ホーム > 業務紹介 > 林木育種の現場から > 新型コロナ状況下でのケニア郷土樹種育種プロジェクト

更新日:2022年5月11日

ここから本文です。

新型コロナ状況下でのケニア郷土樹種育種プロジェクト

令和4年5月11日

 林木育種センターでは、国際協力機構(JICA)がケニア共和国で実施しているプロジェクトに参画し、ケニア森林研究所(KEFRI)の研究者をカウンターパートとして、同国に多い半乾燥地(年降水量300mm~800mm)の気候に適し、成長が早く、高品質な木材が得られるメリア(Melia volkensii Gürke,センダン科)及び乾燥地(年降水量40mm~300mm)の条件にも耐え、成長が早く、良質な炭が得られるアカシア(Acacia tortillis (Forssk.) Hayne, マメ科)の育種に取り組んでいます。これら自生種の改良の取組は2012年から始まり、精英樹の選抜、メリアつぎ木クローンによる採種園の造成、自然交配種子による次代検定林の設定まで順調に進行し、2019年12月には第2世代の精英樹を選抜しました(写真1)。また、アカシアについては精英樹の実生苗による採種林の造成を行いました(同)。

しかしながら、2020年3月から現地で新型コロナウイルスの感染が拡大し、渡航が困難となったほか、KEFRI職員も自宅勤務となるなど、現地での指導や作業が停滞せざるを得ませんでした。

そのような中、指導普及・海外協力部ではメールのやりとりやWEBミーティングにより、既定の計画に従ってできるだけ作業を進めることをケニア側と意思確認し、アカシア実生採種林の日照改善のための間伐が2020年12月にケニア側スタッフにより実施されました。また、メリア検定林の成長測定をケニア側が継続し、当方ではその結果から親の世代である採種園の個体選抜(改良)を行う方法をWEB上で講義するとともに、送られてきデータを用いて親世代各系統の特性表を作成し、選抜率を50%とした場合に材積成長で17%の改善が見込まれることを予測しました(図1)。

2021年には、JICAによる次期プロジェクトの調査がバーチャル形式で行われ、育種分野を含む計画がケニア政府との間で合意され、活動の継続が決まりました。

2022年からの新プロジェクトでは、既に選抜されたメリア第2世代個体のつぎ木クローンを用いて次世代の採種園を造成することが最も大きな仕事となります。植栽を2022年の雨期(11~12月)に行う必要があり、逆算して2月にはつぎ木台木の養成開始が必要です。このため、1月下旬に現地渡航による現状点検と事業開始を計画しましたが、現地ではクリスマス休暇の頃からオミクロン株の感染が流行し、予定していたUAE~ケニア間の航空路線の運行停止措置が両政府により繰り返しとられるなど不安定な状況が続きました

幸いにして1月半ばには感染が収束し、現地からも医療体制の状況は落ち着いているとの情報が来ていました。そこで更に渡航人員を絞り、日程を1週間延期し、経由地も変更した上で渡航に踏み切りました。

日本からは2年ぶりの訪問でしたが、採種園や検定林での大きな被害はなく、事業は継続可能と考えられ、担当者とも元気で再会できました。ナイロビ市内のマスク着用率は日本とほぼ変わらず、ホテル、飲食店、スーパー等には消毒用アルコールを持った係員が立ち、対策はむしろ徹底していました。もちろん仕事では屋外や暑い室内でもマスクを着用し、結果的に全行程を通じ感染を避けられたことは幸いでした。

今回の出張では5年間の事業計画の共有・確認及び当面の作業指示、試験林分の現況確認、新たな採種園候補地の視察を行いました(写真2、3)が、今後、台木の育成、つぎ木、新採種園の造成、特性表に基づく既存採種園改良など節目の仕事が続きます。感染防止に細心の注意が必要ですが、KEFRIにおける10年の経験の蓄積や、JICA日本人長期専門家の力も借りて事業を進めたいと考えています。

写真1.メリア検定林での第2世代選抜とアカシア実生採種林 図1.メリア採種園選抜の改良効果
写真1.メリア検定林での第2世代選抜とアカシア実生採種林 図1.メリア採種園選抜の改良効果
写真2.KEFRIスタッフと事業計画打合せ 写真3.新たなメリア採種園の候補地
写真2.KEFRIスタッフと事業計画打合せ(Kitui乾燥地生態系研究センター) 写真3.新たなメリア採種園の候補地。現在はブッシュ状態(Kitui近郊)。

 

【さらに詳しく知りたい方は次の記事もあわせてご覧ください】

海外協力部. (2020). ケニアにおける林木育種プロジェクト.林野庁情報誌「林野-RINYA-」,

157, 14-15. https://www.rinya.maff.go.jp/j/kouhou/kouhousitu/jouhoushi/0204.html(外部サイトへリンク)

(指導普及・海外協力部)

新型コロナ状況下でのケニア郷土樹種育種プロジェクト(PDF:822KB)

 

Adobe Acrobat Readerのダウンロードページへ

PDF形式のファイルをご覧いただく場合には、Adobe Acrobat Readerが必要です。Adobe Acrobat Readerをお持ちでない方は、バナーのリンク先から無料ダウンロードしてください。

お問い合わせ

所属課室:森林総合研究所林木育種センター育種企画課 

〒319-1301 茨城県日立市十王町伊師3809-1

電話番号:0294-39-7002

FAX番号:0294-39-7306

Email:ikusyu@ffpri.affrc.go.jp