カラマツ落葉病抵抗性の遺伝様式の解析

明石孝輝・川村忠士・佐藤 亨

要旨

 カラマツ落葉病抵抗性の遺伝の研究のため既選抜の抵抗性クローンおよび精英樹クローンに着花促進がなされ,人工交配および自然受粉によって多数の次代家系が育成された。これらに対する抵抗性の検定は,長野,東北および北海道の3地域でおこなわれた。
 この抵抗性の遺伝様式解明のために統計的手法を用い,次の結果が得られた。
 各家系の罹病程度の度数分布が連続的分布を示すことから,この形質の遺伝は主働遺伝子によるものでなく,ポリジーン支配によるものと推定された。しかし,関与する遺伝子座数は余り多くないようである。
 抵抗性×抵抗性および抵抗性×精英樹の交配家系の抵抗性が,精英樹クローン間の交配家系および自然受粉家系よりも強いことが認められ,選抜された抵抗性クローンは強抵抗性と弱抵抗性の2群に分けられた。また,長野,東北および北海道3地域の同一家系間の抵抗性の相関を求めたところ,この形質の遺伝には遺伝子型と環境の交互作用が比較的大きいことがわかった。したがって,カラマツ落葉病抵抗性についての選抜と検定は,地域別におこなう必要がある。

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