ホーム > 森林総合研究所について > 国際連携 > 共同研究 > 東アジアにおける森林動態観測ネットワークを用いた森林炭素収支の長期変動観測

更新日:2019年2月26日

ここから本文です。

東アジアにおける森林動態観測ネットワークを用いた森林炭素収支の長期変動観測

研究テーマの画像

 

1.共同研究機関

ロシア科学アカデミーシベリア支部スカチェフ森林研究所、モンゴル国立大学、カンボジア王国森林局、ムラワルマン大学、マレーシア森林研究所、チュラロンコン大学、カセサート大学

2.研究期間

2014~2017年度 環境省地球環境保全試験研究費(地球一括計上)

3.責任者

佐藤 保(森林植生研究領域)

4.研究の背景

陸域生態系の中でその資源量や環境へ与える影響の大きさなどから、森林への関心は増してきており、温暖化や生物多様性などに関連して、その重要性が指摘されています。これまでに森林生態系への広域的な環境、気候変動がもたらす影響評価には、複数の試験地による長期間のモニタリングが有効であることが示されています。つまり、単一の試験地のデータだけでは検出困難な変化についても、複数試験地間の比較をすることで、科学的根拠を持って温暖化影響とそのメカニズムを明示することが可能となります。特に、気候変動の影響を受けやすいと予測されているシベリアや多様性の高い熱帯林について長期間の集中的な観測が必要です。

5.研究の目的

本研究課題では、気候変動予測研究や森林炭素収支の変動把握に貢献するために、シベリアから熱帯域に至る広域で森林動態観測ネットワークを構築し、森林の生態系炭素蓄積量に関連する長期モニタリングデータの収集を実施します。また、長期モニタリングを効果的に実施するために、推定精度を低減させない炭素蓄積量の測定手法を開発し、海外の協力機関と共同で測定手法の普及を行います。

6.研究内容

本研究課題では、6ヶ国(ロシア、タイ、マレーシア、インドネシア、カンボジア、ベトナム)14ヶ所のモニタリング試験地を持ってネットワークを構築し、国外の共同研究機関との連携を進め、現地技術者への能力開発等と通じて長期継続観測体制の基盤づくりを行いました。本研究課題では二つのサブテーマを設定し、調査解析を実施しました。

(1)森林動態観測ネットワークによる森林炭素収支の長期モニタリング体制の構築
(2)モニタリングデータを活用した炭素収支測定手法の高度化

7.得られた研究成果

森林動態と炭素蓄積量に関連するデータ取得を目的として、各試験地で毎木調査を実施しました。択伐と火災による撹乱の影響を受けたブキットスハルト試験地では、モニタリング開始以来、地上部現存量が年々増加する傾向にありましたが、2013年辺りから択伐区画ではやや頭打ちの変動傾向が見られました。これを受けて、純一次生産量では択伐区画と非択伐区画との間に差が生じていました。択伐区画では、先駆性樹種の枯死が多数認められることから、今後どのような推移を示すのか群集動態の面からもモニタリングする必要があります。また、熱帯降雨林および熱帯季節林で樹木バイオマス以外のタケや下層植生などの炭素プール量の評価を行った結果、パーム(熱帯降雨林)や叢生や矮性のタケ(熱帯季節林)が少なからず生育しており、炭素収支観測の精緻化ためには無視できない構成要素であると考えらました。

枯死木量の推定精度を低減させない効率的な測定手法を検討した結果、潮汐によって枯死木が系外へ流出するマングローブ林や、立木密度や地上部現存量が低い熱帯季節林では、区画内の枯死木を計測するプロットインベントリ法よりも簡易な手法であるライントランセクト法が有効であると考えられました。

 

熱帯季節林の炭素プール別の炭素蓄積量を表示している写真

熱帯季節林の炭素プール別の炭素蓄積量

8.研究成果の利活用

パソ試験地で得られた一斉開花の予測に関する成果は、安定した種苗生産や、効率的な稚樹バンクの形成が可能な択伐時期の決定などの森林管理に応用できると考えられます。

9.研究論文

Morishita T, Matsuura Y, Kajimoto T, Osawa A, Zyryanova OA and Prokushkin AS (2014) CH4 and N2O dynamics of a Larix gmelinii forest in a continuous permafrost region of central Siberia during the growing season. Polar Science, 8, 156-165.

新山馨、松浦陽次郎、梶本卓也、山下多聞、Azizi Ripin、Abd. Rahman Kassim、Nur Supardi Noor(2014)半島マレーシア低地フタバガキ林の地下部調査. 水利科学、58(5)、104-120.

Osone Y, Toma T, Warusudi, Sutedjo and Sato T (2016) High stocks of coarse woody debris in a tropical rainforest, East Kalimantan: Coupled impact of forest fires and selective logging. Forest Ecology and Management, 374, 93-101.

Yagihashi T, Otani T, Nakaya T, Tani N, Sato T, Abd Rahman K and Niiyama K (2016) Suitable habitats for the establishment of Shorea curtisii seedlings in a primary hill forest in Malaysia. Journal of Tropical Forest Science, 28(5), 353–358.

Niiyama K, Iida S, Kimura K, Sato T, Azizi R and Abd. Rahman K (2016) Survivorship of Shorea curtisii seedlings in a hill dipterocarp forest, Peninsular Malaysia. Journal of Tropical Forest Science, 28(5), 334-341.

Sato T, Yagihashi T, Niiyama K, Abd Rahman K and Azizi R (2016) Coarse woody debris stocks and inputs in a primary hill dipterocarp forest, Peninsular Malaysia. Journal of Tropical Forest Science, 28(5), 382-391.

Abd Rahman K, Muhammad Afizzul M, Niiyama K, Iida S, Kimura K, Sato T, Nurhajar ZS, Samsudin M, Ismail H and Azizi R (2016) Predicting annual stem diameter increment of major tree species in mixed hill dipterocarp forest with consideration on tree and stand level effects. Journal of Tropical Forest Science, 28(5), 359-368.

Umnouysin S, Sangtiean T, Sato T, Poungparn S (2017) Comparative carbon dioxide efflux rates from respiration of coarse woody debris among three mangrove species in Thailand. Tropics, 26(2), 49-57.

Toma T, Warusudi, Osone Y, Sutedjo, Sato T and Sukartiningsh (2017) Sixteen years changes in tree density and aboveground biomass of a logged and burned dipterocarp forest in East Kalimantan, Indonesia. Biodiversitas, 18(3), 1159-1167.

お問い合わせ

所属課室:企画部広報普及科広報係

〒305-8687 茨城県つくば市松の里1

電話番号:029-829-8372

FAX番号:029-873-0844

Email:kouho@ffpri.affrc.go.jp