湘南,高麗山地域の富塩基土壌の生成要因と
分類学上の位置づけについて(第1報)

形態的特徴ならびに一般理化学性

森田佳行,八木久義,大角泰夫

   要旨

 本邦の褐色森林土は暗色系,典型,赤色系,黄色系および表層 グライ化と亜群段階で5亜群に区分されている。そのいずれもが,本邦の生物−気候条件を反映して 貧塩基であり,したがって土壌反応も酸性側に傾いている。ただある種の条件が具備された場合に, 土壌は富塩基となりうる。
 湘南,高麗山において塩基に過飽和ないし飽和に近い状態にある褐色森林土が見いだされた。本 報ではこの種の土壌の生成条件および分類学上の位置づけを明らかにするための第一歩として,土 壌の一般的な性質の解析を行った。その結果は以下に示すとおりである。
 1) 高麗山は凝灰岩質岩石,二宮層非固結堆積物および安山岩質岩石より構成され,地表部には玄 武岩質の宝永スコリアが混入している。2) 各土壌は形態的には褐色森林土に属するが,B層の色調 は暗褐色で褐色森体上より暗く,暗赤色土のB層の明度に類似する。3) いずれも粘土質であるが, 透水性は良好である。4) 土層の,特にB層のpHが高く6.7前後である。5) B層の色調が暗褐色を基調 とするにもかかわらず,有機物の混入はわずかである。6) きわめて高い塩基置換容量を有し,その 原因としては,多量のモンモリロナイトおよびバーミキュライトの存在とかなりな量の凝灰岩に由 来するゼオライトの存在が予想される。7) 置換性カルシウムがきわめて大量に存在し,また置換性 マグネシウムも相当量存在する。これら両種の塩基を合わせるとすべての土壌の下層で過飽和,もし くは飽和に近い。

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