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更新日:2020年12月10日

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第11回日本植物学会ダイバーシティ推進ランチョンセミナー参加報告

タイトル「海外どうですか︖〜欧・⽶・アジア、⽐べて⾒えてくる多様な研究ライフ〜」

  • 日時:2020年9月20日(日曜日)13時15分~14時30分
  • 場所:オンライン開催
  • 主催:公益財団法⼈⽇本植物学会・ダイバーシティ推進委員会 
  • 参加者 : ダイバーシティ推進室 室長 伊ヶ﨑 知弘
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⽇本植物学会第84回⼤会ダイバーシティ推進ランチョンセミナーのウェブ開催に参加しましたので、以下に詳細、概要を報告します。

今年から⽇本植物学会の男⼥共同参画委員会はダイバーシティ推進委員会に名前を変更しました。新しい委員会名最初のセミナーということで、「ダイバーシティ」そのものに焦点を当て、アメリカ合衆国、ドイツ、中国でポストを得て研究を⾏っている⽇本⼈研究者3名をパネリストに据え、国や地域の事情がさまざまであること等が紹介されました。3⼈のパネリストは、アメリカ合衆国ウィスコンシン⼤マディソン校で名誉フェローを兼務する埼⽟⼤学の豊⽥正嗣准教授、ドイツマックスプランク研究所・中野亮平トーマス研究室⻑(Principal investigator; PI)、中国福建農林⼤学・⼭室千鶴⼦教授です。各国の研究環境、ことば、⽂化等を説明いただき、⽇本と世界各国の違いを認識するとともに、⽇本の現状や今後取るべき対応の⽅向性等を感じることができたと思います。

指導的な地位にある⼥性研究者の割合

まず、基本情報では、⽇本は指導的な地位にある⼥性研究者の割合を2020年度に30%を⽬指していましたが、4⽉時点での現状は16.6%でした。この割合は世界153か国中最下位でした。ライバルと⽬される韓国は108位でした。他国の割合はアイスランド46.4%、イギリス38.7%、アメリカ33.4%でした。⽇本植物学会は教授は男性が多いですが、准教授以下の役職では男⼥⽐がほぼ同じで、⽇本の中では頑張っているようです。

研究所での⼦育てと男⼥⽐

アメリカの⼤学では⼦供を連れてくる⼥性研究者が多く、ベビーベッドも持ち込まれているとか。次世代の育成に関する考え⽅が⽇本とは違うようです。中国の⼤学はキャンパスが広めで、中に学⽣寮やスーパー等⽣活に必要なものが⼤体あるそうです。PIについてはアメリカや中国では半々くらいだそうで、中国では⽣物や植物を材料に研究する⼈に⼥性が多く、男性は物理や化学に多いようです。ドイツではPIの3分の2が男性だけれども、職員全体としての男⼥⽐はほぼ半々と⾔っていました。この他、アメリカの⼤学の特徴として多くの⺠族がいるようです。ウィスコンシン⼤では⽩⼈特にドイツ系が多く、次いで中国や韓国、そしてメキシコ系が多いと⾔っていました。⽇本⼈は少数だとも。

ポスドクのポジション

  アメリカではポスドクは研究室の収⼊源がないとなかなか続けられませんが、技術を持っている⼈はいろいろな研究機関へ⾏き来し、⻑い期間ポスドクをしている⼈もいるようです。ドイツはドイツ国内での⼀定の期間を過ぎると、パーマネントに移らないといけない法律があるようで、ポスドクを続けたい⼈は他国へ⾏くしかありません。中国では⼤学⽀援のポスドク制度があり、この場合は2年間で終了し卒業式もあるようです。もちろん通常のポスドクもいますが、⻑い期間ポスドクをすることは良くないという考えがあるようです。

仕事時間

仕事に関してはアメリカでは⼣⽅5時に切り上げて帰り、研究以外の⾃分の⼈⽣を楽しむ⼈が多いようです。ドイツも⼤体同じで、研究所に⼟⽇に出勤してくるのは⽇本⼈と中国⼈が多いようです。でもその判断をするのは個⼈の意思だそうです。中国では昼間は良く働きます。パブミーティングのような夜の飲み会はあまりなく、家族を⼤切にするので早く帰るそうです。育児会のようなものもあるようです。 

履歴書

採⽤する時に出す履歴書ですが、アメリカでは年齢、性別や⼦供の数などを書く欄はないようです。ドイツも欄はないけれども、積極的に年齢や⽣年⽉⽇を書いてくる⼈が多いとか。アメリカやドイツではパブミーティングをするけれども、⼦供が⼀緒にいるので基本的にはあまり仕事の⼤切な話をしないとも⾔っていました。

ことばについて

アメリカでは競争は厳しいがプロジェクト等の応募の年齢制限はあまりないようです。多くの⼈がどんどんアプライしていくとのこと。ESL(English as a second language)の⼈も多いようですが、そのことによって英語が上達することにもつながるようです。いろいろな応募には外国⼈でも教育の経験を書かないといけないので、ポスドクでもPIの授業の⼿伝いをし、内容をわからせるための上⼿なパワポ等を作るようです。中国では研究所では英語、街ではたどたどしい中国語で通じるようです。研究所で中国語を勉強する機会はあるようです。ドイツも研究所では英語、下⼿でも気にしなくてよい。ケルンの街では英語のゴリ押しで通じるとか。でも幼稚園はドイツ語で、⼩学校から英語でいけるようです。中野亮平トーマス⽒はサッカーの⽇本代表ユニホームを着たお嬢さんと⼀緒に参加していました。時差が⼤きいので⼤変だったと思います。豊⽥正嗣⽒、⼭室千鶴⼦⽒とともに素晴らしい情報をいただけました。ありがとうございました。

⽇本について思うこと

7〜8年前に⼤学教授と話した時に得た情報で、⼤学のドクターコースの学⽣は3割強が外国籍だとか。そこを卒業した⼈たちは就職していくのだから、⼀部の⼈が帰国したり新たな外国へ⾏ったりしても、会社や街中に2割強くらいは外国籍の⼈がいても不思議でないと思います。でも、実際にはあまり採⽤されていません。⼥性の職員数が少ないとかと同じように国際化の推進という点でも⽇本は遅れている気がします。⽇本や地域に固有の⽂化を守りながら、定住した外国出⾝者にその⽂化を教え、さらにはそうした⼈々から利⽤できる技術や⼿法を受け取れるようにしていくことが⼤切な気がします。今、⼤学に多くの外国籍の⽅が来ているのだから、就職先もしっかりと⽤意できることが、今後の⽇本の発展に必要だと思います。

ダイバーシティ推進室 室長:伊ヶ﨑 知弘 記

 

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