暖帯広葉樹の成長と林分構造 第2報

樹種および樹種群ごとの成長の特性についての検討

粟屋仁志,本田健二郎,椎林俊昭,小幡 進

   要旨

 この報告は,暖帯広葉樹林の樹種改良試験地における1939年から 32年間に16年間隔で行った3回の調査に基づいて樹種および樹種群ごとの成長の特性を分析し,皆伐, 択伐,無施業による効果を探究したものである。
 1939年における試験地内の全樹種の直径分布を求め,小径級の本数比率の高いものをA型,大径級の 本数比率の高いものをE型,その中間をA型に近いものから順次B,C,D型とすると,炭材としての上位 樹種にはA,B,C型が多く,下位樹種にはD,E型の多いことが分った。この5種類の分布型と炭材とし ての上,中,下区分を組合わせて分類した樹種群区分は,32年後の1971年の調査においても相対的特 性はよく保持されていた。
 樹種群ごとの直径分布は,Polya-Eggenberger分布曲線でよく表わせるので,この曲線を規定する平 均値および変動係数で各施業による林相変化の仕組みを分析した。はじめの16年間とあとの16年間で は成長の特性にかなりの相違が認められるが,2回の択伐によってカシ類など上位樹種群の材積混交歩 合は22%から66%に増大して林相は一変し,かつ次第に直径分布の樹種群間の差は小となり,安定均 一的になることが分った。このことは直径階別直径成長量の比較からも確認でき,択伐作業は,目的 樹種群の直径分布の安定均一化と材積成長量増大のため適切な施業法であろうと考え得る一つの根拠 が得られた。

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