カラマツ,ウラジロモミでのジベレリンによる着花促進の効果

勝田 柾,斎藤幹夫,山本千秋,金子富吉,伊藤昌司

   摘要

 スギ,ヒノキ科の多くの樹種では,ジベレリン(以下GAと略記する)と くにGA3が花芽分化を促進し,再現性のある効果を示すことが明らかになっ ているが,マツ科の樹種ではGAによる花芽分化の促進は期待できないと考えられてきた。最近,極性の低いGA (GA4/7,GA4,GA9 など)を用いた一連の実験で,マツ科の樹種でもGAが花芽分化を促進する可能性のあることが 明らかになったので,わが国に生育するマツ科の樹種で,極性の低いGAが着花促進にどの程度の効果を示すの か,また実用化への可能性をもつものかを確かめることにした。
本試験では,関東林木育種場長野事業場構内に設定されているカラマツ,ウラジロモミ採種園内のツギキク ローン(カラマツ9年生12クローン,ウラジロモミ14年生10クローン)を用い,昭和52,53年の2年間にわたっ て,GA(GA4/7,GA3,GA 4)と環状剥皮処理による着花促進の効果を調べた。
 カラマツでは,1主枝あたり20mgあるいは15mgのGA4/7,GA 3,GA4の枝基部での包埋処理,および1主枝あたり約20 0mlの100ppm GA4/7の散布処理で,雌,雄花ともに着花促進の効果が認め られなかった。しかし,枝あるいは幹基部での環状剥皮処理は,著しく着花を促進し,とくに雄花が多量に着 生した。ウラジロモミでは,1主枝あたり20mgのGA4/7,GA 3の枝基部での包埋処理が,雌,雄花ともに着花を促進したが,1主枝あたり15mgのGA 4/7,GA4の包埋処理による継続試験では,明確な促進 効果が認められなかった。樹冠内での処理枝の位置と処理時期,方法について,今後の検討が必要である。枝 基部での環状剥皮処理では,着花を促進する効果が認められない。
 本試験の結果によれば,カラマツ,ウラジロモミで,一部の極性の低いGAによる実用的レベルでの着花促進 は期待できないと考えられるが,異種のGAの混合,あるいは他の物理的処理との併用による付加的な促進効果 について,さらに詳細に調べる必要があると考える。

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