(研究資料)

岩手県久慈地方の海岸段丘土壌について

仙石鉄也,山谷孝一

   要旨

 三陸海岸北部には海岸段丘がよく発達し,とくに,久慈以北に は標識的な段丘地形が展開している。米倉(1966)によると,久慈以北の海岸段丘は4段に区分され, そのうち,上位段丘群は段丘幅も広く,この地域の代表的な段丘とみなされている。それで本調査で は,明らかに識別できる上位段丘および下位段丘に代表土壌の断面を設定し,段丘土壌の生成,性質 について検討した。その結果はつぎのとおりである。(1)標識的な段丘地形は最上位,上位,中位, 下位の4段丘から構成されているが,中野地区における上位および下位段丘土壌の調査からは,同一 地域の段丘面の土壌は,いずれも段丘形成後に堆積した火山灰を母材とした類似の性質をもつ黒色土 である。(2)上位段丘群を対象として,北部から南部にかけてる断面を設定して調査したところ,南部 に移行するにつれて表層のスコリア含有率が高くなる。これは,西側に並列する準平原土壌の性質か らみて,スコリア質の岩手火山灰の影響をうけているためである。(3)調査地域の火山灰土壌は断面形 態だけでなく一次鉱物組成,土壌の理学的,化学的性質などからも,その特徴がよくわかる。また, 火山灰被覆のうすい南部地域の土壌は,表層は火山灰質であるが,下層は古風化段丘堆積物を母材と し,その性質は火山灰土壌と対象的である。

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