ホーム > 森林総合研究所について > 国際連携 > 共同研究 > 熱帯季節林のパラドックスの解明:気候変動は同生態系の存続に影響を及ぼすか?
更新日:2020年11月6日
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カンボジア王国森林局(Forestry Administration, Cambodia)
筑波大学
2019~2021年度 JSPS科研費
飯田 真一(森林防災研究領域)
数カ月にも渡って雨が降らない乾季がみられる熱帯に成立している森林は熱帯季節林と呼ばれています。乾季には土壌が乾燥して落葉樹は葉を落とすのですが、不思議なことに雨季になる前、まだ土壌が乾燥している内に葉を出すこと(展葉)が知られています。葉を出しても樹木が根から吸収できる水は依然として少なく、根からの吸水のしやすさを考えるとこの早い展葉は矛盾した現象のように考えられるため、「熱帯季節林のパラドックス」と呼ばれています。では、樹木は一体どこの水を利用しているのでしょうか。これを解明することが、熱帯季節林を保全して持続的利用を進めるために必要となっています。
この研究課題では、カンボジアの熱帯季節落葉林を対象として、乾季の乾燥した土壌のどの部分から樹木の根系が吸水しているのかを明らかにすることを目的としています。
水が根から吸収され、幹や枝まで運ばれる間に、水の安定同位体比が変化しないことを利用して、樹木が土壌のどこから水を吸収しているのかを明らかにします。そのために、土壌断面の異なる深さから採取した土壌の中に含まれる水を抽出します。また、森林内にある井戸から地下水を採取します。同時に、森林内の樹木の枝を切り取り、それに含まれる水を抽出します。これらの採取した水に含まれる安定同位体比を分析し、比較することによって、枝に含まれている水が土壌のどの部分で吸収されたものであるかを特定します。
近年の気候変動の影響によって、カンボジアが位置するインドシナ半島付近では雨量が極端に少ない年が見られるようになってきています。このため、熱帯季節林はより過酷な乾燥状態で葉を出して、生き残ることができるのか懸念されます。本研究課題で得られる成果はカンボジアの熱帯季節林の保全策を検討する上で重要な科学的根拠となることが期待されます。
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Shin'ichi Iida, Takanori Shimizu, Koji Tamai, Naoki Kabeya, Akira Shimizu, Eriko Ito, Yasuhiro Ohnuki, Sophal Chann, Nang Keth (2016): Interrelationships among dry season leaf fall, leaf flush, and transpiration: insights from sap flux measurements in a tropical dry deciduous forest. Ecohydrology. 9, 472-486.
Shin'ichi Iida, Takanori Shimizu, Yoshinori Shinohara, Shin'ichi Takeuchi, Tomo'omi Kumagai (2020): The necessity of sensor calibration for the precise measurement of water fluxes in forest ecosystems. In: Delphis F. Levia, Darryl E. Carlyle-Moses, Shin'ichi Iida, Beate Michalzik, Kazuki Nanko, Alexander Tischer (Eds.), Forest-Water Interactions. Ecological Studies Series, No.240, Springer Nature, Cham, Switzerland AG, 29-54.
Shin'ichi Iida, Takanori Shimizu, Koji Tamai, Naoki Kabeya, Akira Shimizu, Eriko Ito, Yasuhiro Ohnuki, Sophal Chann, Delphis F. Levia: Evapotranspiration from the understory of a tropical dry deciduous forest in Cambodia. Agricultural and Forest Meteorology. https://doi.org/10.1016/j.agrformet.2020.108170
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