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令和6年9月10日
私は、今年の4月に他機関より出向で九州育種場 育種課 育種技術係に着任しました。そこで育種技術係が担当する業務のうち検定林調査について紹介します。
検定林は、異なる系統の遺伝的特性を評価するための試験林で、九州育種場ではその多くが国有林内に設定されています。林木育種センターでは、次世代のエリートツリーを開発するために人工交配等により多数の系統を創り出し、その苗木を検定林に植栽して、それら系統の評価を行っています。このため、検定林は、林木育種を進めるための系統評価を行う上で重要な役割を担っています。検定林調査は、設定(植栽)後、1年目、5年目、10年目、15年目、20年目と5年毎に調査します(20年目以降は10年毎)。九州育種場では毎年4月に当年度の検定林調査箇所と次年度の設定候補地について、森林管理局と打合せを行います。これを受けて育種技術係で、令和6年度の検定林調査箇所の一覧を作成し、森林管理局に一括で入林申請し、許可を得ています。令和6年度の調査箇所は28箇所あり、9月~12月が検定林の調査シーズンとなります。
さらに、上記の調査とは別に、4月には前年度設定箇所の植付け当年調査(活着調査:0年次調査と言います)と、当年度設定予定箇所の測量を行います。このため、育種技術係では、該当の森林管理署の入林許可を得て、森林事務所へ連絡後、林道等の状況などの情報収集を行います。
調査方法については、検定林調査のうち樹高が低い0年次調査などでは、全木調査で、電子野帳(iPod)と、バーコード測桿(1cm毎に樹高をバーコードで表示したシールを貼り付けた測桿:写真1)を使って行います。左手には、電子野帳(雨が降ったら紙野帳)をアームバンドで固定し、バーコード測桿を持ちます(写真3)。右手(人差し指・中指)には、QRコードを読み取るバーコードリーダーを装着します。そして、一本一本の植栽木に取り付けてある個体情報を示すQRコードを読み取った後で、樹高をバーコード測桿で測り、自動でデータをiPodに読み込んでいきます。調査データは後日パソコンに取込、整理した後にデータベースに登録します。
また、設定予定箇所の測量については、地形等を考慮しながら、おおよそ1haになるように実測をしていきます。測量終了後は、測量情報を該当森林管理署と情報共有しています。
これからも、業務に関する専門的知識を身につけながら、秋の検定林シーズンに向けて、引き続き電子野帳の作成や森林管理署との連絡調整業務に取り組んでいきたいと思います。
写真1:バーコード測桿(左:全体、右:拡大) | 写真2:調査時の様子 | 写真3:手元の様子 |
(九州育種場育種技術係)
検定林調査について(九州育種場育種技術係)(PDF:299KB)
(1)次代検定林
① 一般次代検定林
九州育種基本区内の国有林、民有林から選抜されたスギ633、ヒノキ188個体の精英樹の遺伝的な優劣を判定(精英樹特性表)するための検定林で、採種(穂)園の改良にフィードバックされます。
一般次代検定林には、在来種苗が対照として植栽されており、精英樹クローンと対照苗の成長との比較によって、精英樹選抜の効果を確かめることもできます。
② 地域差検定林
スギにおける現在の育種区による区分の妥当性を実証するための検定林で、16種類の共通した精英樹さし木苗を用いて設定されました。各クローンの成長順位が同じとなるような類似した生育傾向を示す地域を一つの区域として区分し、将来その区域毎にふさわしい種苗の生産・普及を行います。
1検定林あたり、3試験地から構成されますが、現在では長伐期施業対応用として1試験地に絞り調査を継続する方針としています。
③ 遺伝試験林
各形質の遺伝的支配の度合いや遺伝様式を調べるため1970年代を中心に設定された検定林で、調査結果は、採種園の設計や育種集団林の交配設計等に活用されました。
近年(2002年度以降の設定)は、育種集団林から選抜された第2世代精英樹候補木さし木苗の成長特性調査を目的(クローン検定林)として主に設定しています。
④ 育種集団林
現行の精英樹と比べ、さらに優れた個体の創出を進めるため、成長、材質、諸害への抵抗性等各種特性が明らかな精英樹同士を掛け合わせた交配家系を植栽した検定林です。
(2)抵抗性検定林
気象害(雪害・凍害・寒風害)や病虫害等による被害の程度、成長及びその他の特性を比較検討し、抵抗性についての遺伝的素質の優劣を判定するための検定林です。
(3)試植検定林
外国からの導入樹種や在来品種、その他育成品種の中で実用化の可能性の高いものを試植し、その生産性を確認するための検定林です。
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