単板切削における刃先形状の影響 第1報

切削抵抗におよぼすベベル条件の影響

木下敍幸

要旨

 本報では,刃先形状を変えた刃物でホオノキ,レッドメランチ,ホワイトメランチ3樹種の飽水材を切削角,単板厚さを変化させ,ノーズバーを作用させずに切削し,その時刃物に作用する切削抵抗の挙動について検討した。得られた結果を要約すると次のようになる。
 1)切削抵抗の水平方向分力は,刃物すくい面に作用する成分Rp1,逃面に作用する成分Rp2および刃先前方の被削材を変形させるに要する成分Rp3からなると考えると,Rp1は単板厚さを厚くすることにより,Rp2は被削材に対する刃物逃面の接触深さを深くすることにより直線的に増加し,Rp3は樹種に応じた一定値を示す。2)垂直方向分力の場合,刃物すくい面に作用する成分Rn1および逃面に作用する成分Rn2から成ると考えると両者はその作用方向を異にし,Rn1は単板厚さと直線関係を示す。Rn2は被削材に対する刃物逃面の圧入量をsmm2)とすると,両者の関係はRn2asba,b:定数)で示される。3)切削抵抗の合力と単板厚さの関係は刃物逃面の被削材に対する圧入量により異なる。4)切削抵抗の垂直方向分力Rnと水平方向分力Rpの比Rn/Rpは,ベベルをつけた刃物で切削した場合単板厚さを厚くすることにより次第に低下する。べベルの幅および角度,切削角,単板厚さ等の条件を選択することによりRn/Rp0,つまり切削線に平行に合力が作用する場合がある。

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