初期生長におけるスギと広葉樹の競争に関する研究

谷本丈夫

   要旨

 下刈り技術研究の一環として,雑木とスギとの競争を解析するため, 落葉広葉樹のナンキンハゼ,常緑広葉樹のクスを用いた混植モデル試験を行った。実験は林業試験場四国 支場構内の実験林で,1975年から1976年の2生長期の間に行った。スギの生長はどの密度区でも,純植, クス混植,ナンキンハゼ混植区の順に悪くなっていた。スギ純植区における相対照度の垂直分布は,生長 の良かった区ほど,群落上層と下層との差が小さくなっていたが,混植区においては,処理によって大き な差は認められなかった。しかし,ナンキンハゼ混植区では,スギの樹高より高い位置から相対照度の減 少がはじまっていた。このように混植樹種によって,スギの生長や群落内の光条件に差がみられたのは, ナンキンハゼとクスの生長特性の違いによって説明できる。すなわち,ナンキンハゼは主幹の伸長および 肥大生長が早く,枝の展開が2〜3本ずつまばらであるのに対して,クスは主幹の伸長と同時に多数の枝を 散出させながら生長する型の植物であって,このような主幹や茎葉の展開様式の違いが群落内の光条件の 変化をもたらし,スギの生長に影響したものと考えられる。

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