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平成28年度は、国立研究開発法人森林総合研究所の第4期中長期目標の開始年度であった。第4期中長期計画では、以下の4つの重点課題と、その下に9つの戦略課題を設定し、森林・林業分野が直面する課題の解決に当たる。
ア.森林の多面的機能の高度発揮に向けた森林管理技術の開発
イ.国産材の安定供給に向けた持続的林業システムの開発
ウ.木材及び木質資源の利用技術の開発
エ.森林生物の利用技術の高度化と林木育種による多様な品種開発及び育種基盤技術の強化
この中で関西支所は里山の公益的機能及び生産機能の自然的・社会的評価に基づく保全・管理手法の開発を目指し、ア、イおよびエの研究課題を担当している。
平成28年度の関西支所の主要成果としては、農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業「安全な路網計画のための崩壊危険地ピンポイント抽出技術(26~28)」、一般交付金による「スギノアカネトラカミキリおよびトビクサレ被害防除に向けた試み」が掲げられる。また、交付金プロジェクト「広葉樹も多い中山間地で未利用資源をむだなく循環利用する方策の提案(28~30)」を獲得・開始し、関西支所の特色を表す課題となっている。継続課題としては、低コスト林業を目指す農林水産技術会議地域戦略プロジェクト「優良苗の安定供給と下刈り省力化による一貫作業システム体系の開発(28~30)」、放置・拡大竹林を駆除する技術体系の確立を目指す農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業「侵略的拡大竹林の効率的駆除法と植生誘導技術の開発(27~29)」等について研究を進めた。
第4期中長期目標の中では、林業の成長産業化への技術的支援、研究開発成果の最大化、研究成果の「橋渡し」機能が強調された。つまり、研究成果を得るだけではなく、現場に届けることも求められている。また、地域連携をさらに強力に進め、地域におけるハブとしての役割が求められている。これら橋渡し、地域連携に関しては、以下のように実施した。
近畿中国森林管理局との「近畿及び中国地域の森林・林業に関する研究と技術開発等の円滑な促進に向けた連携と協力に関する協定」に基づき、コンテナ苗の普及に向けた現地検討会(林業の低コスト化に向けた取組)(28年10月13~14日)を岡山県新見市において共催し、各府県、森林組合等から多くの参加者を得た。国立大学法人三重大学生物資源学研究科との連携大学院では支所の研究職員が連携教員として講義・実習に携わった。また、近畿中国森林管理局の「水都おおさか森林の市(10月2日)」、近隣の中学生を対象とした「職場体験」や「チャレンジ体験学習」、森の展示館を活用した「森林教室」などを実施した。さらに、公開講演会「森林の時間を科学する~森林の長期観測で得られた成果~(10月31日)」を龍谷大学響都ホール校友会館において開催し、約160名の聴衆を集めた。
今後も関西支所では近畿中国地方における森林・林業に関するさまざまな問題の解決に向け、研究技術開発に取り組むとともに、研究発表や技術指導、広報などを通じ、橋渡し・地域連携に精力的に取り組んでまいりますので、一層のご支援とご協力をお願いいたします。
平成29年12月
森林総合研究所関西支所長松本光朗
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