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更新日:2019年2月26日

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気象衛星ひまわりを活用したアジア太平洋地域の林野火災準実時間観測

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1.共同研究機関

東京大学生産技術研究所、筑波大学生命環境系、モンゴル生命科学大学

2.研究期間

2016~2017年度 文科省宇宙航空科学技術推進委託費(3)宇宙利用促進プログラム

3.責任者

松井 哲哉(国際連携・気候変動研究拠点)

4.研究の背景

アジア太平洋地域には、寒帯、温帯、熱帯まで多種多様な森林生態系が広がっています。極東ロシアのタイガでは、落雷による林冠火災により植生動態が大きく規定されておりタイガの更新を促進していると考えられています。また、インドネシアなどの熱帯泥炭林では、違法伐採に伴う野焼きが林床部に燃え広がり、泥炭地から多数の炭素が大気中に消失・拡散していると考えられています。このように、地表面の植生・土壌・水の動態を定量的に把握することが森林生態系への影響評価に重要であると考えられるが、モンゴルのステップー森林移行帯において、このような生態系の変化は不明瞭でした。

5.研究の目的

本研究課題では、気象衛星ひまわり8号を主軸に、アジア太平洋地域の林野火災を準実時間で観測する技術を確立することを目的とする東京大学主導のプロジェクトのサブ課題として、モンゴル北部の森林火災発生現場における、実際の森林回復過程の定量的データの収集と植生回復の実態調査を目的としました。

6.研究内容

モンゴル国内陸部の針葉樹林を中心に、山火事跡地で植生調査を行い、現場の植生の組成と構造を記録し、フィールドサーバーを設置するなどして、現場の土壌水分などの特性データを計測しました。タイガ林の南限にあたるモンゴル北部のヨーロッパアカマツ林と周囲の山火事跡地において植生調査を行い、土壌水分計を埋設しました。それにより、山火事前後の植生データの回復を定量的に評価することが可能となり、山火事が半乾燥地の針葉樹林に与えた影響を評価しました。埋設した水分計の記録データから水分関係の変動を解析し、植生回復と土壌水分との関係性を明らかにしました。さらにシミュレーションにより火災の前後でバイオマス量や植生構造にどのような変化が起きたのかを定量的に明らかにしました。

7.得られた研究成果

衛星情報による火災発生年の特定、土壌水分含量、火災発生前後の植生の変化、火災発生前後のバイオマス量の推定、枯死木の炭素放出量の推定などを目的として現地調査、データ解析、モデルシミュレーションを行いました。
その結果、火災の発生年は1998年と2009年と特定でき、成長期(7月~10月)の土壌水分含量は常に低く(0.052~0.086 m3/m3)、優占樹種はカラマツ属とマツ属の針葉樹からカバノキ属とポプラ属の広葉樹へと変化し、火災前後の森林バイオマス量は約75t/haから20t/haに減少し、マツの炭素分解は今後200年継続する、などが明らかになりました。
火災発生年はLandsat衛星のデータ解析により行いました。現地では生存木と焼死木が目視により容易に判別できたため、樹木個体の生死を併せて記録し、山火事により枯死した個体、山火事後も生き残った個体、山火事後に新規加入した個体に区分しました。プロット内の枯死木の中には、伐倒や焼失をうけてDBHが計測不可能な個体もあったため、プロット外でも生存個体の根本直径(D0)や胸高直径(DBH)を計測し、D0からDBHを推定する関係式作成しました。得られた植生データをもとに、火災の前後における森林バイオマスの変化量推定を行いました。樹種ごとに、既発表の同属樹種のアロメトリ式を用いてDBHからバイオマスを推定し、山火事前後の樹木のバイオマスの変化を定量化しました。2009年の山火事後の新規加入個体による植物バイオマスの回復量はごくわずかであり、火災後にバイオマス量が大きいプロットは、火災前からの生存個体の貢献度が大きかったと判明しました。このように、衛星写真と現地調査、シミュレーションを統合した林野火災の影響研究結果は、森林生態系を活用した治山技術の高度化技術に資すると考えられました。

林野火災前後の林冠構成種のサイズクラスごとの頻度分布の図

図1:林野火災前後の林冠構成種のサイズクラスごとの頻度分布。火災前(Before)の頻度分布はプロット内外の倒木や林分周囲の立木の根元直径やDBHなどの関係式から予測した。Plot11はリファレンスサイトであり、近年の火災の影響を受けていないと現場で判断した林分である。

 
表1:調査区における土壌水分量(m3/m3)の変化

土壌水分量の変化を示す表

バイオマスの推定量のグラフ

図2:推定バイオマス量 (a)合計値, (b) 地上部, (c) 地下部, (d) リファレンスサイト.図(b)と(c)の左側のバーは火災前、右側は火災後を示す。

Yasso07モデルで予測したシュミレーション結果のグラフ

図3:Yasso07モデルで予測したヨーロッパアカマツの炭素分解シミュレーション結果。

8.研究成果の利活用

本研究の成果はモンゴル国環境省へ、モンゴル生命科学大学を通じて報告し、今後の山火事跡地における森林管理に活用されることが期待されます。

9.研究論文

Matsui T, Saito S, Tamai K, Hirata A, Kamijo T, Motoe D, Shitara T, Oyunsuvd S, Jamsran U, Kominami Y, Nakazono E & Takeuchi W. Comparison of forest biomass before- and after- wild forest fires in the conifer forest in northern Mongolia. Kanto Journal of Forest Research, 69, 59-62, 2018.09

松井哲哉, 平田晶子, 齊藤哲, 玉井幸治, ほか5名 モンゴル北部針葉樹林における山火事前後のバイオマス比較. 生研フォーラム論文集, 25, 11-14, 2017.03

中園悦子, 竹内渉, 松井哲哉, 平田晶子, 齊藤哲, 玉井幸治, 上条隆志, Sumya O & Undarmaa J. MODISによるモンゴル北部森林火災後の植生回復の追跡. 日本写真測量学会平成29年度年次学術講演会, pp. I-2, 東京大学生産技術研究所, 2017.05

Nakazono E, Takeuchi W, Matsui T, Hirata A, Saito S, Tamai K, Kamijo T, Oyunsuvd S & Jamsran U. Tracing of the vegetation recovery by MODIS and Himawari 8 after the forest fire in northern Mongolia. 38th Asian Conference on Remote Sensing, New Delhi, India, 2017.10

松井哲哉, 上條隆志, 斎藤哲, 玉井幸治, 平田晶子, Undarmaa J, Sumya O, 本江大樹, 中園悦子 & 竹内渉モンゴル北部森林地帯における山火事後の植生回復. 第128回日本森林学会大会プログラム, p. 241, 鹿児島, 2017.03

 

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