伐倒技術
受口と追口の位置と寸法
伐倒技術の変遷をファイルにまとめてみました。斧のみ、斧と鋸の併用、チェーンソーと道具が変わり、受口や追口の作り方も多少変化してきています。
1907年の文献に、すでに現在とあまり変わらない伐倒技術が確立していることが驚きです。この頃は受口を斧で、追口を鋸で鋸断していました。
国内でチェーンソーが普及し盛んに使用されるようになったのは、1954年の洞爺丸台風によ る風倒木の処理での導入がきっかけです(全国林業改良普及協会、2001)。文献を見ると(林業機械化協会、1960)には斧を用いた受口切りが主でしたが、(林業機械化協会、1969)では、チェーンソーの使用を前提とした記述に変わっていることから、この頃にはかなり普及していたことがうかがえます。
樹種や木の状態の違いによって、受口の切り方を変化させなければならないことは承知の上で、統一的な作業方法を決めた経緯が(林業機械化協会、1969)には記載されていました。すでに安全衛生規則に、受口深さ1/4という最低守るべき基準が制定されており、それに準ずる基準としたようです。
受口角度は、最も価値の高い元玉の経済的な利用のため、45°とする ことに最初は抵抗があったようです。林災防:1977の記述では受口角度30~35°、追口高さについても受口下切りより3cm以上うえという規程でした。現行の規程の改定に携わった関係者(河野晴哉氏)によりますと、広葉樹の伐採の多い林野庁の作業基準と、林災防の規程の整合性を図り、受口角度30~45°、受口深さ1/4以上、ただし大径木は1/3以上とした。追口高さについては、1977年以降「受口の上辺(受口上端)に近く」(林災防、1978)、「受口高さの70~80%の位置」(林災防、1980)と変わりましたが、最終的には受口上端よりやや下方という意味で受口高さの2/3と定めたと言うことでした。
ツル幅について、ヒルフ・プラッツエル(1970)に根株径の約1/10という記述がありますが、国内では特に数値的な基準は決められていなかったようです。林災防(1978)に、「ツル巾はその(鋸断部直径を指す)長さの10%が一応の目安」と記載されたのが最初で、それ以降この数値が採用されるようになりました。
様々な現場の経験則と、経済性、さらに、最低限守らなければならない数値を決定する必要性から、現在の指導方法(下図)は確立されてきたと言えます。
大西鼎(1907)実用森林利用学(上巻). 326pp,六盟館,東京.
全国林業改良普及協会編(2001)機械化のマネジメント-地域の経営力アップのために高性能林業機械をどう活かすか.239pp,全 国林業改良普及協 会,東京.
林業機械化協会(1960)伐木造材作業基準・解説(No14).246pp,林業機械化協会,東京.
林業機械化協会(1969)伐木造材作業基準・解説(No40).254pp,林業機械化協会,東京.
林業労働災害防止協会(1978)林業労働における安全点検の手引き-国有林野事業関係.245pp,林業労働災害防止協会,東京.
林業労働災害防止協会(1980)現場作業における安全教育の手引き.163pp,林業労働災害防止協会,東京.
ヒルフ,H,H・プラッツエル,H,B(1970)図解による伐木造材作業法.123pp,日本林業調査会,東京.