ホーム > 森林総合研究所について > 国際連携 > 共同研究 > 衛星画像から広大な熱帯林の生物多様性を推定するモデルの開発と多様性情報の地図化
更新日:2020年9月23日
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東クタイ農科大学(College of Agricultural Science Kutai Timur)、インドネシア共和国
2019~2021年度 JSPS科研費 国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
上田 明良(北海道支所)
生物多様性条約では、熱帯林の生物多様性の保全が重要視されていますが、広域調査が困難なため、多様性を広域で明らかにした研究例はありません。一方、地球観測衛星はいくつかの波長域(観測バンド)センサーをもち、各バンドの反射率から様々な変数の計算が可能です。地上での調査で得た多様性データと衛星画像から得た調査地点の変数との関係を解析し、当てはまりのよいモデル式が得られれば、地上調査をしていない場所でも、その場所の変数の値を式に入れれば、多様性を推定することができるようになります。そして、これを地域全体で行い、推定した多様性を地図化します。この方法により効率的な保全計画の策定が可能になると考えられます。しかし、生物多様性について地上調査で得たデータと衛星画像との関係を解析した研究は、ここ数年になって温帯域でわずかに出始めたばかりで、その対象範囲は100km2以下と局所的なものです。そこで、我々は先行研究において、インドネシア共和国東カリマンタン州バリクパパン市北のスンガイワイン保護林とその周辺で、樹木、糞虫、寄生蜂の多様性調査を行い、得られた多様性データと衛星画像データの関係を解析することで、森林の成熟度、糞虫の種数やバイオマスと寄生蜂のひとつコマユバチ科の種数が衛星画像から推定できることを明らかにしました。しかし、この研究結果も局所的なものでしかありません。もっと広い地域、たとえば東カリマンタン州全体の低地林への適用が可能かどうかを明らかにする必要があります。
本研究の目的は、1)インドネシア共和国東カリマンタン州で、現地大学との協力のもと、簡易で安価な統一プロトコルを用いて動植物データの収集を行い、無償提供されている衛星画像からの変数との関係を解析し、生物多様性を推定するモデルを開発する、2)さらにGISを用いて生物多様性情報を地図化することです。
樹木調査:規定サイズのプロット内の一定サイズ以上の全樹木のサイズ測定と種同定を行い、森林の成熟度や樹木の多様性を明らかにします。
甲虫類多様性調査:魚肉をベイト(餌)としたピットフォール(落とし穴)トラップによる糞虫(コガネムシ上科食糞群)および地表徘徊性甲虫の捕獲調査と、パラミツ(ジャックフルーツ)の生枝葉を束ねたものを林内に吊し、数日後に餌を求めて集まってきたカミキリムシ科甲虫を棒でたたき落として捕獲する調査を行い、これら甲虫類の多様性を明らかにするとともに、糞虫についてはバイオマスからの生態系サービスの推定を行います。
ハチ類調査:黄色の皿にハチミツを注いだイエローパントラップによる寄生蜂類とハナバチ類の捕獲調査を行い、これらハチ類の多様性を明らかにします。
オランウータンの生息状況調査:主に現地大学教員と学生に樹上の巣の探索および地域住民への聞き取り調査を行ってもらい、生息域データを収集します。
衛星画像の探索と解析、およびモデルの構築と生物多様性推定値の地図化:東カリマンタン州内の雲の少ない衛星画像を探索・収集し、広域レベルの雲なしモザイク画像を作成します。更に正規化植生指数やタッセルキャップ変換の各軸値など植生に関係の深い指標値を計算します。地上調査から得られる動植物の生物多様性指標と衛星画像指標値との関係性を統計的に評価し、関係性の高い衛星画像指標値を用いて生物多様性評価モデルを作成します。作成したモデルに広域レベルの画像指標値を入れて計算し、推定値から生物多様性の状態を広域で表す地図を作成します。
本研究で開発される多様性地図は、保護林の制定等の地域の土地利用管理施策に貢献する情報を提供します。また、卒業論文研究の指導補助をとおして、現地教員と学生のスキルアップに貢献します。
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