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近藤洋史・田中邦宏・田中亘・奥敬一(森林資源管理研究グループ)
当試験地は、スギ人工林を間伐および樹下植栽によって複層林に誘導し、漸次択伐林を形成することを目的として、1936年度に設定された。試験地の所在は兵庫県宍粟郡波賀町字滝谷国有林136林班ほ小班であり、近畿中国森林管理局兵庫森林管理署の管内となっている。試験地は谷より尾根までの斜面を縦に、普通間伐区(面積0.6335ha)、上層間伐区(面積0.7900ha)、ナスビ伐区(0.7565ha)に分割されている。各試験区における施業方法は以下の通りである。普通間伐区ではB種間伐を行い、林内に侵入した広葉樹はスギの成長に障害をおよぼすもののみを伐採し、その他は残存させる。上層間伐区では寺崎式樹型級区分の1級木、3級木などに障害をおよぼす2級木を間伐する。ナスビ伐区では、5年ごとに成長量に相当する量をおもに大径木から択伐することとしている。なお、上層間伐区およびナスビ伐区では、広葉樹はスギ・ヒノキの成長に障害とならないケヤキ・クリなどを除きすべて伐採し、間伐跡地にスギ・ヒノキを補植している。
試験地の概要であるが、標高600~760m、平均傾斜約40°の南東向き斜面である。基岩は変質安山岩、土性は壌土である。土壌型は試験地の大部分でBD型だが、試験地が長いため尾根付近には乾性のBC型が出現し、その箇所では林木の成長が悪い。本試験地の履歴を以下に示す。
1900年3月 | 新植(10,000本/ha) | 1936年11月 | 第1回調査(37年生)、間伐・補植 |
1901年3月 | 補植(800本/ha) | 1942年11月 | 第2回調査(43年生)、間伐 |
1906年3月 | 補植(1600本/ha) | 1947年11月 | 第3回調査(48年生)、間伐 |
1900年9月~1906年8月まで6回 下刈り | 1952年10月 | 第4回調査(53年生)、間伐 | |
1909年9月~1919年1月まで6回 ツル切り | 1957年10月 | 第5回調査(58年生)、間伐 | |
1914年8月、1916年9月除伐 | 1962年12月 | 第6回調査(63年生)、間伐・補植 | |
1914年10月 | 枝打 | 1967年11月 | 第7回調査(68年生)、間伐 |
1921年9月 | 間伐(100本/ha) | 1972年12月 | 第8回調査(73年生) |
1928年9月 | 間伐(650本/ha) | 1982年11月 | 第9回調査(83年生)、間伐 |
1935年9月 | 間伐(80本/ha) | 1992年10月 | 第10回調査(93年生)、間伐 |
2002年10月 | 第11回調査(103年生) |
収穫試験地の調査計画によると、2002年度には、本試験地の定期調査を実施することとなっていたため、10月に第11回調査(103年生)を行った。調査内容は、胸高直径・樹高・枝下高・寺崎式樹幹級区分の毎木調査である。
今回の調査までの林分成長経過を図-1から6に示した。
図-1では、胸高直径と樹高の成長過程を示した。普通間伐区では、胸高直径・樹高とも、林齢100年生を超えても成長を継続していた。残存木の林分平均胸高直径は普通間伐区で39.9cm(標準偏差12.5cm)、上層間伐区で28.7cm(標準偏差16.6cm)、ナスビ伐区で20.8cm(標準偏差8.8cm)であった。樹高は、それぞれ、25.3m(標準偏差6.3m)、18.0m(標準偏差7.0m)、14.5m(4.6m)であった。
立木本数の経年変化を図-2に示した。今回の調査結果において上層間伐区とナスビ伐区では増加している。これは、天然更新などにより最小直径限界を超えた進界木が存在しているためである。
図-3では、普通間伐区、上層間伐区、ナスビ伐区とも旺盛な成長が見られる。
図-4には、幹材積の各調査期問における平均連年成長量およびその成長率を示した。当試験地では、他の試験地に比べ、多く間伐が行われているため、成長量、成長率とも激しい増減で推移している。
図-5には、相対幹距を表した。相対幹距とは、林木の平均樹幹距離(平均幹距)と林分の上層木の平均樹高との比であり、林分密度の尺度として用いられる。ここで各伐区では補植が行われている。そこで各伐区の上層樹高は上位100本/haの樹高の平均とした。今回の調査結果で普通間伐区15.3%、上層間伐区14.0%、ナスビ伐区13、3%となった。これらの相対幹距は、西沢(森林測定1972)によると弱度間伐区から中庸間伐区に区分される。
図-6には、今回の調査から得られた胸高直径データを基に、2cmを階級区分とするhaあたりの胸高直径分布を示した。この図より、普通間伐区では、胸高直径が直径階で12cmから78cmの問に分布しており、直径階で66cmの幅の存在が明らかになった。上層間伐区、ナスビ伐区では直径階10cm前後と20cm前後に直径分布のピー一クを持つ二山型の分布になっていた。
図-1 直径及び樹高の経年変化
図-2 立木本数の経年変化
図-3 幹材積の経年変化
図-4 連年成長量及ぴ成長率の経年変化
図-5 林分密度(相対幹距)の経年変化
図-6 直径分布(2002年)
近藤洋史・田中亘(森林資源管理研究グループ)
細田和男(森林総合研究所森林管理研究領域)
当試験地は、ヒノキ人工林の収穫量および成長量に関する統計資料の収集を目的として、1937年度に設定された。試験地の所在は広島県神石郡三和町字新元重山国有林49林班と小班であり、近畿中国森林管理局広島北部森林管理署管内となっている。設定当初、標準区のみであったが、1968年度に隣接する無間伐林が比較区として追加された。標準区は、設定当時、本数率で1.3~2.4%のアカマツが混交していたが、林齢58年生までにすべて伐採された。比較区は間伐区と同様の保育を実施された後、林齢22年生以降、無間伐で現在に至っている。そのため、厳密には無施業林分ではない。試験地の概要であるが、標高450~510m、平均傾斜約40。の北西向き斜面である。基岩は粘板岩、土性は壌土である。土壌型はBD型である。本試験地の履歴を以下に示す。
1916年3月 | 新植(4,500本/ha) | 1958年10月 | 第5回調査(43年生)、間伐 |
1916年~1923年 | この間に下刈り6回 | 1963年11月 | 第6回調査(48年生) |
1924年、1925年 | ツル切り | 1968年12月 | 第7回調査(53年生)、間伐、比較区設定 |
1927年 | 除伐 | 1973年11月 | 第8回調査(58年生) |
1931年 | 枝打ち | 1978年10月 | 第9回調査(63年生)、問伐 |
1934年 | ツル切り | 1983年10月 | 第10回調査(68年生)、間伐 |
1937年11月 | 第1回調査(22年生)、間伐 | 1988年11月 | 第11回調査(73年生) |
1942年9月 | 第2回調査(27年生)、間伐 | 1993年10月 | 第12回調査(78年生)、間伐 |
1948年3月 | 第3回調査(32年生)、間伐 | 1998年11月 | 第13回調査(83年生) |
1953年10月 | 第4回調査(38年生) |
収穫試験地の調査計画によると、2003年度には、本試験地の定期調査を実施することとなっていたため、11月に第14回調査(林齢88年生)を行った。調査内容は、胸高直径・樹高・枝下高・寺崎式樹幹級区分の毎木調査である。
今回の調査までの林分構造の変化と成長経過を図-1から6に示した。
図-1では、胸高直径と樹高の成長過程を示した。標準区・比較区とも、林齢80年生を超えても成長を継続していた。直径成長では、間伐が実施されている標準区と無問伐施業地である比較区について成長の差がみられた。樹高成長は、標準区・比較区ともほとんど差がみられなかった。
図-2には、立木本数の経年変化を示した。現在、標準区では700本/haであるのに対し比較区では1,570本/haとなっている。
図-3では、無間伐で推移している比較区が標準区より大きな値となっていた。標準区・比較区とも旺盛な成長がみられる。
幹材積の各調査期間における平均連年成長量およびその成長率を図-4に示した。成長率は純成長率である。成長率は、今回の調査において、標準区で2.84%、比較区で1.88%であった。
図-5には、相対幹距を表した。今回の解析において残存木はすべて上層木とした。今回の調査結果から、現在の相対幹距は、標準区で14.3%、比較区で9.9%となっていた。西沢によると無間伐区の相対幹距は約10%ということであった。この値と当試験地の比較区とはほぽ一致している。また、標準区は、西沢(森林測定1972)による間伐区分では弱度間伐区であった。本試験地を中庸度間伐区にするには、相対幹距で3%程度の間伐が、今後、必要であろう。
図-6には、今回の調査から得られた胸高直径データを基に、2cmを階級区分とするhaあたりの胸高直径分布を示した。この図より、標準区は一山型分布をしていることが明らかになった。またその最頻値は30~32cmであった。それに対し、比較区では複雑な型の分布がみられた。この最頻値は24~26cmであった。
図-1 直径及び樹高の経年変化
図-2 立木本数の経年変化
図-3 幹材積の経年変化
図-4 立木本数の経年変化
図-5 林分密度(相対幹距)の経年変化
図-6 直径分布(2003年)
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