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令和4年4月6日
林木育種センターでは、林木ジーンバンク事業として、各地の天然記念物や巨樹・名木等の収集・保存を行っています。その一環として樹勢の衰え等により将来が危ぶまれる状況となったこれらの樹木について、後継樹を希望する所有者等の要請を受けてつぎ木・さし木により増殖し、里帰りさせる「林木遺伝子銀行110番」に平成15年より取り組んでいます。令和2年度末までに全国では229件、そのうち関西育種場では98件の後継樹の里帰りを実施してきました。
里帰りにあたり申請を受けた木に関する情報収集を行いますが、その過程で親木の持つ歴史や背景を知り、地域の魅力を感じることがしばしばあります。この度里帰りした「青谿書院(せいけいしょいん)のモミ」はその一例で、歴史を感じる木でした。青谿書院(兵庫県養父市八鹿町)は幕末の弘化4年(1847年)に但馬聖人と呼ばれる池田草庵(いけだ そうあん)が開いた漢学塾で、ここで学んだ門人は673名にのぼり、明治の近代化に貢献したとされています。
「青谿書院のモミ」は開塾を記念して草庵と門人達により植えられましたが、残念ながら枯死し平成30年10月に伐採されました。しかし、それに先立ち平成29年に関西育種場へ林木遺伝子銀行110番の申請があり、その後つぎ木増殖に成功していたので、貴重な遺伝資源を保存するとともに、歴史あるモミの後継樹を里帰りさせることができました。令和4年3月3日に行われた里帰り植樹式は、養父市長等関係者の挨拶に始まり、宿南小学校の児童らによる植樹や草庵先生の歌の合唱など、後継樹を歓迎する地域の皆さんにより盛大に行われました。
池田草庵の教えに、「志は高遠を期し、功は切近を貴ぶ」という言葉があります。理想は高く持ち、それを実践するためには身近に役立つことを行うと良いという意味とのことです。私どもも林木遺伝子銀行110番を通じて、ジーンバンクの充実を目指しながら、様々な樹種の増殖に取り組むことで技術や知識の研鑽を積みつつ、多くの人に大事にされてきた樹木の遺伝子を将来に残すため役立ちたいと考えています。
(関西育種場)
左上:後継樹苗木 右上:後継樹苗を養父市長に手渡し 左下・右下:養父市長・宿南小の児童と記念植樹 |
林木遺伝子銀行110番-後継樹の里帰りを通じて見つける地域の魅力-(PDF:642KB)
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