日本列島における人間-自然相互関係の歴史的・文化的検討
  27. 林業経営体の経営行動のモデル化と持続可能な経営条件の定量的評価
  28. 「日本林業モデル」の開発と新林業システムの経済評価
  29. 地域資源活用と連携による山村振興
  30. 違法伐採対策等のための持続可能な森林経営推進計量モデル開発事業
  31. 大面積皆伐についてのガイドラインの策定
  32. タケ資源の持続的利用のための竹林管理・供給システムの開発
  33. 多面的な森林の調査、モニタリングおよび評価技術の開発
  34. 基準・指標を適用した持続可能な森林管理・計画手法の開発
  35. 北方天然林における持続可能性・活力向上のための森林管理技術の開発
  36. スギ雄花形成の機構解明と抑制技術の高度化に関する研究
  37. 主要樹種の遺伝構造及び適応的遺伝子の解明
  38. 湿地林を構成する希少木本種の繁殖と更新に及ぼす遺伝的荷重の影響の解明
  39. 衰退した森林の自然再生を目的とした生残樹木の繁殖成功に関する分子生態学的評価
  40. 森林の物質動態における土壌の物理・化学的プロセスの解明
  41. 土壌・微生物・植物間の物質動態に関わる生物・化学的プロセスの解明
  42. 森林土壌におけるエステル硫酸態イオウの保持機構の解明
  43. 新しい機器を用いた樹木根系の空間分布及び動態の解明
  44. 森林流域の水質モニタリングとフラックスの広域評価
  45. 根の生理指標を用いた土壌酸性化に対する樹木への影響評価
  46. 森林生態系の微気象特性の解明
  47. 基岩-土壌-植生-大気連続系モデルの開発による未観測山地流域の洪水渇水の変動予測
  48. 環境変化にともなう野生生物の遺伝的多様性および種多様性の変動要因解明
  49. 野生生物の生物間相互作用の解明
  50. 森林健全性保持のために重要な生物群の分類・系統解明
  51. 抵抗性アカマツから材線虫病抵抗性遺伝子群を特定する
  52. 菌類の匂いの適応的意義の解明
  53. 森林タイプ・樹齢・地質の違いが底生動物の群集構造に与える影響の解明
  54. 大面積風倒発生地における植生遷移とニホンジカによる利用度の推移
  55. インドシナ半島におけるマカク属の進化:アカゲザルとカニクイザルを主として
  56. エゾジカ個体群の爆発的増加に関する研究
  57. DNAバーコードと形態画像を統合した寄生蜂の網羅的情報収集・同定システム
  58. 樹木加害微生物の樹木類への影響評価と伝播機構の解明
  59. 樹木寄生性昆虫の加害機構の解明と影響評価
  60. 地域間DNA多型解析によるナラ枯れの媒介者カシノナガキクイムシの外来種仮説の検証
  61. 捕食寄生甲虫を利用した新たな樹体内害虫防除技術の開発
  62. 森林植物の分布要因や更新・成長プロセスの解明
  63. 収穫試験地における森林成長データの収集

4.主要な研究成果(PDF:194KB)

  1. マツ材線虫病抵抗性クロマツの実生苗におけるマツノゼイセンチュウの挙動
  2. 比叡山老齢ヒノキ造林地における土壌養分分布と樹木養分濃度との関係
  3. 落葉広葉樹二次林のCO2固定量
  4. 山城試験地におけるイソプレン濃度の日変動特性について
  5. 体毛を用いたツキノワグマの個体情報収集
  6. タイ東北部の民間セクターにおけるチーク人工林管理

5.研究資料(PDF:722KB)

  1. 山城試験地周辺森林における渓流水の水質
  2. アカマツ-スギ・ヒノキ複層林の成長-地獄谷収穫試験地定期調査報告-
  3. 多雪地帯のスギ人工林における利用間伐と間伐直後の成長について-六万山収穫試験地調査報告-

6.関西支所創立60周年記念講演会記録森林の研究を過去から未来へとつなぐ(PDF:59KB)

  1. 人の営みと自然の変遷-マツ林を例として-(要旨)
  2. 松くい虫研究の100年を振り返る-21世紀の自然との共生を目指して-(要旨)
  3. 竜ノ口山の森林理水試験-70年間の記録から-
  4. 数える、防ぐ、ときどき食べる-森林保全を目指した野生動物管理-

7.試験研究発表題名(PDF:86KB)

  1. 平成19年度試験研究発表題名一覧

8.組織・情報・その他(PDF:73KB)

  1. 沿革
  2. 土地及び施設
  3. 組織
  4. 人の動き
  5. 会議等の開催
  6. 受託出張
  7. 職員研修
  8. 受託研究員受入
  9. 特別研究員
  10. 海外派遣・出張
  11. 業務に必要な免許の取得・技能講習等の受講
  12. 見学者
  13. 試験地一覧表
  14. 気象年報
  15. 標本展示・学習館

一括版のpdfファイルはこちらです。年報第49号(平成20年版)(PDF:1,222KB)

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