都市近郊林のフォトシミュレーション(景観合成)を利用したフォレストスケープ・デザイン事例
@まず、市民トークを何度か開催しながら、市の方針とそれに対する市民の意向のすり合わせ作業を行っていった。 A次にそれらの過程をたたき台として、専門家を交えた基本計画の策定にあたった。専門家は、フォレストスケープ、エコロジー、サクラ、建築設計の分野で構成した。 B基本構想を作る過程で、いくつかのテーマやキーワードが整理されていった。一つは、サクラがもっと楽しめる森づくりをすること、次に立地環境に応じて、サクラや落葉広葉樹を中心として、景観的に四季を通して楽しめる森づくりをすること、常緑広葉樹が生態的に適する森をつくること、多様なシダ類が楽しめる林床をつくることなどである。これらのデザインの底流には、エコロジカルなそして、フォレストスケープ創造の視点がしっかりと置かれている。 C次に、フォトシミュレーションを行うため、まず地元の人々に協力してもらい、香貫山の主要視点を、シーン、シークエンス、遠景、中景、近景ごとに選定した。 Dそして、主要視点から撮影した写真をフォトCDを介してパソコンに読み込んだ。 E基本構想のテーマに沿って、適当なパーツ(サクラやコナラ林、シイ・カシ林など)を組み合わせながら、主要視点のフォトシミュレーションを作成していくつかの代替案を提示した。 ********************************** 以下にフォトシミュレーションの一例を紹介する。 図1は、都市近郊林としての香貫山を見る視点の中で最も重要な、100〜500m離れた、近景から中景にかけての視点からの現況写真である。この距離だと、ある程度香貫山の全体像を見渡せるし、まとまりとしての樹林から個々の樹林の個性まで識別できる、非常に情報量の豊富な視点である。現状は、沢の下部に一部サクラがあるものの、アカマツの立ち枯れが目立つ景観である。 図2以下が、フォトシミュレーションしたものである。図2はアカマツ林を、当地域の潜在植生であるシイ・カシ林(照葉樹林)に置き換えてシミュレートしたもの。被視頻度の高い、景観機能が重視される視点からのフォレストスケープとしては、林相が暗く、また林内アクティビティも低い。 図3は、全体をサクラ林にしたもの。華やかさは最もあるが、あまりに人工的な景観である。また、自然性が低く、景観として楽しめる期間もごく限られたものとなる。 図4は、サクラとコナラ・シデなど落葉広葉樹の混交林としたもの。フォレストスケープのバランスも良いし、二次林としての多様な生態系も提供できる。また、四季を通して楽しめ、林内アクティビティも高い。代替案として、最も推奨されたデザインである。
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