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更新日:2022年10月26日

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シコクシラベおよびトガサワラの着果調査について

令和4年10月26日

林木育種センターでは、林木遺伝資源の保存を目的として林木ジーンバンク事業に取り組んでおり、スギやヒノキなどの造林に使用される樹種だけでなく、一般的に造林に使用されない樹種や、絶滅の恐れがある樹種について研究を行っています。その中でも一部の地域に限定的に分布する絶滅危惧種等について今回紹介します。

林業・林産業に直接結びつかない絶滅危惧種について、なぜ林木育種の面から研究を行うのでしょうか?それは、一部の地域のみに存在する珍しい樹種も、森林を構成し、森林の多様性を担うのに重要だからです。またこれらは、限られた分布をし、集団サイズも小さいため、集団の構成や遺伝的多様性、種子の豊作と凶作の変化などの情報を手に入れないと、将来に貴重な遺伝子を受け継げなくなる可能性もあります。そのため、このような樹種についても、よりよい林木遺伝資源保存のために研究を行うのです。

樹木が貴重な遺伝子を受け継ぐ方法として、種子の生産があります。針葉樹では、球果の中に種子が形成され、数~十数年の長い年月観察することで、豊作と凶作の年があることが観察されます。

関西育種場では、シコクシラベとトガサワラの2種類のマツ科の絶滅危惧種の球果のなり具合について、長期間の継続的な観測を行っています。シコクシラベは、四国中央の石鎚山、笹ヶ峰そして剣山の山頂周辺にのみ分布し、トガサワラは、紀伊半島の中南部と高知県東部に散らばって分布しています。シコクシラベについては、2011年から石鎚山の山頂付近で100本程度、また、トガサワラについては、2014年から紀伊半島で1~4集団、高知県東部で1~2集団(集団あたり30本程度)について、毎年双眼鏡を用いてそれぞれの木に着いている球果数を数えています(写真1,2)。

シコクシラベ、トガサワラともに長期間の継続観測をすることで、種子の年間生産量の変化を知ることができています。また、豊作年に球果を採取することで、球果の数と母樹サイズの関係や、球果と母樹の遺伝的多様性なども調査を行っています。関西育種場では、こうした調査から得られる情報を基に、林木遺伝資源保存のための戦略を考えていきます。

(関西育種場)

写真1シコクシラベの球果数調査。双眼鏡で樹冠についている球果を数える。 写真2トガサワラの球果数調査。当年及び過年の球果が着生(赤丸内)。
写真1 シコクシラベの球果数調査。双眼鏡で樹冠についている球果を数える。 写真2 トガサワラの球果数調査。当年及び過年の球果が着生(赤丸内)。

 

シコクシラベおよびトガサワラの着果調査について(PDF:412KB)

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