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更新日:2019年3月7日

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カンボジア国メコン川の森林流域の水資源量の評価

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1.共同研究機関

カンボジア王国森林局

2.研究期間

2015~2018年度(公財)クリタ水・環境科学振興財団助成研究

3.責任者

壁谷 直記(九州支所)

4.研究の背景

カンボジア国は長く続いた内戦のために、環境観測に関する過去の科学的なデータが散逸し、研究基盤も失われ、「データ空白域」となっています。一方、こうした歴史的経緯のために経済発展が遅れたことで、同国の森林率は比較的高く維持され、インドシナ半島ではすでに多くの国々で失われている“低地(平地)”の常緑林と落葉林を残す唯一の国となっています。しかし、これらの貴重な常緑林と落葉林が、この地域の水循環に果たす役割に関する知見は、いまだに明らかになっていませんでした。

5.研究の目的

本研究課題では、河川水文学的手法と微気象学的手法の2つの手法を用いてカンボジア国の常緑林と落葉林が、地域の水循環に果たす役割を明らかにすることを目的としています

6.研究内容

本研究課題では、現地での河川流量観測により、従来よりも高精度な水位流量曲線を作成します。この水位流量曲線を長期水文データに適用し長期間の流域水収支を算出します。この値を微気象学的手法による結果と比較し、常緑林と落葉林が当地域の水循環に果たす役割を明らかにします。

7.得られた研究成果

常緑林と落葉林の蒸発散特性の差異が流域スケールの水収支にどのように影響を与えているかを解明するために、微気象学的手法による蒸発散過程に関する研究を行いました。落葉林タワーサイトの結果は以下のとおりです。地上高30mおよび5mの地点にバンドパス渦相関法の機器を設置し、他の微気象要素とともに観測を行いました。解析対象とした2009年11月~2010年4月の乾季では、期間前半に潜熱交換量(=蒸発散量に相当します)が急激に落ち込みましたが、乾季期間の半ば以降には純放射量の増加に伴って漸増が見られました。このことは、土壌水分環境が厳しい乾季中盤に多くの樹木が展葉し蒸散活動を開始していること、また、こうした変動が蒸発散量の季節変化にも反映していることを示唆していると考えられました。さらに、雨季の2高度での観測結果から、落葉林では蒸発散全体に占める上層木の割合が5~6割程度で、残りの4~5割程度はササなどを主体とする下層植生や地面蒸発が寄与していると考えられました。

以上のように、観測により得られた水文データを取りまとめて、落葉林流域と常緑林流域の長期の水収支を比較しました。その結果、厚い土層により年間の水資源が確保されている常緑林では、年間を通じてほぼ一定の蒸発散活動が行われている一方で、土層が薄く水資源が雨季に偏在している落葉林では、乾季後半に樹木の展葉が開始するものの、主に水資源がある雨季に木本と草本がともに活発に蒸発散活動していることが明らかとなりました。

河川断面の流速測定と蒸発散観測タワーの写真

8.研究成果の利活用

貴重な途上国における落葉林および常緑林の水収支の解明に貢献する研究成果であり、今後の途上国の森林環境の保全に寄与する成果と考えられます。

9.研究論文

Shimizu, A., Tamai, K., Kabeya, N., Shimizu, T., Iida, S.(2015) Water cycle observations in forest watersheds of Cambodia. AGU 2015 Fall Meeting Abstract: H51N-1581.

Shimizu, T., Iida, S., Kabeya, N., Tamai, K., Chann, S., Shimizu, A.(2017) Seasonal and inter-annual variation of turbulence fluxes measured over a lowland dry evergreen forest in Cambodia, JpGU-AGU Joint Meeting 2017: ACG47-02.

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