木材の炭化過程に関する研究

栗山 旭

要旨

 スギ材,コナラ材などの木材ブロックとこれらのホロセルロース,セルロース,リグニンなどの単離主要成分およびろ紙を試料として炭化を行い,その炭化経過と得られた加熱温度別炭化物の各種分析法による結果から木材の炭化過程における化学変化と構造の変化について解析した。
 これらの試料と試料中の未反応成分の重量残存率曲線は従来のTG曲線における窒素気流中と制限空気流中で得られたパターンにきわめて類似し,炭化と燃焼の関係を同じ試料で示すような結果を得た。次に加熱温度別炭化物の赤外線吸収スペクトル,元素分析結果の解析から,炭化中の木材成分の熱分解とその後の炭素結晶の成長すなわち900℃までの炭化過程を明らかにした。
 さらに木材ブロック試料の重量残存率曲線,減量速度曲線および示差温度曲線ならびに黒炭がまの炭材における示差温度曲線などの結果と前述の結果を併せ検討し,比較的ゆっくり加熱したときの木材の炭化過程は,熱軟化と脱ガス,乾燥,各成分の分解過程を経て,4501,000℃における縮合多環芳香族化と炭素6員環網状平面構造の成長による木炭の生成に至る過程についてより明確な説明を加えた。

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